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幼馴染に浮気され、冤罪をかけられた僕は学校一の美少女に救われる。  作者: 小野千春


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2/2

第2話

 放課後、生徒会の仕事を終えた私は噂になっている彼を見つけた。彼の噂はもちろん耳に入っていた。


 山田勇気。同級生の幼馴染と付き合っており、先週の日曜日に彼がその彼女を性的に襲おうとしたところを、立本先輩が助けにはいったらしい。どこでどう襲おうとして、どうやって助けてもらったなどの具体的な情報が入って来ていないが、まぁそういう噂だ、


 特に興味もなかったが、噂の彼が1人で校舎の隅にうずくまって泣いている。まるで自分が悲劇の主人公になったような態度だ。やっていない、冤罪だ、と主張しているような態度。


 だが現実には、誰も見ていないところですらそういう態度ができる人がいることは知っている。自分が罪を犯したのに、まるで自分がなにかされたかのような態度をとれる、被害者意識や他責思考の塊のような人間がいることは、16年間生きてきて分かっている。


 だから興味が少しでてきた。


 彼はどっちなんだろう?やったの?やってないの?


 自分の中で予想を立てる。恐らくやっている。だってやってないならここで泣き寝入りするはずないから。


 いや、もちろん知っている。世の中にはやられっぱなしの弱い人間もいるということは。そして彼はそういう風にも見える。


 やっているが9割、やってないが1割。それくらいかな。


 周囲を見渡す。人気はないが、大声で叫べば誰かは駆けつけてくるだろう。進学校だし教室に残って勉強している人は少なからずいる。話しかけてみるか。


「ねぇ、どうしたの?」


 恐らく軽く人間不信になっているだろう。優しい声を心がける。


 彼は急に声をかけられたのに驚いたのかぼーっと私を見ている。


「あ、あの…」


「大丈夫?落ち着いて。ゆっくりでいいからね」


 噂のことを知っている体でいくか、知らない体でいくか。知らない演技をするのも面倒だけど、そっちのほうが色々と聞き出しやすそうだ。


 彼はまた泣き出したのでゆっくりと待つ。


 少しだけ落ち着いてきたので再度話しかける。


「山田勇気くん、だよね。なにがあったの?なんで泣いているの?」


 彼はぽつりぽつりと何があったのか話し始めた。





 一通り彼の話を聞いてみた。まぁ筋は通っている。そして、もし彼の話が事実ならば、冤罪であることの証明は簡単だろう。正直言って児戯に等しいレベルだ。


 一応、筋は通っているけど、こんなしょうもない冤罪を彼が晴らそうと動かないのも考えづらい。意味不明だ。それに、幼馴染の女や立本先輩側も、高校生にもなってそんなガバガバな冤罪を他人にかけるリスクを承知していないとも思えない。


 やっているが8割、やってないが2割。に変更だ。


 少しおもしろくなってきた。


 どっちだろう。


「なるほどね、そんなことがあったんだ。つらかったね。」


 人を慰めることはまぁ苦手というか面倒だが、彼の精神を落ち着かせないと話が進まない。彼はこの話を他の人にしていないのだろうか?親にこの話をすれば簡単に解決してもらえると思うが。「親に言えば?」というのは簡単だが、ちょっとおもしろくないな。


「とりあえず今日はもう帰りましょう」


 彼の手を引いて立ち上がらせる。その後は適当に雑談し、連絡先の交換をして駅まで一緒に帰った。


 翌日、昼休みに暇つぶしに彼の教室に行ってみる。絶賛噂になっている彼がどんな扱いを受けているのか見に行ってみたが、ただ居心地わるそうに1人でご飯を食べているだけだ。ドラマみたいに机が落書きまみれで花瓶でも置いてあるのかなとワクワクしながら見に行ったのに拍子抜けだ。まぁ進学校でそんなバカなイジメする人はいないか。


 彼に声をかける。噂の彼に私が声をかけたことで周りがざわついているがどうでもいい。どうせ私と同じ大学に行く人なんて2人もいないだろうし。


「ねぇ、昨日話してた幼馴染の彼女ってどの子なの?」


 彼が目線で示した方を見てみる。


 こちらを見ている少女と目があった。客観的にみて可愛いと言えるだろう。今朝から軽く情報収集をしてみたところ、彼女がこの噂を広め、立本先輩が同意したことによりこの噂の信憑性が保たれたらしい。


