14話、討伐隊(7)
クラウディアは訝し気な顔を直ぐに戻すと、真剣に答える。
「魔力もそこそこ戻りましたし、風の精霊を呼びますわ」
「遠くない?」
「精霊魔術は距離が自由なのよ」
「ふーん、そんなもんなんだ」
「それに、あちらもそろそろ援護が必要でしょう」
「それはそうね」
リリはクラウディアの言葉を聞き、改めてロック鳥の方を見る。
上手く飛べていないロック鳥だが、ラーナに対しては掴みかかるような動作はしていない、あくまで暴風の中で鉤爪や嘴を細かく繰り出すのみだ。
(ラーナに掴まれないようにしているのね、やっぱりロック鳥は知能が高いのね)
ロック鳥の鉤爪自体は二人共なんとか避けている、それでも攻め手には欠けているようでラーナが牽制しているところに、クリスタが軽く羽先を斬りつけるだけに留まっていた。
ラーナの投げナイフも、あまり効いてはいないようにリリには見えた。
「これ、大丈夫なの?」
「ダークエルフと、わたくしの援護次第かも知れませんわね」
このまま行けばロック鳥が勝ってしまう。
そんな予感が駆け巡る。
「アーン! どれぐらいかかるー?」
だからこそラーナは振り返らずに、大声でアンに呼びかける。
シュン、パッ!
「すまん、もう少しかかる!」
シュン、パッ!
「クラウディアはー!」
「間もなくですわ!」
(ラーナが他人を頼るなんて珍しいわね)
ラーナの言葉に不安感が増したリリ。
その横でクラウディアが立ち止まると、詠唱を始めた。
ようやくホーリーバジルを飲み込めたらしい。
「…………顕現したまえ風の精霊達よ」
クラウディアの周りで風が逆巻き、リリからはクラウディアの姿が見えなくなる程の強烈な竜巻が現れる。
「我が名はクラウディア・リューネブルグ、大気を逆巻き暴風を沈め給え」
詠唱を終えると、竜巻が一瞬で消えさり、人の形をした半透明の精霊が現れた。
しかしクラウディアはキョトンとしている。
「上位精霊? あれっわたくしの契約精霊の中にはいないのですが……あれれっ?」
なぜか呼んだクラウディア自身が一番ビックリしているが、呼ばれた上位精霊は気にせずに話し出した。
『フフフッ、ワタシはシルフのリーフィー、呼びかけに応じ馳せ参じましたわ、いったい何をすればいいのかしら?』
まだキョトンとしているクラウディア。
見かねたリリは、代わりにロック鳥を指差して答える。
「わたしはリリ、リーフィーよろしくね、わたしが呼んだわけじゃあないんだけど、リーフィーはあれ、倒せる?」
『まぁ!? ロック鳥、しかも成長過程の幼子なんて珍しいわ、ワタシも久しぶりに見るわね、残念だけどリリちゃん、風の精霊じゃあ相手にならないの』
「なんで? リーフィー強そうなのに」
『幼子とはいえ、ロック鳥は風を操る最上位モンスターですもの、タイタンみたいな土の精霊ならまだしも、ワタシじゃあ5人居ても無理ね』
「っえー! そんなに強いの?」
(じゃあどうしたら?)
リーフィーと話すリリに、ようやく正気に戻ったクラウディアは、慌てて声をかける。
「……なっ! リリ! あなた何をしているのですか?」
「なにって、クラウディアの代わりにお願いしているのよ」
「あなた、もしかして精霊と喋られるの?」
(っえ? 普通はムリなの?)
予想外の言葉にリリは取り繕いもせずに、追及を拒むことにした。
「みたい、なんでかは知らないから、聞かないで!」
「そんな、適当なことを……」
クラウディアとリリの問答にリーフィーが割って入る
『ピクシーは精霊から生まれ落ちた妖精の原種だもの、喋られるのは当然だわ』
「へぇ、そうなんだ」
『リリちゃん、ティターニアやオーベロンは元気にやってる?』
「っあ、すいません、わたしはぐれ妖精なので、よくわからないの」
『あらそうなの? それは残念ねぇ』
またも話すリリに、呆気に取られるクラウディアがまたも割って入る。
「あなたが精霊と喋られるのはこの際、置いときましょう、クリスタが心配だわ、今はあの化け物をどうにかしないといけない」
「そ、そうね」
「風精霊よ、ロック鳥の巻き起こす風を弱めなさい! そしてわたくしを下までおろして」
強気に命令をし崖から飛び降りたクラウディアに、リーフィーはかなり不満げな顔をしながら従う。
『召喚者はあの子なのね、それじゃあ盟約に従わなきゃいけないわねぇ』
「なんか残念そうね」
『だってぇ、久々の地上でリリちゃんとの楽しいお話もここまでなんてぇ』
「また会いましょ、いまはお願い!」
『分かったわ、ワタシは成すべきことを成すわね』
リーフィーは風になり、崖から飛び降りたクラウディアをふわりと地上に着地させる。
そしてロック鳥の周りで弾けるように消えてしまい、リリにも見えなくなった。
「っあ、消えちゃった」
「役目を遂行しているのよ」
「へぇー面白い魔法ねー」
「あれを見なさい」
リーフィーが消えた後、ラーナとクリスタの動きが目に見えて早くなっていた。
(なにか不思議な体験だったわね、まぁ今はラーナを応援しなくっちゃ)
考えることをやめたリリは、危険がなさそうな範囲で、近づくことにした。




