39 鬼神のバイト1
私は伊藤の店を出ると、ひのきの棒を購入する資金調達をする算段を始めることにした。
自宅の鬼神界に帰還すれば、金は腐るほどある。
だが鬼神界の通貨は異なるし、何かアイテムをこちらに持ってきて換金したところで、果たして伊藤が受け取ってくれるだろうか。
奴は心のこもっていない金は受け取らないとかいう、かなり面倒な設定の男なのだと、友人の魔王から聞いたことがある。
でも、どうやって5ゴールドに心を込めればいいというのだろうか。
やはり働いて稼ぐとか、そういった苦労をPRするしかないのか。
いざ働くとなると、生徒にバレぬように、隣町に行くしかないだろう。
まぁ今は深夜。
バーでバイトをすれば、生徒とかち合うことはないだろう。
いや、待て。
他の先生や学園長、もしくは生徒の親と鉢合わせしたら大変だ。ダブルワークは禁じられている。
3年C組を改革する前に解雇されてしまう。
それでは本末転倒ではないか。
……。
何か良い手立てはないものだろうか。
……それ以前に、伊藤からひのきの棒如き攻撃力1のゴミアイテムを購入して、果たして私の問題は解決するのだろうか。
それでも私は腕を組み、悩みながらうろうろと歩いた。
散々選んだ挙句、私が選んだのはなつみが働いているフェアリーベルというインチキ店の呼び込みのバイトだ。
なつみにバレぬようそっと裏口に回り、戸をノックしてオーナーを呼び出した。
嫌そうな顔をして出てきたのは、ストライプスーツを雑に来た30半ばの若造だ。
「は? あんた誰?」
「私を雇え! 一生懸命働いやる。もし雇わなければ即座に地上から抹殺するぞ」
「は?」
私のレベルは99999999999999999999999999999999999999999ある。
周りに誰もいない事を確認して、手を上空に掲げ、奥義『ダークグランディール』を発動させた。
手のひらから真っ赤な炸裂弾が遥か上空に舞い上がりエネルギー砲が派手に四散した。
おそらく第三の月が破壊されたのだろう。
見慣れた夜景がちょっぴり変わった。
「いいか。殺されたくければ雇え! 一生懸命呼び込みしてやるから、心のこもった10ゴールドを支払え! いいな! 分かったな」
今度は手のひらをオーナーの男に向け、紫のエネルギーの弾を集めた。
オーナーは首をカクカク縦に振ってくれた。
私はエネルギー弾をスッと消滅させると、「雇用してくれて感謝する」と言い、胸に手を添えて一礼した。
よし、これで職にありつけたぞ。
あとは頑張るだけだ。




