第四章の8ー狂ったサイボーグ
第四章 トカゲの尻尾
狂ったサイボーグ
「ははははは、今まで私が築き上げてきたものが失われて行く」ユーベルタンは寂しそうに乾いた笑いをした。
「だが,私にはまだサイボーグがある。実の息子や娘よりも可愛い私のサイボーグ達がある。サイボーグ達は私を裏切ることがない。まだまだ諦めんぞぉ!サイボーグども、これからはお前達の時代だ!手始めにそこの人間どもを殺してしまえ!」と言って、かける達、そしてマイクを指差した。
「危ない!」かける達は身構えた。
先程、三体でも全く歯が立たなかったのに、今度は十六体もいる。逃げることも出来ない。絶体絶命だ。
かける達の脳裏に、先程、人類軍の兵士の銃撃をものともせずに、兵士を全て血祭りに上げた映像が浮かんできて、寒気がした。
「おい、どうすんだよう?かけるぅ!」と弱気の声を出す俊一の声が聞こえた。
美樹やホルヘは敵わないと思いながらも身構えた。
ところがユーベルタンサイボーグ達の様子がおかしい。十六体のサイボーグが全部おかしいというわけではないが、動き出そうとするユーベルタンサイボーグを他のユーベルタンサイボーグがパンチやキックで攻撃している。
どうもサイボーグを攻撃しているのは、最初に出て人類軍の催眠ガスで眠らされた六体の様である。十体はほとんど服に切れ目もなく故障もなさそうだが、六体はボロボロになっている状態なのですぐに見分けがつく。
サイボーグ達の突飛な行動に、一番驚いていたのは、ユーベルタン本人だった。
「おい、どうしたって言うんだ!仲間割れしてるんじゃない!敵はあっちだ!」とかける達を指差した。
ユーベルタンサイボーグ同士が攻撃するのを止めて、ユーベルタンサイボーグ達は命令を下したユーベルタンをじっと見ていた。そして、ユーベルタンの立体ホログラムを攻撃し出した。
「暴走だ!」とユーベルタンは言うや、慌てて立体ホログラムを消した。だがユーベルタンサイボーグ達は、暴走を止めるどころかさらにエキサイトした。
今では、六体に壊されかかった十体も破壊活動を行って、十六体でユーベルタンサイボーグ生産工場をミサイルやレーザーやパンチやキックなどでやたらめったらに壊している。壁も床も天井も壊している。
ユーベルタンサイボーグがやたらめったらに撃ったミサイルで壁の一つに大きな穴が空いた。そこにはコンピューターや機械に囲まれた部屋で、その中心にユーベルタンが座っていた。
「あっユーベルタンだぁ!」と俊一が逸早く気付いた。かける達がユーベルタンの元に近寄ろうとするよりも先に、信じられない程のスピードでユーベルタンの方を目指して走っていた奴がいた。
マイクだ。マイクは右足、右腕、腎臓に重傷を負っていたはずなのに、それでも誰よりも早くにユーベルタンに向かって走っていた。正にマイクを突き動かしているのは、ユーベルタンへの復讐に燃えた執念でしかなかった。
ユーベルタンは、一瞬壁が壊れて驚いた顔をしていたが、すぐに自分を取り戻し操作盤に向かい操作をしていた。
暫くすると激しい揺れが生じた。
教会の中庭が大きく割れて崩れ出した。かける達は立っていられなくなり、近くの柱にしがみ付いた。
地下の研究所兼工場が地上に出現した。その振動で教会の宿舎も崩れ出した。既に火事と爆発で燃え尽きた残骸の様になっていた廃屋がボロボロと崩れ出した。
教会の外にはキーワイル支部など各地から到着したユン教教団信者達、そして信者達を招集した教団教祖のメシストがいたが激しい揺れの中何も出来ず、立っていることさえ出来なかった。
激しい揺れが収まった後、彼らが見守る中、ドームが出現した。そして、ドームの天井が二つに開いて、ヘリポートが現れた。
ユーベルタンは、操作盤のモニターに映し出されたヘリポートを見ていた。ヘリポートの地面が二つに割れ、中からヘリコプターが現れて、ローターがひとりでに回転し出した。
自動プログラムだ。ヘリコプターのローターが回転し出したのを確認すると、ユーベルタンは最後に、赤いボタンを押した。
「ははは、今この研究所兼工場である、この施設の自爆プログラムを作動させた。後七分で全て爆発する。爆発を止めることは、もはや私でも不可能だ。数十個の爆弾が施設各所に仕掛けてある。私の研究や工場に手掛かりを残しておく訳にいかんからな!」
「私は、このマイクロチップに保存された研究データがあれば、またやり直せる。今回のサイボーグ達はどうしたことか、狂ってしまうバグがあった。ユーベルタンサイボーグ二号を作って、またやり直せる」
「トカゲは、トカゲの尻尾を捕まれても、尻尾を切り離して逃げて、また尻尾を生やし、何事も無かった様に生きていける。常に私さえ生き延びれば、尻尾を切り離してやっていけるのだよ。さらばだ!」とユーベルタンはかける達に手を振って、左足をびっこを引きながら、隠し部屋の奥の螺旋階段を上り始めた。
「逃がさねぇ!あんたを逃がす訳がねぇだろう!」とマイクは既に壊された壁を乗り越えて、操作室の奥にある螺旋階段を上ろうとしているユーベルタンの左足を、左手で引っ張った。マイクの右手はユーベルタンサイボーグに踏み潰されて、まるで動かなかったが左手は自由に動かせた。
「こら、放せ!放せ」と言いながら、ユーベルタンは右足でマイクを蹴飛ばした。
ユーベルタンは左足が義足になっている。ユーベルタンが右足で、自分の左足を掴んで放さないマイクを蹴った。
マイクは蹴られてバランスを崩しても、なおユーベルタンの左足を離さなかったため、マイクとユーベルタンは一緒に螺旋階段を下まで落ちた。そしてその際にユーベルタンの左足の義足が取れてしまった。
「うぉぉ!」とユーベルタンは苦痛に叫んだ。
「絶対にあんただけは逃がさねぇ!逃がしてなるものか!」と起き上がってくるマイクに、ユーベルタンは、銃口を向けていた。
「トカゲの尻尾は、切り離されたら、素直に干乾びてゴミとなるものだよ!頭や胴体よりも下等なんだからね。頭や胴体に危害をもたらすなんて、もってのほかだ!」ユーベルタンはそう言うと、マイクに向けて、まず足と腹に二発の弾丸を撃ち込み、痛み苦しみもがいているマイクを見ながら、頭にもう一発撃ちこんだ。マイクの体はゆっくりと地面に沈んだ。マイクの眼は真っ赤に充血して見開かれたままだった。
ユーベルタンは、マイクの掴んでいる、左足の義足をもぎ取ろうとしたが、マイクは死んでも、ユーベルタンの義足を、離そうとはしなかった。そうしている内に、かける達が操作室に入って来た。




