29連勝
【桐島歩四段歴代1位タイ記録29連勝達成!!!】
新聞各社の一面があゆむを称賛している。
去年、天王寺めぐみが達成した歴代1位の記録に並んだのだ。
【運命のイタズラか、30連勝の単独記録をかけて対局するのは、天王寺めぐみ七段!】
30連勝をかけて対局するのは、竜玉戦決勝トーナメント1回戦。
6組で優勝した桐島歩は、5組で優勝した天王寺めぐみと対局する事が決まった。
よく晴れた六月の後半、対局の日がやって来た。
あゆむのお陰で将棋ブームが起きている。
将棋会館の前には沢山の報道陣が待ち構えている。
「桐島四段、今日の意気込みをお願いします」
「連勝記録が掛かっているのは分かってますが、いつも通り指せればと思います」
無難な返事をして対局に向かう、今は集中したい。
あゆむが対局室に向かうと、既に天王寺めぐみが将棋盤の前に静かに座っている。
その姿だけで強者と判るぐらいだ。
振り駒が記録係によって行われる。
今回も桐島あゆむが先手に決まる。
前回の対局では、非公開の対局だったが、あゆむが先手で天王寺めぐみに勝っている。
「時間になりましたので、桐島歩四段の先手でお願いします」
「宜しくお願いします」
「お願いします」
定刻通りに対局が始まる。
初手▲7六歩、△3四歩、▲2六歩、△4二飛、▲6八玉、△8八角成
「もしかして……角交換四間飛車!?」
振り飛車相手には角交換と教えられた常識を、振り飛車側から代えて来たる戦法だ。
『地球の裏側の新たな鉱脈を見つけた』と言われた程革命的で、こちらの世界ではまだ見かけた事は無かった。
「さすが『革命児』天王寺めぐみさん、自分で見つけて来たか」
そう目の前に座っている少女いや、女性は紛れもない天才なのだ。
顔を上げてめぐみの方を見ると「どうだ」と言わんばかりにあゆむを見ていた。
「悪いけどめぐみさん、相手が悪かったね、角交換振り飛車相手も充分勉強しているんだよ」
対局が進む。
あゆむの方がこの戦法に精通していて有利と思われたが、かなり均衡した序盤と中盤になっている。




