07 別にお前のためじゃない
何で…こんなことになったのか…。
わたしは…取り返しのつかないことをしてしまったのか…。
目の前のモノを見る度に現実を思い知らされる。
『これは…』
いつも穏やかなギルの絶句したような声が堪らなく辛い。
ああ、だから嫌だったんだ!
『あの、誰にでも失敗はありますよ』
いつも失敗ばかりのときはどうしたらいいんだ。
励ます声にもつい、いじけてしまう。
「別に…。わかっていたことだ」
そう。いつものことだ。慣れている。だから別に気にしてない。断じて気にしてなどいない。
「アキラさーん!」
振り返ると息を切らし髪を振り乱したルルティアが、血相を変えて家に飛び込んできた。
「聞いてください!やっと…っ!…て、何です?そのフライパンの中の物体」
確かに右手に握りしめたフライパンの中には、黒い何かがあった。
…だが物体…。
物体…か。
『でもあの、物体っていうより炭に見えますから!』
ギル、お前それでフォローしてるつもりか?
今お前の実体が有れば確実に首を絞めてるぞ。
「…何でもない」
「あっ!もしかしてお昼作ってくれようとしたんですか?」
ルルティア!何でこういう時だけ頭が回るんだ!?
いつものように鈍いままでいいものを!
「いや、これは…違う」
「え、そうなんですか?」
「ああ、これは…その、ちょっとした実験だ」
「実験?何のですか?」
もう何も聞かないでくれ!
そうだ、わたしは料理に失敗したんだ!
この炭(仮)は元は肉だったんだ!
わたしはただ肉を焼いただけなんだ…なのになぜ失敗する?
『誰でも向き不向きがありますから…』
ギル、やっぱりお前いつか首絞める。
一息ついてフライパンを置き、不思議そうにしているルルティアに振り返った。
「…それより、何があった?」
「あの、実験って」
「何、が、あった?」
上目遣いにこちらをちらちら窺うルルティアをあえて無視する。
「…えっと、意識がなかった三人が目覚めたんです」
「そうか」
『良かった…』
ギルの安堵した声にこっちの肩の力も抜けそうになる。
『気にしていたのか』
『はい。僕のせいですから』
事故みたいなものとはいえ一応加害者だったから、気にするは当然か。
『そうか、良かったな』
『はい、本当に』
それから、ルルティアの様子から何となくわかるが、とりあえず聞いておく。
「身体に後遺症とかはなかったか」
「はい!皆さん元気ですよ」
「そうか」
『ありがとうございます、アキラさん』
『何のことだ?』
『気を遣ってくれたんでしょう?』
別に、直接聞けないギルが知りたいだろうことをわたしが尋ねるのは、身体を借りているわたしの当然の義務だ。
『感謝されるようなことじゃない』
『でも、その気持ちがうれしいんです』
……。
ギルと話していると調子が狂うな。
気を取り直そうとルルティアを見下ろした。
「そろそろ出発するか」
「え?どこにです?」
本気でわからないという顔のルルティアに少し呆れる。
こいつ、すっかり忘れているな。
「王都に行くんじゃなかったか」
「ああ!そうでした!」
ルルティアは思い出したと手を叩いて頷いた。
わたしがしっかりしないと、いつ帰れるかわかったものじゃないぞ、これは…。
「そういえば明日、税をノルデの町に運ぶ馬車が出るんです。それに乗せてもらいましょう!」
ノルデ…?
『この村と王都の間にある大きな町のことです。あの町なら王都行きの馬車も出ているはずです』
ギルの説明は的確でわかりやすいから、かなり助かっている。
『でもノルデはこの国でも有名な町ですよ?もしかしてアキラさんはこの国の方ではないんですか?』
『それは…。明日、話す』
『…はい、お待ちしています』
ギルはたまに察しが良すぎて困る。
「アキラさーん、聞いてます?」
「ああ。明日出発なら早い準備が必要だな」
「そうですね。私、買い物に行ってきますね!」
「いや、買い物はわたしが行く。ルルティアは村の人に出発の旨を伝えて来てくれ」
「別にそれは明日でも…」
「すぐには帰れないんだから挨拶くらいはしておいた方がいい」
「アキラさん…」
なぜか青の目を輝かせて見つめられる。
何か勘違いしていないか?
わたしはただ後から厄介なことになるのが嫌なだけだ。
特にシドとか、噂好きな隣のおばさんとか。
…駆け落ちだなんて噂が流れたら、シドに刺されそうだ。
久しぶりになってしまいました(汗)
次はもっと早く書きますね!
アキラとギルってたまに性別逆じゃないのって思ってしまう。




