SS、砂漠の夜空
前回までのあらすじ!
「地球から転移したわたし[リリ]と砂漠で腹ペコな鬼族の少女[ラーナ]」
「二人は、革鎧を食べてお腹いっぱい!!」
「さぁ旅の始まりよ!!」
「次の話は『砂漠の夜空』ちょっと先の話しね」
「さぁ本編が始まるわ! 『異世界キャンプ』楽しんでみてください」
ある日の深夜、リリはふと目を覚ました
「……さむっ!」
寒さにブルブルッと身震いしたリリは文句を零す。
「昼は熱いくせに、夜は寒いって劣悪!」
乾燥した空気自体は、とても澄んでいて気持ちが良いのだが、この寒さの前では意味などない。
(砂漠の夜は冷えるって知ってはいたけど……)
リリは両手で腕をこすりながらも、寝ぼけた眼であたりを見渡す。
(真っ暗だわ、あの時ほどじゃないけど)
光の存在しない砂漠の夜だが、薄ぼんやりと足元は見えた。
「火は残って……ないか」
眠りについてからは大分経ったらしい、焚き火の炭からは煙の残り香すら残っていない。
再度、眠ろうにも薄着のリリにはこの寒さは厳しい。
「ラーナー、起きてるー?」
可能ならラーナを起こし火をつけて貰いたいと思ったリリは声をかけた。
「……流石に寝てるかぁ」
開いていない喉で声を出したので、起きていたとしてもラーナの耳には届いていないであろう。
再度声をかけるのは気が引けたリリは、どうしたものかと上を見上げた。
「っあ!」
思わず声が漏れ出る。
視線を上げたその先には、現実離れした世界が広がっていたのだ。
「すっごーい!」
透き通る空気の中、丸く控えめに照らす月、我こそはと輝く無数の星達。
全てが、幻想的で魅惑的だ。
「星が掴めそう!」
リリは思わず飛び上がり、キャッキャとはしゃぎ宙を舞う、もう寒さのことなど頭から抜けていた。
「リリ、帰るの?」
掛けられた声に気づき、文字通り舞い上がるリリはクルッと振り返り聞いた。
「帰るってどういうこと?」
横になっていたラーナは、そのままゴロッと、仰向けになると、丸まった膝を伸ばす。
「リリが月の精に見えたから」
(っえ!? 冗談? 本気? どっち?)
少しドキッとしたリリは「ありがとう」とだけ言い、また空を見る。
キザ過ぎる気もするが、素直なラーナに言われると不思議と悪い気はしないので、思わずにやけてしまった。
「きれいだなぁ」
胡乱げな目のまま、夜空とリリを眺め、ラーナは呟いた。
気持ちを整え、表情を戻したリリは、空中散歩を終えるとラーナの胸のあたりに座る。
するとあることに気づく。
(ラーナ意外にも……)
リリは自分の無い胸を両手で触り、少し落ち込む。
口には出さなかったが、いろいろと思うところがあったのだ。
「それで、リリはどうしたの? 寝坊助さんの朝はまだ先だよ?」
まだ覚醒してない声色、眠たそうな目を向け、ラーナは聞いた。
その姿がリリの目には少しだけ物憂げに映った。
ラーナは早寝早起きなので、リリが寝起きを見るのは初めてだった。
(普段とのギャップがすごいわねっ!)
「寝坊助さんとは失礼な!」
「フフッ、事実だからねー」
「んもぅ、わたしだってたまには早く起きるわよ!」
まだまだラーナは眠たそうだ。
普段よりも数段静かに喋っているラーナに、なんだかまた照れてしまいそうなリリは、敢えて明るく答える。
「……で、ほんとうは?」
「寒くって起きちゃった!」
「あーなるほど、入る?」
ラーナがマントの首元を広げてリリに聞く。
「っえ!? えぇーっと……は、入る、わ」
ドギマギと答えたリリは、這うようにラーナの首元に向かうと、やはり気になった。
(やっぱり意外とある……着やせするタイプ? ずるいわ!)
