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異世界キャンプ ~チートはなくても美味しいものがあれば充分です~  作者: 綾川 鈴鹿
《カプト地方、砂漠編》二章、カルラ・オアシス
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17話、激闘とその先(1)

 デザートプレデターと出会ってから半日ほど経っただろうか?

 馬車で逃げ、死闘を尽くし、ギルドの討伐隊までが手助けをしてくれた。

 それでも残りの一体は、まだリリたちの目の前で、ウロウロとしている。


「流石に、この一体はあたし達でやるしかないか」


 アンが大盾を置きロングソードを両手で構える


「ごめんなさい、わたしがもう少し人を呼べたら良かったんだけど……」


 申し訳無さそうに俯くリリ。

 クリスタはナイフを改めて握り直すと淡々と話し出した。


「いえっリリ様は充分に仕事をしてくださいました、時間はかかるでしょうが、残りは私とアン様でなんとかしてみせます」


(二人でどうにかなるのかな? 大丈夫って言ってるけど)


 リリの心配をよそに、クリスタはデザートプレデターへとジリジリ歩を進める。

 アンも連動してゆっくりと挟み込むように裏に回りだした。


(わたしもやれることをやらなくちゃ)


「……イヴァ! 急いで焚き火用のサボテンと燻製の鶏肉、あとなんでもいいから布を出して、お腹空いた!」


 仰向けに倒れながら、ラーナがイヴァのローブの袖を引く。


「ふぁ? 急にどうしたのじゃ?」


 素っ頓狂な声を上げたイヴァは振り返るとラーナに聞く。

 ラーナはゆっくりと起き上がると、真剣な目でイヴァをまっすぐ見ている。


「早く! あの二人じゃ勝つのは難しい……ボクも戦う」

「っえ? 今なんて?」


(まさかまだ闘うの? 無茶よ)


 ラーナを改めて見ると、傷だらけで地球に生きてきたリリには見るに耐えない姿だった。

 二人を見守りながら、横になったラーナを見てリリは決意した。


「そんな傷で……右手なんて結構な出血よ!?」

「こんなのは傷にすらならないよー」


 リリの言葉に、当り前かのように答えたラーナ。

 イヴァが出した布を口で細く切り裂いては、簡素ながら傷口を手際よく止血する。


「こうやってえ血を止めて、無くした分の血は食べて戻さなきゃね」

「食べても、直ぐには意味ないでしょ!」

「小鬼の意見に賛成ですわ、やれることは何でもやるべきですわ」


 ラーナの謎理論が飛び出すが、フラフラになりながらも、馬車にもたれかかり横で聞いていたクラウディアも賛同した。


「クリスタは正面戦闘が得意なタイプではないのよ、早く助けに行かないと」

「でもクラウディア、顔が真っ青よ? 無理よ」


 頬を両手で掴みリリが言う。

 それをクラウディアは手で弾き、言い返す。


「うるさい妖精ですわね」

「心配してるのよ!」

「これぐらいなんてことないわ! こんなのただの魔力切れで……」

「でも……」

「少し休めば剣ぐらいは振れるわ!」


 リリの心配をよそに、クラウディアはレイピアの手入れを始め、ラーナは焚き火の火にナイフを数本かざして炙り出す。


「じゃあ、リリのウォーターヒールで出した水を飲んでみたら? クラウディアも多少は魔力が戻るかもよ?」


 そのまま首だけ振り返ると、ありえない提案をして来た。


「「っえ!?」」


 あまりの一言に二人の声が揃う。


「ウォーターボールは飲んでるじゃん」


(確かに……回復させる魔法だしなんとかなるのかなぁ、危険な気がするしクラウディアは絶対に嫌がる気が……)


 魔法でだしたもの、しかも亜人であるリリの出した水を、クラウディアが許可するとはリリは思っていなかった。


「良いですわ、やれることはやっておくべきですもの」

「っえ!? いいの?」


(絶対に断ると思ってたわー)


「なんです? わたくしだって優先順位ぐらいはありますわ!」


 恥ずかしそうにしつつも、少し声を荒げたクラウディアに、リリは相当な覚悟を感じ取った。


「わかったわ、なら少しでも体調に良さそうなものを作るわね」

「そのまま食べられるよー」

「燻製肉をそのままなんて消化に悪いし、力にもならないでしょ?」


 リリの言葉を聞いたクラウディアは、少し考えると、軽く頷き「……わかりましたわ」と言葉を零すと、糸の切れた人形のように意識を手放した。


「やっぱり相当無理してたんじゃない」

「ラーナは大丈夫?」

「大丈夫! でも血は止めなきゃ」


 血を止めようと右腕にはきつく巻いた布、それでも滴り落ちる程に血が流れていた。

 ラーナはゆっくりと胸当ての袖をまくり袖を嚙む。


「何をする気?」


 リリの言葉を聞き流したラーナは、火にくべ熱した赤みがかったナイフを傷に押し当てた。

 あまりに躊躇なく当てるので、リリは呆けてしまった。

 ジューッという音と、肉が焼ける匂いと共にあたり一帯に溢れたところで、呆けていた頭が正気に戻り叫ぶ。


「ラ、ラーナ! 何をしてるの?」

「大丈夫、慣れてるから」

「慣れてるって言っても……」

「細かい傷はいいとしても、この右手血は止めないと戦えないからね」


 ラーナは次々とナイフを持ち替えては傷口へと当てる。

 表情一つ変えずにナイフを当て続けるラーナに、リリは恐怖を覚えると共に圧倒されてしまいその場で立ち尽くしていた。


「っあ、でも、後でボクにもウォーターヒールしてね」

「わ、わかったわ」


 リリはラーナが当り前のように振舞うので、気持ちを切り替えることにする。

 今の最優先はアンやクリスタと対峙しているデザートプレデターだ、ラーナの行動もそのためのもの、リリも覚悟を決めた。


(とりあえず作らなきゃ、いつまで持つのかわからないし、時間をかけてる暇はない)


 いつも以上に気合を入れ、イヴァに向かって早口で話し出したリリ。



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