幼い頃から仲良しだった婚約者から婚約破棄を告げられまして……。
私ローズと彼ディブブは婚約者同士。
けれどもそれだけの関係ではない。
幼い頃から仲良しだったし長い時間を共に過ごしてきた。
「なぁローズ、明日って傘要りそうだよな」
「ええそうね」
「だよなー。ありがと」
「いえいえ」
だから私たちの関係は永遠だと思っていた、のに……。
「それでさ、伝えたいことがあんだけど」
「伝えたいこと?」
「ああ」
「どうしたの? そんな改まって。どんなことでも普通に言ってちょうだい?」
彼は口を開く。
「お前との婚約さ、破棄しようと思うんだ」
それは二人の関係を根本から叩き壊す言葉。
「え」
「お前とはもう一緒には生きない」
「な、何を言って……」
「俺は本当の意味で好きなやつと幸せになりたいんだ。お前だってそうだろ? お前だって、叶うなら、好きなやつと結ばれたいだろ」
「意味が分からないわ、私はディブブのことが好きだもの」
本心を言ってみる。
けれども返ってきたのは冷たい言葉で。
「お前がそうでも俺は違う」
彼ははっきりとそう言いきった。
「最も正しい道というのはお前と俺それぞれが幸せになれる道だよな?」
「それは……そう、かも、しれないけれど……」
「なら俺らが夫婦になる道ってのは最も正しい道じゃないってことだ」
こうして彼は私を切り捨てた。
「今までありがとな、さよなら」
ずっと仲良しでいられると思っていた。
ずっと隣り合っていられると思っていた。
……でも現実は厳しくて。
彼は私を大切には思っていなかった――どうやらそれが現実だったようだ。
◆
婚約が破棄となった日の数日後、ディブブは家の近くの沼に薬草を摘みに行ったところ何者かに後ろから押されて沼に落とされ亡くなった。
一方私はというと。
路上で倒れている男性を助けたところその男性に見初められた。
その男性、実は高貴な家の者で、好意を抱いてくれている彼の力によって私の未来は徐々に切り開かれつつある。
人生何があるかなんて分からないものだ。
だが、奇跡もまた現実であり、幸運も一種の定め。
なのでもう迷わない。
私はただひたすらに幸福な未来へと進んでゆく。
◆終わり◆