何がずるいのかはリリにしか分からないが、心の中で文句を言いながらも首元に辿り着いた。
(急に恥ずかしくなってきたんだけどー)
人の服に入る経験などあるわけも無い。
いざ目の前に来ると、恥ずかしさが込み上げてきて、怖気付いたリリだったが
「お、お邪魔しま〜す」
小さくたどたどしい声で挨拶をして、そのままゆっくりと頭から潜るように入った。
「どう? あったかい?」
「うん、暖かくて安心する」
「それは、よかった」
「ラーナは体温が高いのね」
「そう?」
オークだからなのか、筋肉質だからなのか、ラーナは他人よりも体温が高いらしい。
「そうよ、それにラーナって柔らかくて気持ちいいわ、高級ベットみたい」
「ちょっと、どこ触ってんのさ!」
「たまたまよ! ラーナはおっきいわね!」
ついに言うことにしたリリ。
例えラーナの胸がそこまで大きくなくても、殆どの人はリリよりも大きい。
それは人であったときからそうだった、だからこそ憧れる。
(良いなぁー)
「ボクも大人だからね!」
ラーナが胸を張ると、リリの身体が持ち上がる。
「20歳の小娘が何を言ってるのよ!」
「リリなんて0歳じゃん?」
「ホントは26歳なのよ?」
リリは顔も出さずに、流れでカミングアウトした。
おちゃらけていたのは、このためだったのだが、言ってみるとラーナの顔を見るのが怖くなった。
「ふぅーん」
「っえ!? それだけ?」
「まぁ……リリは意外と物知りだし、振る舞いも、ね」
「意外は余計よ!」
ラーナはクスクスッと笑うと、そのまま黙ってしまった、リリの返事を待っているのだろう。
「……き、気づかれてたかぁ」
「バレバレだったよ? 聞くつもりは無かったけどねー」
「えぇ? 上手く隠してたと思うんだけどなぁ」
「うそだー、隠すつもりなかったでしょ?」
ラーナの洞察力が高いのか、リリの隠し事が下手なのか、どちらもどちらといった所であろう。
しかし、気付かれていたと分かると、俄然リリの気持ちも前向きになる。
「っま、いっか! わたしこの世界の住人じゃないのよ」
明るく切り出したリリは、そのままポツリ、ポツリとラーナに出会うまでを話しだした。
間違えないようにゆっくりと、それでいて明るく。
『異世界人で、元々は人だったこと』
『リリの世界では魔法も錬金術も無く、科学が発展した平和な世界であったこと』
『料理の知識も異世界のもので、この世界のものではなかったこと』
そして最後に
『転移をしたらなぜかピクシーになっていたこと』
ラーナは一つ一つ、軽く頷きながら聞いていた。
「っま、そんなところ!」
「へぇー、面白そうな世界だね」
「ラーナには物足りないかもしれないけどねー」
「確かに! 戦いが無いのは窮屈かも」
冗談っぽく笑ったラーナ。
「わたし、元異世界人だけどいいの?」
「リリはリリだから、今さらだよねー」
「それってどういうこと?」
「ナイショ!」
リリにはラーナの顔は見えないが、恐らく笑っているであろう事は分かった。
「ナイショなんてずるいわー」
そう言うとリリはラーナの胸を改めて揉む。
「ちょっとー、なにするのさ」
「からかったたお仕置きよ!」
「そんなこと言ってー、揉みたいだけでしょ?」
「まぁまぁ、もうちょっとだけ」
「リリ、怒るよ?」
「はぁーい」
リリはくるりと態勢を変えると、マントから顔を出し、ラーナと同じように空を見上げた。
「リリ、くすぐったい」
「あらっ失礼、何か当たった?」
身体を反転させた時に、リリの長い髪と羽根がラーナの肌を撫でたらしい。
「まぁ……いい、あんまり動かないでね」
「それは無理な注文ね」
「リリはもうちょっと落ち着きを持とうよ」
「それも無理な相談ね」
「それでも、ボクより大人なの?」
「それはそうよ? 敬ってね!」
何一つ悪びれる事もなく答えるリリに、ラーナはハァーッと大きな溜息をついた。
リリは言いたい事を言って満足したのか、また空を眺めると感想を溢した。
「こっちの夜空は星がキレイねぇ」
(地球の星はこんなに綺麗じゃなかったもんなぁ)
「っね、ボクも初めて見た」
「初めてなの?」
「ゆっくり空を眺めたことはない、かな?」
過去を思い出しながら話すラーナ、思い出そうとする時点でほとんど見ていないことがわかる。
「わたしは好きよ、時間を無駄にしてる感じが好き」
「リリは独特だね」
「非凡って言うのよ!」
「まぁ余裕はあるよね」
「余裕?」
ラーナの言葉に疑問を覚えるリリ、時間や暇ならともかく余裕という言葉はしっくりこない。
「ゆっくりと時間を過ごすって、余裕がある人しかしないと思うんだぁ、ボク」
「なるほどねぇ」
夜空を見上げ他愛もない話しをする。
意味合いは違うが、そんな時間を二人は何よりも幸せに感じていた。
(この中のどれかは地球なのかもしれないなぁ)
ラーナと話しつつそんな事を考えていたら、リリはラーナの胸元で眠りについていた。
「ヤッホー、ラーナだよー!」
「ヤッホー、リリよ!」
「リリって夜の方がキレイだよね?」
「それは、昼はカワイイってことで良いの?」
「その自信はどこから来るの?」
「わたし、カワイイでしょ? キレイでしょ? ピクシーなんだし!」
「あぁ、種族的にってことね」
「わたし、他のピクシーを見るまでは自信満々で行くわ!!」
「好きにすればー」
「「次回『デザートフィッシュ』その1」」
「異世界って理不尽だわー」
現在は、1日1話投稿です!
13:30、もしくは21:30にアップする予定ですが
前後する可能性があるのでご了承ください。




