# プロローグ「ラストクリア」
画面の中の光が、やけに眩しかった。
〈CONGRATULATIONS〉
〈『アステリズム・オンライン』 エンディングに到達しました〉
その一文が表示された瞬間、俺は椅子の背もたれに体を預けたまま、しばらく動けなかった。
どの位プレイしただろう――想像もできない。日常の全てを費やした。
運営が「クリア不可能」と豪語していたエンドコンテンツに、独りで挑み続けた時間。
(……終わった、のか)
実感が湧かないまま、俺はモニターを見つめ続けていた。
と、そのとき。
〈本タイトルは、本エンディングをもってサービスを終了いたします〉
〈これまでのご利用、誠にありがとうございました〉
――は?
予告も何もなかった。突然の告知に、俺は思わず身を乗り出した。
〈長らくのご愛顧に感謝し、最後に到達したプレイヤーへ、特別な"贈り物"を用意しております〉
その一文の直後、画面が一際強く、白く発光した。
視界が真っ白に染まる。眩しさに思わず目を閉じ、次に開けたときには――
俺は、自分の部屋のベッドの上にいた。
いや、正確には、いつも通りの自室にいるはずなのに、何かが決定的に違っていた。
視界の端に、見慣れたはずのウィンドウが浮かんでいる。
〈水無瀬蒼〉
〈Lv.1〉
〈ジョブ:剣豪〉
〈装備:漆黒の双剣 闇夜のコート ほか〉
――ゲームの中でしか見たことのないはずのステータスウィンドウが、現実の、この部屋の中に浮かんでいた。
近くには慣れ親しんだ二振りの双剣。
ゲームの中で何百時間もかけて鍛え上げた、あの装備そのものだった。
(レベルは、1に戻ってる……でも)
装備は、そのまま残っている。そして――記憶も。ゲームで積み重ねてきた戦い方、モンスターの知識、あらゆる経験が、何一つ欠けることなく、俺の中にあった。
窓の外から、微かな悲鳴のような声が聞こえてきたのは、そのすぐ後のことだった。
カーテンの隙間から外を覗くと、街の一角に、見たこともない黒い「裂け目」が口を開けていた。
――ああ、そういうことか。
俺は小さく息を吐いた。
あのゲームが、俺の知っているあの世界が、ここから現実に染み出してくる。
運営が最後に残した"贈り物"の意味を、俺はまだ、完全には理解できていなかった。
ただ一つだけ、確かなことがあった。
この日から、俺の日常は、二度と元には戻らない。
初めまして
今回が初投稿となります。よろしければ、高評価・ブックマークよろしくお願いします!
感想もお待ちしております。それでは、次話でお会いしましょう。




