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夢を語る桃源郷  作者: 四太郎
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お触れ書き

 10日ほど経ち、2人はプエリトの街に戻って来た。

 ファイアは豚面に戻している。


 ギュッタ

「何これ! 露天商の人たちがみんな荷車を轢いているよ」

 ファイア

「どんなボロでも背負子か荷車に商売道具を乗せてりゃ移動中だ~い、クラノス王国法では、商売しているって見なせないんだぜ~。これで何時領主様に出店料上げられても商売は続けられるってもんだぜ〜ぃ! バル爺発案の救済策さ〜」

 中には荷車が壊れ、車輪を持ち運びながら商売をしている行商人もおり、みんな必死で生活を守ろうとしている。

 ギュッタは、バル爺が『プエリト住民の暮らしや夢を諦める訳にいかない』 と語気を強めていたことを思い出した。


 ファイア

「なあ、ギュッタ。 広場のお触れ書き見にいこうぜ~! 今朝出たばかりさ〜ヒッヒッヒィ」

 ギュッタ

「何? また嫌らしい笑い方が始まったよ、フフフ」


 2人が広場に向かう途中ファイアがギュッタに尋ねた。

「なあ、俺の素性。 前から気づいていたろう? 教えてくれ〜俺、何やらかしたのか知りたいんだ」

 ギュッタ

「抱きしめられた時の感触。『間違いない、この人だ』 てね」

 ギュッタには、男とは思えぬファイアのむっちりした感触に覚えがあった。


「それに、お化粧がやたら上手い! ファイアさんが、夜のお姉様たちのお化粧をちょっと直すだけで、随分綺麗になるじゃない?」

 ファイア

「だって俺、毎晩化粧しているよ~」

 ギュッタ

「あれ道化でしょ、以前『女装してもバレない』 て、言っていたし。トドメは、自分の夢が語れないこと」

 ファイア

「やっぱり、そこかハッハ! 広場に着いたぜ~! ギュッタ、読もうぜ~お触れ書きをさ~」


 あともう1つ、どんな時でも、どんな格好をしていても、声色を変えても、ファイア・レッドは謙虚で優しい。

 ファイアはまだ心の中で、何故自分の素性がザイオンに雇われた傭兵に、見破られたのかを気にかけていた。


 プリエトの街の大広場の中央に、クラノス王国から大きな立て札のお触れ書きが出て、大勢の人々が集まっている。

 字が読める住民が得意げに読み上げていた。


 お触れ書き

 ☆ プリエトの住民は、領主の死去を心より悼むこと!

 今後の街の運営に関する項目

 一、プリエト領主の後継は、戦死した領主の遺児とする。

 二、後継者が成人するまで、未亡人の兄であるプリエト憲兵隊長が養育する。

 三、後継者が15歳の成人を迎えるまで、領主の弟が執政を代行する。

 四、治政・方策は、後継者が執政するまでクラノス王国本営の許可なく変更することを禁ずる。

 a. 人頭税、借地税は現状を鑑み据え置く。

 b. 公衆浴場、大広場、墓所などの公共施設、使用料の値上げはクラノス王国本営の許可を必ず仰ぐ。

 c. 露天商の出店料、行商人の登録料に関してもb項と同じ扱いとする。


 これでは領主の弟は好きにできない。

 プリエトの人々はいつも通りの生活ができそうだ。

 ファイアは耳元で、お触れ書きの内容もバル爺の入れ知恵だと囁いた。

 あの日ファイアがバル爺の知恵を、プリエトの実権を持つクラノス軍・北方責任者のザンジバル中将に伝え、彼が権限を行使したようだ。


 ギュッタ

「これで一安心だね! ファイアさん」

「うん! この街で皆が夢を語れることが、俺の生き甲斐さ~。さあ、狼亭に戻ろうぜ〜!」


 広場を離れ西に進むと狼亭が見えて来た。

 青空教室の準備もあり、ギュッタとファイアは狼亭より先に夢幻堂に向かった。

 バル爺

「よう帰って来た! あ、腹を下しておったのだな。フォッフォッフォッ」

 バル爺も何が起きたのか知っている様だ。

 ファイア

「爺い! 手伝うぜ~」

 バル爺は決まり悪そうな顔をして話し出した。

「済まんのう…。実は、最近は青空教室の生徒が、荷物を運んでくれるのじゃ。じゃがファイアよ、授業の手伝いは続けてくれ。狼亭の飯代とうちの茶は、2人とも飲み放題は継続じゃ」

 自分たちが10日ほど休んでいる間に、クエストが消滅していたのであった。


 ファイア

「良いことさ。与えられるだけじゃ、青空のチビ達も成長しねえぜ~。違う仕事探そうぜ!」

 そう言ったが、2人は狼亭の前の芝生で力なく座り込んでいた。



日本の法律の露天商を参考にしました。

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