エピローグ
さて。
後日譚を話そう。
この後メイドさんになっていたれーちゃんに連れて行かれて、悪役令嬢になっていたキヨちゃんに会いに行った。
そこで飛びつかれて締め付けられつつオイオイ泣きつかれたわけだけと……一通り再会の儀を終えたキヨちゃんは、状況を聞くなり、
「聖女判定を受け直して、私の妹にお成りなさいなっ!」
と、のたまったのだった。
「え、嫌」
と、反射的に速攻で返事をしたものの、れーちゃんとキヨちゃんにコンコンと説得されてその案を受け入れることにした。
だって、私も忘れていたんだけど、『聖女』が力をちゃんと発揮させないと、最後の魔王討伐が失敗しちゃって国が滅びるんだよ、うん。
悪役令嬢小説内の乙女ゲーム設定では、ヒロインは王子様に出会う前に『聖属性の妖精さん』に出会い、『聖女』の能力を授けられる。
そして私は既に授けられちゃってる。前世を思い出す前だからね。
記憶を思い出してからだったら、全力で拒否っていただろうけど。
悪役令嬢小説としては、そのヒロイン役に転生した女の子が『聖女』の能力をフルに悪用して悪役令嬢を追い詰め、最後最後に『聖属性の妖精さん』に三行半を突きつけられた挙げ句、悪役令嬢に『聖女』の能力を与えて『悪役』と『聖女』の立ち位置が入れ替わってしまうのだ。
「そもそもこのお嬢様は脳内が爛れておりますので、どんなことがあったとしても『聖女』様に向きません」
と、れーちゃんは真顔で言う。
無駄に“キリッ”とか言う音が聞こえてきそうだ。
そしてこのまま行くと、訓練も何も受けていない『聖女』の私が魔王の前に立ちはだからなければいけない……という、とんでもない状況になるわけで。
他の人に『聖女』の力を移すにしても、私が妖精さんに三行半を突きつけてもらわなければならない。
そしてそれには私が悪事を働かなければならない……。
それならば、私がしっかり訓練をして魔王に立ち向かったほうが良いだろう、という事で。
私的には、そんな恐ろしいこと嬉しくないんだけれども。
「大丈夫!私が討伐に向かわなくてはいけないかもしれないという前提で剣術と体術を極めておりますわっ!」
ノリノリでポーズを決めながらのたまうキヨちゃん。そういや、前世のご実家は武道のお教室やってた。
「……私も、コレが死ぬと目覚めが悪いので、サポートとして四属性魔法を極めております」
とは、れーちゃん。さすが学校一の才媛(前世)だ。
「私達二人がいれば、魔王なんてどんと来いよ!王子のサポートも宰相の息子のサポートも騎士団の息子のサポートもいらないぜ☆」
と、更なるポーズを決めるれーちゃん。
じゃあ、『聖女』判定だけ受け直すよ、と言えば、
「平民のまま『聖女』として学園に通うとなると、いじめとか発生しちゃうでしょう?そこをほら、私が家ぐるみで後ろ盾になれば、無問題よ」
「私も近くで守れますしね、ええ」
とのこと。
まあ、本来私をいじめるのはキヨちゃんの役目……あれ、私がキヨちゃんをいじめるのか、うん?
どちらにせよ『聖女』判定がついちゃえば、身柄を狙われる可能性が高く、平民のお家で過ごすのは難しくなるとのこと。
貴族側は全力で保護をする代わりに栄誉を得るのだそうで、Win-Winなんだそうだ。
因みに、平民の家族にも報奨が貰えるらしい。
恐らく私には特級の『聖女』判定がつくので、中途半端な貴族に身請けされるよりかは、公爵家に入った方がより安全だし、平民のご家族への保護も特級にできるわよ!とキヨちゃんは言う。
まあ、そこらへんは状況をすり合わせて臨機応変に決めたほうが良いわよ、とれーちゃんが窘めつつも、結局『聖女』判定を受けた後、公爵家へ養女として迎え入れられたのでした。
その後、二人のサポートを貰いながら学園に通いつつ、『聖女』能力を高め、キヨちゃんの暴走を程々抑えつつ、れーちゃんの愚痴を聞きながら、平穏な日々を過ごしたのでした。
え、王子様との恋の駆け引きとか、級友たちとのイジメの応酬とか?
ないない。
だって、キヨちゃんは(BL本のおかげで)貴腐人から崇め奉られてるし、男子からはドン引きされてるし。
その教祖様の親友兼義妹の立場なんて、ね。
乙女ゲームの開始からラスト直前までの三年間を過ごしましたとさ。
うん?魔王討伐?
私より強い二人がどうにかしました。
ここまでお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
脳内では王子様との恋愛ルートもあったのですが、いざ書いたら全部吹っ飛びました。
どうしてこうなった。
詳細を書き足して行きたい気持ちもあるので、その際にはイチから投稿しなおして、王子様との恋愛(誰と誰のかは私も不明)も入れてみたいな、と思っています。
いつになるかはわかりませんが。
このお話は、一旦こちらで完結と相成ります。
あとがきも含めまして、お付き合いありがとうございました。
またテキストが溜まりましたらUPしますので、お読みいただけますと幸いです。
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とてもどうでもいいお話(2021/02/02追加)
腐女子→貴腐人に変更。
貴腐人って打ったつもりだったのに、腐女子と打ち間違えていた挙げ句気がつくのが遅かったのがとても辛い。
更に他のところにルビを打とうとして『きふじん』と打ち間違え、自分がその間違いに動揺していることにも衝撃を受ける。