責任
「さすが、官房長官。みごとな対応で。これで、あの女性記者も少しはおとなしくなるのでは。」
記者会見が済んで、官邸にもどる官房長官のあとを、腰ぎんちゃくの役人がついていく。
「あの程度で、おとなしくなるなら苦労はせん。あの、女狐にぎゃふんといわせにゃ、気が済まん。しかし、総理にも困ったものだ。二階で待つ連中になんと言えばいいのか。とにかく、噴火がさしせまってるなどとは口が裂けてもいえん。君等はデータを組み合わせて都合のいい結果をひねりだしてくれ。」
一行は官邸二階のホールへと入っていった。
国民には、富士山と御嶽山の大噴火が近いことは伏せられた。長年かけて、国民に火山や地震の予知などできないと刷り込ませてきたのだ。いまさら、外れても文句をいうものはいない。事実を知らせるよりはパニックを避けるほうがかれらにとっては最優先だ。なかには本気で国民のためだと信じているやつらもいる。国民に知らせてパニックになる前に、自分たちの家族を避難させることも大切だ。さらに、この混乱に乗じて残っている法案を強行採決するのも手だ。
自衛隊は富士と御嶽山ふもとに隊を展開。いつでも住民の救助ができる体制を消防と行政で作り始めていた。
「いざとなったら、独自で行動する。われわれの仕事は、規律を守ることではない。人命を守ることだ。すべての責任は制服組が取る。現場では、隊員ひとりひとりの的確で迅速な判断に期待する。」
災害は国会で起こっているわけではないのだ。




