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異世界キャンプ ~チートはなくても美味しいものがあれば充分です~  作者: 綾川 鈴鹿
《カプト地方、砂漠編》二章、カルラ・オアシス
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15話、とてつもなく大きな鶏肉(1)

 激闘を終えた一同の前でゆっくりと倒れたロック鳥。

 日が傾く、間もなく夜の闇が荒野の隅からやってくるだろう。

 それを見ていたラーナが当たり前のように言った。


「さぁ、食べよ? リリ!」


 乗り気ではないリリを気にも止めずに両手を合わせたラーナ。

 一礼をすると、そのままロングソードで解体を始めた。


「さすがに、みんな疲れてるだろうし後にしない?」


 話を逸らそうとリリは軽くジャブを打った。


「闘う、楽しい。倒す、清々しい。食べる、美味しい。ここまでがセットでしょ?」

「野蛮人じゃない」

「それに食べなきゃ勿体ないし、最後まで戦ったロック鳥に申し訳ないよ?」


 ラーナはリリがそんな雰囲気ではないのを察していないのか、それともあえてなのか分からないが明るくそう言った。


「もったいないかぁ、まぁラーナらしいっちゃらしいか……」


(こっちの世界、いやっ違うか、ラーナの生きてきた世界はわたしの知らない本当の意味での弱肉強食)


 実際、こんなことを考えたところで、何も変わらないことは分かっている。

 色々と考えを巡らしたリリだったが、この世界では自分の方が恐らくは異質なのだろうと実感した。


(ラーナの言い分が正しいかなぁ、腐らせるわけにも行かないし)


 文明レベルが1000年以上は新しい前世で過ごしていたリリには、せいぜい魚をしめたり、海老を半割りにしたことぐらいしか殺生をしたことはない。

 それでも普通に過ごしてきた人よりかは、色々と経験をしている方だとの自負はあった。

 だが当たり前のように食べていた鶏肉は、屠殺や狩りから出来ていること、ほとんどの食材は元は生きていたのだと初めて実感した。

 今までそんなことは考えたこともない、言葉の以上の意味は知らないのだ。


「わかった、わかったわ!」


 リリは仕方のないことだと自分に言い聞かせ、両手を上げた。


「やーりー!!」

「まずは、腐りやすい内臓からよろしくねー」

「オッケー」


(ラーナに任せてばっかだったわ、この世界に来た今でも、本当の意味では命をいただく本当の意味を分かってないのかもしれないなぁ)


 そんな考えがリリの頭をよぎり罪悪感が募る。

 しかし、やはりというべきかまだ自分でやる勇気は出てこなかった。


(ごめんね、ラーナ……)


 リリは複雑な心持ちを奥深くに仕舞いこみ、いま考えるべき今日の献立を考え始めた。


「普通にローストするにしても、このサイズじゃ厳しいわよね? 茹でることもできないし油も使えない……あれっ?」


(これってどうやって火を入れればいいの? んー無理ゲーじゃない? だってわたしこんな大きな鶏肉なんて見たの初めてだしー)


 頭の中をぐるぐると考えが巡るが、一向に良い考えは出てこない。

 できる限り全てを美味しく食べたい、そう思えば思うほどに、リリにはレシピが間違っているように思えてならない。


「うーん、どれもいまいちぱっとしないなぁ」

「どうする?」

「サイズ感って重要だったんだなぁ」

「そのまま食べる?」


 大きな大きな鳥の周りを素早く動きながら解体するラーナが聞くとリリは答えた。


「いやいやいやいや、内臓の生食はお腹壊すでしょ!」

「そんなことないでしょ?」

「それはラーナだけよ!!」


(どんな料理をするにしても、大きすぎてちゃんと火が入る自信がないんだよなぁ、強火過ぎたら焦げちゃうしなぁ)


 リリはなぜか大きいまま料理にすることにこだわった、小さく切るのは負けた気がしたのだ、本来は必要ないプライドのようなものだろう。


(これは本当に調理方法が難しい……)


「まっとりあえず血抜きの準備しながら考えるわ、そのうち何か出てくるでしょ」

「りょうかーい、いざとなったらボクが生のまま食べてあげる!」


 ラーナはいつもとは違うリリに気づいたのか、ただ食べたかっただけなのかは分からないが、そう言い残すと下処理を始めた。


(そう言ってもらえると、気が楽になるわね……)


 リリは独り言をブツブツと言いながらも、魔法で樽に水を出す。

 気づいたらもう、いつも通りの風景だった。

 気休めでも、気のせいでも、その光景が心を軽くしてくれた。

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