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異世界キャンプ ~チートはなくても美味しいものがあれば充分です~  作者: 綾川 鈴鹿
《カプト地方、砂漠編》二章、カルラ・オアシス
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14話、討伐隊(3)”料理パート”

【オニオンスープとバケット】


「っえ、バケットなんてあるの? そんな高いパン、ボク初めて食べるよ!」


 思わずラーナがテンション高めに反応をした。

 そして屈託のない満面の笑みで、お礼をする。


「ありがとう、クリスタ!!」


(初めて食べるバケット! テンションあーがるー)


「お礼は私に言うべきではなくて? 私の所有物ですのよ?」


 ラーナのテンションに水を差すように、クラウディアがそう言うと、ラーナは何も気にせずに答える。

 もう頭の中には、クラウディアに虚仮落とされ、差別されたことは頭にないようだ。


「そっかそれもそうだね、クラウディアもありがとう!!」


 それを聞いて、クラウディアの表情は、更にバツの悪そうなものになっていく。

 対照的な二人のやり取りを、遠目から興味がなさそうに見ていたイヴァだったが、ハッと何かに気づいた後に口を開いた。


「あぁ、そういえばクリスタには言っていなかったかや?」

「どうされました?」

「妾は基本的に肉は基本食べん、クリスタよ作る際はよろしく頼むのじゃ」

「わかりました、ベーコンで取ったスープは大丈夫ですか?」

「普段は肉から取れるもの全部を食わんが、今回は緊急時だし構わん、それぐらいならば許そう」


 ワガママを言っているのはイヴァだというのに、誰よりも偉そうに言い放った。

 そこに、周りを見渡し静観していたアンが質問を投げかけた。


「話は一段落したか? クラウディア見張りをするぞ」

「え? えぇ……」

「あんたは右側と下、あたしは左側と上を見ておく、万が一だがロック鳥以外のモンスターが来ないとも限らないからな、しっかり通ってきた道も見といてくれよ?」

「わかりましたわ」


(ロック鳥の縄張りに、モンスターがいるとは思えないのに、アンは心配性だなぁ)


 アンはクラウディアを引き連れて入り口へと向かう。

 二人を見送ったクリスタは、直ぐに料理に取り掛かる、そこに改めてラーナが声をかけた。


「クリスタ、ボクに手伝えることある?」

「ありがとうございます、ではここにある玉ねぎを全て、薄切りにしていただいてもよろしいですか?」

「任せて!」


(ボクを差別しない人種は珍しいなぁ、イヴァみたいに煩くないのもいい)


 ラーナは手際よく玉ねぎを切り出した。

 その横でクリスタは棒状に切ったベーコンを鍋で炒めだすと、ジュージューと音を立て豚の焼けるいい匂いが周りを包む。


「いい匂いだねぇ」

「そうですね」

「はいっ切れたよ、次はなにかある?」

「ありがとうございます、早いですね」

「ナイフ使いは慣れてるからね」

「なるほど、後は炒めて煮ていくだけですのでもう大丈夫ですよ」

「そっか」

「料理は慣れていらっしゃるのですか?」

「んー、切って焼くぐらいなら? あとボクには敬語じゃなくていいよ、気軽にラーナって呼んでよ」

「かしこまりました、口調は直ぐには無理ですが善処しますね、お二人はこの先の作戦の要です、よろしければ暫し休まれますか?」

「んー、そうしよっかな、ありがとうクリスタ!」


 イヴァが既に奥で寝袋に包まり寝息を立てていたので、音を立てないように静かにラーナはストレッチを始めクリスタと会話をする。


「クリスタは作戦、上手くいくと思う?」


(ボク等が引きつけて、イヴァがリリを連れて帰る、上手くいくかなぁ?)


 たったそれだけの作戦、作戦とは言えるほどのものではないが、勝算は充分にある。

 ラーナの中には、一対一での真剣勝負を望む気持ちはある、しかし今回はリリの命がかかっているのだ。


「っま、しょうがないか」


 そう呟いたラーナは、ストレッチを始め、今後の流れや戦い方を、頭の中で何度も何度もシュミレーションをする。


「それじゃあ、ボクも少しだけ仮眠を取るから何かあったら起こしてね」


 ラーナはおやすみの挨拶をしつつ、クリスタの混ぜる鍋の中を覗く。

 中には色付き始めた玉ねぎと、こんがりと焼き色のついたベーコンが混ざり合っていた。

 そこに小麦粉を振りかけてさらに炒めるとクリスタは答えた。


「わかりました、まだかかりますのでラーナ様もごゆっくりお休みください」


 ラーナにとっては、こんなにも丁寧に接してくれた人族は初めてだった。

 少しだけ温かい気持ちになりながらも、そのままイヴァの横で膝を抱えて座ると、無意識にふと口から呟きが零れる。


「ボクは神なんて信じてない、けど今だけはなんとかリリが生きてることを祈るよ」


(ボクは、どこかでまた地母神ブーミを信じてるのかな?)


 自分の言葉に矛盾を感じながらも、ラーナは目を閉じてスーッと夢の世界へと落ちていく。


 ラーナが起きると料理は出来上がっていた。

 食卓を囲む五人、簡易的なスープに綺麗な焼き目をつけたバケットが並んでいる。

 スープはとろみがついておりとても温まりそうだ。


「今回は、山の上で体温も下がっているかと思いまして、温かいものを用意しました」

「さすがはリューネブルグ家のメイドだな、隅々まで気が利いてるな」

「もちろんですわ、しっかり教育していますもの」

「ふーん、それよりも早く食べんかや?」


 イヴァの言葉を聞いて皆がスプーンを手に取る。


「おいしーい!! スープもとろみがあって温かくて、バケットもサクサクだぁ」

「ベーコンの良い出汁がでてるな!」

「考えましたわね、小麦粉でとろみをつけたのね」

「珍しくご慧眼ですね」

「クリスタ……」


 五人はワイワイとまではいかないが、つかの間の休息を過ごした。

 ラーナも少しは距離が近づいたことを、無自覚ながら嬉しく思っていた。


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