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偏食家  作者: 池田圭


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12/16

ハンバーグ

 肉が喰いたい。

 ココ最近の俺は、何故か肉が喰いたくて仕方ない体になっている気がする。

 それは多分、ココ最近の仕事で色々ストレスが溜まっているせいだろう。

 そんな事を考えていた仕事帰りの俺は、外国人が驚きを隠せていない店名でお馴染みのハンバーグ店に入っていた。

 ここのハンバーグ店は全国展開されているチェーン店の1つであり、晩飯時に来るといつも長蛇の列が出来ている程、人気な店である。

 その為、俺が今日この店に来た時は、1時間ほど席につけずに待たされた。

 しかし、この店はその時間を待つのにふさわしいほどの名店だと俺は考えている。

「お待たせいたしました。」

 俺が席で、自分のハンバーグが来るのを待っていると、店員さんが俺に声をかけてきた。

 店員さんはその後、要領良く俺の席にハンバーグを置き、俺の席を後にした。

 今回、俺が頼んだハンバーグは、圧倒的シンプルなハンバーグ。レギュラーハンバーグである。

 デミグラスソースも無く、大根おろしも乗ってない、ただのハンバーグである。

 しかし、俺的にはこのハンバーグが一番良い。

 何せ、肉の旨みをダイレクトに堪能できるのだから。

 ハンバーグを喰う前に、俺はこのハンバーグについている、サラダから喰うことにした。

 ここの店のハンバーグは、ほとんどの場合、サラダとライスがついている。

 そして、俺はこのサラダが好きだ。

 俺はこのサラダをひとくち喰った。

 やはり、このシャキシャキとした食感とドレッシングの味が良い。

 特に、このドレッシングはこの店独自のドレッシングが使われており、この店でしかこの味は味わえない。

 しかし、そんな事を言ってはいるが、実際は店のレジ横辺りに、この店独自のドレッシングが売っていた気がするので、自宅でこの味を味わう事は出来なくは無い。

 まぁでも俺は、この店でしか喰えないという特別感が良い為、自宅でこのサラダを再現しようと思う事は無いわけだが。

 そんな事を考えながら喰っていると、いつの間にかサラダは無くなっていた。

 もっといっぱい喰いたかった。

 そんな事を無くなったサラダを見ながら考えていた俺だが、その思考の裏でこのぐらいの量で丁度良いとも思っていた。

 何故なら、このサラダは前菜である。

 前菜は料理の最初に喰う事で、自身の胃や味覚を主菜を喰う前に、整う役割があると俺は考えている。

 言うなれば、前菜というのは主菜を引き立てる影の役者のようなものだ。

 このサラダの量が少ないのはその為だ。

 このサラダの量が多ければ、サラダの魅力は伝わるかもしれないが、後に喰うハンバーグの魅力は伝わらない。

 このサラダは、自身が影の役者に徹する事で、後に喰われる主役のハンバーグをいっそう輝かそうと全身全霊を尽くしている。

 それは正に、名脇役の如く素晴らしいものだ。

 それだけ、このサラダには魅力といったものが詰まっている。

 そんな風にサラダを絶賛しまくった俺は、箸を手に取り、ハンバーグをひとくち喰った。

 美味い。

 やはり、ここのハンバーグと言えばこの味だ。

 妙に懐かしさを感じるこの味。俺が求めていたものはコレである。

 通常、ハンバーグという喰い物は、ひき肉のジューシーさを味わうものである。

 しかし、ここのハンバーグは他の店のハンバーグと違い、そこまでジューシーでは無いと俺は思っている。

 だが、ここのハンバーグはそのジューシーさがあまり無いことによって、良い味が出ていると俺は実感している。

 それは何故か?

 その理由は、このハンバーグが懐かしさに浸れるものであるからだ。

 ここの店のハンバーグは、ジューシさというものがあまり無い代わり、そこまでクセがない家庭的な味わいをしている。

 言うなれば、お袋の味と言ったものに近い。

 この懐かしさを感じるハンバーグは、俺が子供の頃、家族でよくこの店に行ったことや、幼少期からの幼なじみと何処かで飯を喰いに行くといった時に、よくここで飯を喰った事を思い出させてくれる。

 確かにハンバーグと言うものは、ジューシーさが美味しさを際立たせることがある。

 しかし、このハンバーグに限らず、料理というものは時に懐かしさといったもので美味しさを際立たせることがあるのだ。

 だからこそ、ここのハンバーグは老若男女問わず人気があり、常に長蛇の列を作る名店としてここにあり続けるのである。

 そんな事を考えながら、ハンバーグとライスを喰っていた俺は、いつの間にかそれらを喰い終わっていた。

 飯を喰い終えた俺は、自身の席を後にし、レジで会計を済まし、店を後にした。

 店を出る途中俺は、店の中で自身の席を待っている人達を見て、ひとつの事を思い出していた。

 そういえば、あそこのハンバーグ店も列を作っていたなと。

 あそこのハンバーグ店と言うのは、俺が生涯行った中で、いちばん美味しかったハンバーグ店である。

 そこの店は、ここの店とは違い、ジューシーなハンバーグを提供する店で、ここの店以上の値段がするところだった。

 しかし、その店のハンバーグは恐ろしい程に美味かった。

 その美味しさは、ハンバーグのジューシーさに胃が悲鳴をあげていたにも関わらず、このハンバーグをもっと味わいたいと思える程の美味さである。

 以前行った二郎系ラーメンの店で、俺は自身のミスでとんでもない量のラーメンを注文し、そのラーメンを喰った時も満腹で気持ちが悪くなるという思いをしたが、あの店のハンバーグは違う。

 あの店のハンバーグは、具材の良さ、料理のジューシーさ等の全ての要素が完璧で、腹がいっぱいで気持ちが悪くなると言う感覚を無くさせる。

 この店でハンバーグを喰ったことが無いものは、そんな事ないだろと思うかもしれないが、そんな訳は無いのである。

 皆が知らないだけで、それ程、美味いハンバーグが、この世には実在するのだ。

 そんな事を考えながら、店の中で自身の席を待っている人達を見ていた俺は、いつかまたあそこのハンバーグ店に行きたいなと思いながら、今日もまた家に帰るのであった。

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