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偏食家  作者: 池田圭


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肉まん

 前略、この手紙を君が読んでいる頃、既に俺は、肉まんを喰いたくて、仕方ないだろう。

 そんな事を考えながら、仕事帰りの俺は、バスのつり革に掴まっていた。

 バスの中は、大学の講義終わりの学生で溢れ、人がギュウギュウ詰めになっており、俺はこのバスから、早く出たいという気持ちがあった。

 しかし俺は、自身の目的地にバスが着くまで、その気持ちを押し殺し、つり革に掴まっていた。

 いくら健康の為と言って、1時間ぐらい歩くことの出来る俺であっても、仕事終わりにバスに乗らず、4時間以上歩き続けるのは、流石に無理である。

 その為、人が多い乗り物の中にいる時、大体、車酔いをしてしまう俺は、バスで車酔いをしながらも、自身の目的地に着くまで、気持ちが悪いのを我慢して、バスに乗り続けていた。

 そうこうしているうちに、バスは自身の目的地に着き、俺はバスの料金を支払い、バスから降りた。

 バスから降りた俺は、すぐに大きく息を吸った。この時の空気は俺的に、自然が生い茂る山々の空気を吸っているような気分であった。それぐらい満員バスの中は、俺にはキツイものだったのである。

 外の空気を吸い、少し体調をリフレッシュさせた俺は、ここから歩いて20分ぐらいかかるところにある、ソフトクリームのロゴが描かれているコンビニへと向かった。

 ここのコンビニは、全国展開されているチェーン店で、ソフトクリームに力を入れている所であり、全店舗、レジの中にソフトクリームメーカーが置かれている。

 その為、レジで店員さんにソフトクリームを頼むと、店員さんがその場で、ソフトクリームを作ってくれる。

 このソフトクリームが非常に絶品で、何の変哲もないバニラソフトでさえも、ミルクが濃厚で美味しい。この美味しさを、このクオリティで出してくれるコンビニは、チェーン店では、ここしかないだろうと俺は考えていた。

 しかし、俺はここで今日、ソフトクリームを頼む気にはなれない。

 何故なら今日の気温は、コンビニの外で今も雪がパラパラと振るほど寒いものであり、こんな寒い日にソフトクリームを食べる気は、俺には全く無かったからだ。

 こんな日に食べたくなるのは、やはり肉まんである。白い生地の中にホロホロの肉が入っているというのは、寒い俺の体を温め、俺自身の腹まで満たしてくれる。

 なので俺は、ソフトクリームに力を入れているコンビニで、肉まんを買って帰ることにした。

 肉まんを買ってコンビニを出た俺は、歩きながら肉まんが入っている袋を取り出し、肉まんをひとくち喰った。

 やはり、美味い。

 寒い中喰う、ホッカホッカの肉まんは格別に美味い。

 更に良い事に、ここの肉まんにはタケノコとキノコが一切入っていない。

 俺はタケノコとキノコが嫌いである為、他の店の肉まんを買おうと思わないのだが、ここのコンビニの肉まんは、タケノコとキノコが一切入っていない。

 その為、タケノコ嫌いの人達は、ここの肉まんを食う時、あのコリコリの食感に怯えることをしなくても良く、キノコ嫌いの人達は、あのフニャッといった食感に怯えることをしなくても良いのである。

 しかし、この情報は、世間であまり知られることは無い。

 ここ最近のコンビニ業界は、緑色の看板のコンビニ、数字の7が印象的なコンビニ、牛乳瓶が印象的なコンビニの強豪がひしめく環境となっている。

 そんな魔境と化しているコンビニ界隈を、ここのコンビニは、ソフトクリームが美味しいという個性で生き延び続けている。

 そんなコンビニが、一部のコアな人達の為に肉まんの情報を開示し、競合他社と肉まんで張り合ったとしても勝てる見込みはあまり無いだろう。

 結局、あそこのコンビニはソフトクリームが人気であり続けるのである。

 けれど、こう言った知られざる情報を探すといった名目で様々なものを試して喰うというのは、楽しいことである。

 食事というのは、人間が必ずしなくてはならないものだ。だからこそ、人は喰う時、少しでも楽しめる喰い方をするべきなのだ。

 だから、食事をあまり楽しんでない人は、普段行く所で、玉には違うものを頼んでみると良い。そうすることで、世界の見え方は少しは変わるはずだから。

 そんな事を思いながら俺は、肉まんを片手に、雪が降る街の景色を見ながら、家に帰るのであった。

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