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異世界キャンプ ~チートはなくても美味しいものがあれば充分です~  作者: 綾川 鈴鹿
《カプト地方、砂漠編》一章、死の荒原
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4話、ラーナのカミングアウト(4)

「ヤッホー、リリよ! 今回の一口メモ!」


「今回の名言はアメリカの経営者、ガイ・フィエリ」



『食はただエネルギーを摂るだけではない。それは体験だ』



「なるほど、確かに同じものを食べても」

「誰と、どこで、どんな状況で、食べるのかって重要よねー」

「わたしも……」

「んーこの話はネタバレになるからやめとくわ!」



「ここから本編でーす!」


「いいの、いいの、種族違うと分かんないよねー」

「……うん、わかんない」

「単純に広くて豊かだから、うらやましかったのかもしれないしね」

「ルベルンダは土地が、枯れてるの?」

「流石にこんな何もない砂漠ほどではないけどねっ!」


 鍋の中にある革鎧を口に放り込むラーナの態度は、先程までの物憂げな感じとはほど遠い、リリを見ながらいたずらっ子の様にニヤリッと笑った。


(ラーナは強い子ね、なぜここで笑えるんだろう?)


 リリの感覚では、一族の汚点に故郷が枯れた土地だなんて事は、明るく話せることではない。

 ましてや価値観の違いを認め、他人に話すのはもっと難かしい。


(色んなものを乗り越えて笑顔でいるのね)


 リリは素直に感心し、その上で聞く事にした。


「じゃあラーナさんは、復讐をしに来たって訳ではないのよ……ね?」

「っあぁ、そっか! 今の話を聞いたらそう思うか」

「でも違うんでしょう?」


(いくら平和な世界から来たわたしでも、ラーナさんの態度を見れば、それが違う事ぐらいはわかるわ)


 ラーナからは怒りはまだしも、恨めしいなんて感情は微塵も感じ取れない。


「うん、ボクはママの足跡を追ってるの」

「……足跡?」

「ごめん、説明が足りないね」


 一人納得したラーナと、今だ疑問が頭の中を占めるリリ。

 今度は先に言葉を発したのはリリの方からであった。


「ラーナさんのお母さんに、なんかあったの?」

「ボクのママはね、何度も何度も大陸へ向かっては偵察をしてたらしいんだ」

「いわゆる、密偵ってやつ?」


(鬼族もそういうことするんだ、意外! 筋肉こそ正義、力こそパワーって感じだと思ってたわ)


「だね、大陸のいろんな場所に行っては他種族と交流をしてたみたい」

「へぇー」


(でも、ラーナさんの境遇を考えると、お母さんも大変だったんじゃないのかな? っあ! ようやく革鎧が飲み込めたわ! あー……顎どころかもう首まで痛いわ)


 リリは首に手を当て軽くほぐすと少し俯くいた。

 ラーナは、リリの動きから不安があると感じ取ったのか、より一層、明るく話し出す。


「ボクのママは角が特別短かったんだよ?」

「ラーナより?」


 リリから見たらラーナの角は前世でアニメで見ていたものよりかなり短い。

 フードを被っていると、人だと勘違いしてもおかしくないほどである。


「まぁね、遠目には鬼族に見えないぐらい、らしいよ?」


 ラーナの「らしい」という言葉に違和感を感じたリリ。

 だが口に出すのはやめ、別の質問をする事にした。


「じゃあ、鬼族なのは隠して密偵を?」

「そうらしいよ」


(また言った、らしいって随分と他人行儀よね、仲が悪いのかな? でも密偵なのは知ってるみたいだし……んーわっかんないわね)


 リリの感じた違和感は正しいのであろうが、不安が勝り聞き返すことが出来なかった。

 ラーナの方は気にせず鞄から分厚い本のようなものを取り出すと、リリに広げて見せてきた。

 そこにはびっしりと文字らしき物が書かれている。


(本? でもこれ、手書きよね? どういうこと?)


 悩むリリにラーナが答えを言う。


「ボクもママの日記を見て、はじめて知ったんだよねぇ……」


(あぁ日記か! なるほどねぇ!)


 合点のいったリリに、先程とは別の不穏な思いつきが持ち上がる。


「ラーナさんのお母さんは密偵してたのよね」

「うん、そうだね」

「ってことはこれ……国家機密とか、じゃない……の?」

「知らなーい」

「いやいやいやいや!」


(軽いって! 国家機密は、やばいって!)


「大丈夫、大丈夫? ほらここ見て?」


 ラーナはリリを摘まみ上げ、日記を無理矢理みせる。


(だから軽いってぇ、らしいと言えばらしいけど……)


 しかし、それとこれとは別の話しである。


「コラー!! はなせー!」

「うわっ、暴れないでよ!」

「いやだー、みーたーくーなーいー!」


 リリはブンブンと体や手足を振るが、さすがはハイ・オーク、摘まむ指の力が強く逃げられる気配すらない。


「ラーナ! わたし国家機密を見て、世界や国家に狙われたくないー、嫌だー!!」

「いいから、いいから、ここだよ? 見て!」


 慌てふためくリリだが、ラーナの力の前では抵抗など出来るわけもなく、半ば強制的に日記を見せられる。


(……んん?)


 そこにはよくわからない図形が綺麗に並んでいた、恐らくはこれがこの世界の文字なのであろう。


「……あのーラーナさん?」

「なに?」

「読めません……」


 さっきまで暴れていたリリは大人しくなり、眼からは光が消え、言葉遣いは苦々しかった。


(文字ぐらい読めるようにしといてよ! ってかなんで言葉は通じるのよ!)


 怒りと共に疑問を覚えたリリだったが、ラーナの言葉が現実に引き戻す。


「リリって頭が悪かったんだぁ……」

「いやいやいやいや、悪くないから」


(別に、良いわけじゃあ無いけど、悪いって言われるのはいやー!)


「気づかなくて、ごめんね」

「謝られると余計に悲しくなるから」

「ごめんごめん」

「あーまた謝ったー、それにさっき生まれたばかりって、言ったじゃない」

「……ビックリした?」


 ラーナは摘まんでいたリリを離すと、堪えていたものが溢れ出すかのように、ケラケラと腹を抱えて笑いだした。


(からかわれてた? っえ、どこから? わたし本気にしたんですけど!)


 自分は堂々と嘘をついている事は棚に上げ、ムッとしたリリはぶっきらぼうに聞く。


「それで?! なんて書いてあるの?」


(もういい! 国家機密だろうが何だろうが、聞いてやろうじゃない、かかってこいやー)


 先程まで笑っていたラーナだったが、少しだけ落ち着きを取り戻すと、日記を改めて見て穏やかに言う。


「しょうがないなぁ、じゃあボクが読んであげるね」


 屈託なく、嫌味もない、明るいラーナの態度。

 それは、出会ってから今まで嘘をついていいるリリの心を、更に憂鬱な気持ちにさせた。

「ヤッホー、ラーナだよー!」

「ヤッホー、リリよ!」


「リリ! 暴れないでっ!」

「わたしやっぱり、国家機密は聞きたくない!」

「ハァー、裏でごねるのやめてくれる?」

「やだやだやだやだ!!」



「「次回『SS、ママの手紙』」」


「異世界って理不尽だわー」



一週間26日までは3話投稿する予定です。

7:30、13:30、21:30の予定ですが、前後する可能性があるのでご了承ください。

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