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あべこべ世界で~プロ棋士として生きる~  作者: 田中悠平
第3章 あべこべ世界で~プロ棋士編~
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53/61

決着

『遠見の角』名前の通り、遠くから角が睨んでいる。

1八角、中盤にあゆむが指した手だ。


あゆむが王様を銀冠と呼ばれる囲いに対して、天王寺めぐみはオーソドックスに美濃囲いで戦っている。


「くっ!1八の角が……」


守備の要の7二の銀を睨んでいる。

いつでも角を切って行ける。


形勢はいつの間にかあゆむに傾いている。

いくら強い棋士といえど、プロ同士一度局面が傾くとひっくり返すのは難しいのだが……


「まだまだ気は抜けない、形勢が悪くなれば暴れてきて勝負手を放って来るだろう」


あゆむが思っていた通り、天王寺めぐみは攻撃の手を強める。


「絶対に攻めを繋げないと、簡単には負けないよ、あゆむ君」


天王寺めぐみは大駒の飛車を切り、位を生かして攻めを繋げようとする。

あゆむも丁寧に対応する。


そして、96手目に遂に攻めが途切れる。


「ありません」


負けを察した天王寺めぐみが敗北を口にする。


「ありがとうございました」


この瞬間、長い将棋界の歴史の中で30連勝という新記録が打ち立てられた。


「あゆむ君、おめでとう」

「ありがとうございます」


対局相手の天王寺めぐみが祝福の言葉をかける。


「あ~、悔しいな、この日の為に新しい戦法を考えてたんだけどな~、」

「ええ、びっくりしました」

「びっくりした割には、上手く対応されちゃったね、もしかしてこの戦法知ってた?」

「ええ、この戦法だと振り飛車側からも仕掛けられるので、そのうち流行ると警戒してました」

「知ってたんだ、あ~あ、これからは革命児の二つ名はあゆむ君の物だね」

「いや……王子と貴公子とかいっぱい呼ばれてお腹一杯です……」

「ははは、そうだね。この後のインタビューとか凄そうだね」

「頭が痛い……」

「それもプロの仕事だよ。頑張ってね」

「ガンバリマス」


30連勝を達成したこの日のインタビューは1時間以上続いたが何とかやり遂げた。




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