表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界キャンプ ~チートはなくても美味しいものがあれば充分です~  作者: 綾川 鈴鹿
《カプト地方、砂漠編》一章、死の荒原
39/115

7話、ジャイアントスコーピオン(3)

「ヤッホー、リリよ! 今回の一口メモ!」


「今回の名言はアメリカの料理人、ジュリア・チャイルド」



”脂肪分は食べ物に味わいを与える”



「脂! ジュルリッ」

「カロリー、罪な響きね!」

「人はカロリーには抗えないわよね」

「あー食べたくなってきた、ダイエットはあしたからにしよーっと」



「ここから本編でーす!」

 リリ達は一面の砂漠から荒野の岩石地帯へと移っていた。


「ここが目的地?」

「うん、さっきよりはいいところでしょー」

「確かに岩で影がある分、マシね!」


 大小様々な岩がそこら中に点在しており、小さなものでもラーナの数倍以上、大きなものに関しては山のように巨大なものまである、昔は渓谷だったのかも知れない。


「っあ!! トカゲ!!」


 ラーナが勢いよく走り出した。


「ちょ、ちょっと、待ってー」


 あっという間に置いていかれたリリも急いで後を追う。


「はぁ、はぁ……急に走らないでよ……捕まえた?」

「うん、ほらっ!」


 ラーナの手には赤褐色のトカゲが握られている。

 手のひらサイズと小さめだが、ギョロッとした目がリリを見る。


「み、見せなくてもいいわよ」

「美味しそうなのにー」


(わたしには大きくて恐いんですけど! マジで、でっかい!)


 思わず目を逸らしたリリの先、小さな洞窟が目端をよぎる。


「っあ、洞窟!」

「洞窟ー?」

「ほらっあそこ!」

「ほんとだー!!」


 二人が洞窟へと向かうと、ひんやりとした空気が中から吹き抜ける。

 中はリリが住んでいた部屋の2倍ぐらいはあるであろう空間が広がっていた。


「ねぇラーナ、水があるわよ」

「ホントだ、ボクもこんな所に水があるとは知らなかったなぁ」


 雨水だろうか、奥の方にはラーナの腰程ぐらいの水が溜まっている。


「見えづらい場所だもんねー」

「もっと早く知りたかったー」


 きっと、いろいろな生き物がここの水を飲みに来ていたのだろう、様々な足跡らしき痕がある。


「それにしてもここは、涼しいし過ごしやすいわね」

「そうだねっ」

「焚き火、出来そう?」

「入口も大きいし、下ってないから問題無いんじゃない?」


(あー、一酸化炭素中毒! 確かに重要だわ!)


「じゃあ今日の拠点はここに決定!!」

「危険が無かったらね! 水もたくさんあるし、後で水浴びと洗濯しよっか」

「飲み水にはしないの?」

「なんで? リリが出してくれるって言ったじゃん」


 当たり前であるかのように言ったラーナに、リリは過去の自分の言った言葉を思い出す。


[水だけでも頑張って出すわ!]


(あぁハッキリと言ってた、忘れてたー!)


「そっそうだったわね、任せなさい!」

「うん、リリが出した水のが美味しいしねー」

「そうなの?」

「うん、なんて言ったらいいかな……土の匂いがしない」

「ふぇー、違うのね」


(ラーナが普段飲んでいた水か……うーん、想像したくないわ)


「だからさっ! ここの水は水浴びに使おうよ」

「オッケー!! わたしも砂で髪がゴワゴワ、ラーナに至っては返り血と土でドロドロだもんね」

「一応は洗ったんだけどなぁ」

「そりゃ、あんなにも激しく戦ったらそりゃそうよ」


(水場はありがたい、この量をわたしの弱い魔法で出そうと思ったら……想像したくもない)


 リリは嫌な想像を振り払うかのようにブンブンッと顔を振り、別の話題を切り出した。


「ラーナ、暗くなる前に焚き火を用意しておきましょ」

「オッケー、ボクは薪とってくるからリリは水を補充しといて」

「わかったわ、よろしくね!」

「うん! ちゃちゃっと済ませちゃおー」


 ラーナは革袋と手鍋と鞄を置いて、洞窟の外へと出て行った。

 リリは食材もないので、軽く身支度を整える。


(こんなにも涼しく気持ちいいなんてサイッコー! 日差しが無いなんて屋根もサイッコー!)


「とりあえず髪でも、洗おっと」


 リリは腰まであるような長髪を、水面に垂らしザブザブと洗う。


「シャンプーもトリートメントも無いのは辛いわねー」


(今はサラサラなこの髪も痛んじゃうのかなぁ、もったいないわ)


「シャンプーの作り方を知っていたらなぁー」


 記憶を遡るが、やっぱり覚えてはいない。

 しょうがないのでリリは一心不乱に髪を洗う事にした。


 ガサ、ガサガサ……


「ん? ラーナ? 今日は遅かったわね?」


 いつもは一瞬で焚き木を集めて来るラーナだが、リリには今日は少し遅れているように感じた。


(出ていく時にトカゲを持っていったし、どうせつまみ食いでもしてたんでしょ? らしいっちゃらしいけど、後でお説教ね!)


 ラーナが遅れていることには気にも留めず、水で顔と髪を洗いながらリリは聞いた。


「ちゃんと焼いて、味付けもしてからの方が絶対に美味しいのに……」


 ぼそりと呟くリリだが、別の疑問が持ち上がる。


(あれっ? 返事がない)


 ガサガサ、キ、キシャ、キシャー


(っえ! この声って、サソリーー!!)


 ようやく物音の正体に気づいたリリは、焦って振り返る。

 目の前には見たこともないほど大きなサソリが入り口を塞いでいた。


(もしかしてわたしって水に濡れると縮むの? このサソリ大きすぎない?)


[いやっ、そんな、そんな訳がないじゃない! ピクシーが水で縮むなんて聞いたこともない!」


 立ちはだかる、本物のジャイアントスコーピオン。

 広々としていた洞窟を埋め尽くすほどの体躯、普通のサソリと比べると大きいのは当たり前なのだが、特に尻尾が長く太いように見える。


「尻尾の棘だけで、わたしと同じぐらい大きくない?」


(毒なんか関係なく、刺されたら死ぬわね……)


「……っ……ゴクリ!」


 思わず喉が鳴り、心臓が飛び出る程に焦るリリ。

 気づいていないのか、それとも気づいていて無視をしているのか、ジャイアントスコーピオンはリリに見向きもせず、水場へとゆっくりと近づいていく。


(どうかこのまま、何事もなく帰ってくれますように……)


 岩肌に身を隠し、ブルブルと震えながら願うリリ。


 その時!!


「キシェエエェェーー」

「キャー! なになにー?」


 ジャイアントスコーピオンは大きな金切り声を上げた、同時にまるで掃除機に吸い込まれたかのようにリリの前からスルッと消えた。



「ヤッホー、ラーナだよー!」

「ヤッホー、リリよー!」


「水場を見つけられるなんてラッキーね!」

「お風呂入りたーい!」

「確かに! SSでスズカ(作者)に書いてもらおっか」

「リリが言っても言うこと聞いてくれないんじゃない?」

「大丈夫よ!」

「なんで?」

「わたし、主人公だもの! 一番の権力者だもの!!」

「どうかなぁ……」


「「次回『ジャイアントスコーピオン』その4」」


「異世界って理不尽だわー」



現在は、1日1話投稿です!

13:30、もしくは21:30にアップする予定ですが

前後する可能性があるのでご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