 彼と彼女を見比べる。なるほど。外見だけで比べるのは馬鹿馬鹿しいが、確かに高校生目線で言えば釣り合っていない。彼女が襲われたと主張すると信じる人はでてくるだろう。


「今日の放課後あいてる?」


 適当に雑談を挟みながら聞いてみる。空いているとのことなので放課後に校門の前で待ち合わせをした。


 放課後になり、彼と合流する。


「勇気くんが、栞さんと立本先輩が出てきたところを見たっていうラブホを見てみたいんだけど」


 名前呼びすることにした。男と単純に距離を詰めるなら、これが一番楽な方法だ。


「えっと、なんで…?」


 なんでも何もないだろう。本当に分からないの?やっている、の確率が私の心の中で急上昇している。


「なんでって、今流れてる噂は冤罪なんでしょう?それを晴らしたいとは思わないの?」


「あ、えっと、うん、ありがとう。それなら案内するね」


 あぁ、もしかして私にラブホに誘われたと思ったのかな?有り得なさすぎて考えてなかった。


 適当に雑談しながらそのまま駅に向かい、電車を乗り継いで現場のラブホテルに着いた。


「ここだよ」


 なるほど。ここか。通りを見てみる。


「ここで水野さん達を見かける前は何してたの?」


「新しくできたっていうネットカフェに行ってたよ」


 なんて言うネットカフェか名前を聞きだし、会員カードを見せてくれないか聞いてみると、財布から会員カードを取り出した。レシートは捨てたらしい。


 スマホでネカフェの名前と店舗名で検索し、オープン日を確かめる。なるほど、嘘はいっていないようだ。改めて通りを見渡す。


 大通りから一本はいった道で人通りは普通にある。ラブホテルや風俗店が並んでいる通りで、監視カメラも設置されている。ラブホにも監視カメラはあるだろう。風俗店の客引きのおじさんが、タバコをふかしながら珍しいんだろう制服姿の私達を見ている。


 ネカフェの件と、ここに案内できるということはやっていないのか?


 やっているが4割、やってないが6割、に変更しよう


 すぐに答えが知りたくなったので、勇気くんの手を引いて客引きのおじさんに話しかけた。


「あの、すみません。4日前の日曜日なんですけど、この人があそこのラブホテルの前で殴られてるのを見ませんでしたか?」


「あ?えっとお前が殴られたの?それ日曜の何時くらい?」


 おじさんが勇気くんに確かめる。


「えっと…19時前くらいです」


「ちょっと待ってな」


 というとおじさんは風俗店に入っていった。シフトでも確認しにいってくれたんだろう。しばらく待っているとおじさんが茶髪のチャラそうな20代前半くらいの男を連れてでてきた。


「あ、お前なの?この前なんか殴られて泣きながら走り去っていってた奴!」


 勇気くんとチャラ男が話している。あの日にあった出来事を説明している。


 あぁ、なるほど。本当にやってなかったのか。

 やっているが0割、やってないが10割で終わりか。

 まぁそれならそれで、別にいいか。


 彼らの会話が落ち着くまでしばらく待って、チャラ男に彼が彼を殴ったカップルに学校で冤罪をかけられてイジメられていることを説明する。もしかしたら警察が証言を求めにくるかもしれないので、予め名刺をくれといったが、名刺がないそうなので連絡先を勇気くんと交換してもらった。


 まぁ後は彼の親だろう。


 彼がどんな家庭で育っているかも少し興味がある。ここまで優柔不断で行動力がない人間はそういないだろう。今日は両親共に家にいるらしい。彼だけにまかせて今回の噂の件がなぁなぁで終わるのもつまらない。私も両親との話し合いに同席させてもらうことにしよう。


 彼の家庭はごく普通の中流階級といった趣きだった。幼馴染の浮気の件、噂の件、私と出会ってからあったこと、私からの潔白の証言を伝えたところ、彼らは息子に同情し、幼馴染と先輩に怒り、私に感謝した。


 どう解決するつもりなのかひとまず静観していると彼らは警察に被害届を出すという。ひどく常識的な対応に何故か私もホッとしてしまう。ここで幼馴染を呼ぶから話し合いをしましょう、みたいなことを言い出したら笑ってしまうところだった。彼と幼馴染の泥沼の話し合いもそれはそれで見てみたくもあるが。


 彼の両親がネットで調べながらこれからの対応について話し合っていると彼が口を開いた。


「えっと、警察って…。栞はこれからどうなるの…?」


 ゲラゲラと笑いそうになる。未だに彼は幼馴染の心配をしているのか。高校は退学になって保護観察処分にでもなるんじゃないの、と言いたいが黙っておいた。彼の両親も黙り込んだ。


 彼の優しさは美徳ではない。甘いだけだ。


 もういいや。飽きた。今回の件は解決を見た。これ以上ここにいてもしょうがないのでスマホで親に迎えに来てくれるよう頼んだ。2日だけだがまぁまぁ楽しめた。


 それからしばらく彼らが話し合っているのを尻目に私はスマホで漫画を読んでいると両親が迎えに来てくれた。


 彼と彼の両親が私と、私の両親に感謝を告げている。まぁいい暇つぶしにはなったかな。


 そこから2週間ほど経った後、彼の幼馴染と立本先輩は退学処分が下った。噂は完全に払拭され、彼の高校生活は正常に戻った。状況は逐一彼からメッセージで送られてきていた。


 彼らが退学してからしばらくして、彼から、明日の放課後に校舎の裏に来て欲しいとメッセージが届いた。


 朱に交われば赤くなる。人は周りの人間に影響されるものだ。

 彼は優しいのだろう。だが若さというのを考慮してもなお愚かで、視野が狭く、行動力にかけている。

 彼が側にいても、私に何かプラスになることがあるとは思えない。


 冤罪は晴らされた。彼とはこれっきりで縁を切らせてもらおう。

 彼が今から私に言いたい事は容易に想像がつく。


 体の良い断り文句を考えながら私は校舎の裏へ向かった。

 これにて完結です。

 テンプレ冤罪モノを書いてみたかったのと、物語を完結させる練習として書いてみたので、気軽に読んでもらえて、楽しんでもらえたなら幸いです。


 評価や感想いただけると嬉しいです。

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