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邪竜様パレード大作戦

更新遅くなっており申し訳ありませんでした! 再開します!


 いろいろと疑問は尽きないが、ともかく今は首都でわしへの誤解を解くことが最優先だった。

 幸いにもリアは教会の面々に「邪竜さんは悪い人じゃないよ」と弁護をしてくれるそうだが――


「……脅してそう言わせてると思われたらそれまでだもんのう」


 ここが痛いところである。

 憑依した神様自身が弁護してくれたなら説得力が増したのだろうが、リアの主張だけではやや力不足という気もする。


 どうしたものかとわしが思案していると、レーコとリアがしゃがみ合っての作戦会議を終えてわしの方に歩いてきた。


「邪竜様。ひとまず案がまとまりましたので、奏上させていただいてよろしいでしょうか」

「おお、頼りになるのう。どんなの?」

「まず私は反論する者全員を獄炎の息吹で焼き尽くして事態の沈静化を図ろうと提案したのですが……」

「それは沈静ではないね。完全なる終焉じゃね」


 そうしてわしは全世界から名実ともに邪竜の汚名を浴びせられてしまう。

 はい、とレーコは重々しく俯いた。


「そういったことをこの巫女の娘にも指摘されまして……。そして、代わりにこの娘が提案した内容ですが」


 これまでのやり取りから察して、優しい子なのは間違いない。きっと街の人たちに危害が出るような作戦は提案しないはずだ。


「首都に踏み入った邪竜様には全方位からの熾烈な攻撃が予想されます。そこでこの娘は『邪竜様には海よりも深い慈悲を発揮していただき――ひたすら集中砲火に耐えていただきます』と」

「ああ、よかったあ。それなら街の人たちは大丈夫じゃね……」


 途中までそう言いかけてから、わしは一気に血の気をなくした。


「いかん、それはいかんよ! そんな作戦を取られてはわしが蒸発……ゲフン!」


 咳払いして言葉を止め、リアだけに顔を近づけて声を落とす。


「あのねリア。レーコには内緒にして欲しいんじゃけど、わしはちょっと攻撃に耐えられる自信がないかなあって……」

「心配なさらないでください。ドラゴンさんは神様が見込んだ方なんですから、窮地になればきっと神の奇跡が起きてその命をお助けくださるはずです……なんかこう、パーってなって攻撃が消えたりするはずです。たぶん」

「わしの命がかかった大一番で奇跡にワンチャンスをかけないで欲しいなあ」

「祈りが通じれば大丈夫です。さあ、神様を信じましょう」


 リアは目をキラキラさせて祈りに手指を組んでいる。悪い子ではないのだが、巫女だけあっていささか神様への信頼感が強すぎる。

 ちなみにわしは「信じましょう」と言われても、正直あんまりあの神様を信じられない。少し会話しただけでも、かなり雑そうな人格が滲み出ていたし。


 と、レーコが場を仕切るように手をぱちんと叩いた。


「巫女の娘。その案は既に却下したはずだぞ」

「あ……そうでした。ごめんなさい!」

「え? そうなの?」


 わしが目をぱちくりとさせると、レーコは跪いて頭を下げた。


「はい。このような作戦を取った場合、仮に邪竜様が海より深い慈悲を発揮されたとしても、私の方が我慢できかねます。衝動的に首都を壊滅させてしまうことでしょう。それゆえ却下させていただいたのです」

「ううん……あんまり褒めてはいかんことなんじゃろうけど、今回はお主のそういうところに感謝したいのう」

「お褒めに与り光栄です」


 少しばかり嬉しそうになったレーコが、地面から膝を上げて再び立ち上がる。


「というわけで最終案なのですが、あいつらを利用しようかと」

「あいつら?」


 レーコが指さした先を振り向くと、そこに群れていたのは神獣たちだった。神様が休眠に入ってからはより一層やる気をなくしたような感じで、昼食の後のペットみたいにゴロゴロとしている。


「あの獣どもも、一応はこの国の守り神です。それに両脇を固めさせて首都に踏み入れば、邪竜様の権威を示すことはできましょう。ついでに弾除けにもなります」

「あ、それはええかもしれんね……けど、やっぱりちょっと印象がよくないかのう」


 神獣に両脇を固めさせるという布陣は、こちらが一方的に彼らを従えているように見えてしまう。

 反発を買わないためにも、もう少し穏やかな印象を持ってもらえるようにしたいが――


「ここで先ほどあの獣どもに教えこんだ『神聖邪竜様帝国 国歌』を使いたいと思います。曲に合わせて獣どもを躍らせ、こちらの指揮下に入ったという事実を主張するのです」

「あのねレーコ。そんな風にしてはますます印象が……」


 ん? とここでわしは首を傾げた。


「ねえレーコ。たぶんその国歌、歌詞は物騒だと思うんじゃけど――歌詞抜きにはできる?」

「もちろんオフボーカルでも演奏可能です」


 曲に合わせて踊る獣たち、というのがわしの古い記憶を刺激した。

 まだ百歳にも満たない頃。珍獣として市場で売り飛ばされ、見世物屋に飼われていたころの話である。


 玉乗りや火の輪くぐり――わしはどれも最後まで習得できなかったが、そのときの見世物屋が動物たちを楽器に合わせて躍らせるという芸をやっていた気がする。


 わしはリズム感覚がいまいちだったので参加させてもらえなかったが。


 しかし今ならどうか。

 これまでのレーコとの旅路を経て、わしは魔力さえあれば飛行ができるまでに成長した。

 空中を飛ぶバランス感覚に比べれば、玉の上に乗ることなど朝飯前なのではないだろうか。


「音楽を鳴らしてわしは玉乗りをしていけば……偉ぶってるとは思われないじゃろうし……」


 光景を想像してみるが、どう見てもただの動物パレードである。高慢ちきな印象は与えないだろうし、敵意がないことも示せるだろう。


「よし、それじゃあレーコ。その作戦でいこうかの」

「採用してくださり恐縮の限りです」


 そう言いながら、わしは狩神様の黒爪をぷくりと膨らませてボールの形にした。

 変形させていると体力を消耗するから本番用のボールは改めてレーコに作ってもらうつもりだが、とりあえず感覚の確認のため一度は乗っておきたい。


「わしはこんな感じで玉に乗って行こうと思うから、ちょっと見ててくれるかの?」


 レーコとリアに向かって笑顔で言うなり、わしはぴょんと玉の上に跳んだ。

 一抹の不安すら感じない。今のわしは確実に五千年前のわしから進歩している。なんせ空だって飛べるのだ(魔力は別として)。もはや成功する気しかしない――




 ――ずべっ、と。




 思いっきり足を滑らせた感覚があって、わしの天地は真っ逆さまになった。

ムロコウイチ先生による本作のコミカライズ版第2巻が12月13日に発売予定です!

狩神様や聖女様が登場してどんどん賑やかになっていく巻ですので、ぜひともよろしくお願いします!

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