自己中
富士の攻防はより激しかった。狸たちは付喪神を撃破しつづけるものの。その大音量が山鳴りを増幅し、黒い煙が山腹からも上がり始めていた。
富士山と御嶽山は同じマグマでつながっている。両者の噴火によって、間のプレートのつなぎ目で大型の地震が連続した。人々は、我先にと本州を離れ北海道や四国・九州へと疎開を始めた。富士から近いということで横須賀でも外国の軍隊は引き揚げてしまった。
「天罰じゃ。日本を食い物にしてきた連中に、ついに天罰が下るのじゃ。」
「政府はまったく何をやってる。こういう時の自衛隊じゃないのか。」
「他国の基地を作る前に、やるべきことがあったんじゃないのか?」
国会前では、連日デモが続く。
「自衛隊は噴火に備え待機中。安全が確認できしだい、現地へ出動するよう要請中です。訪米中の総理とはいつでも連絡が取れるようになっております。」
「アメリカ大統領とゴルフ中との報道がありますが、帰国予定はないんですか?」
官房長官の説明に、女性記者はなっとくいかないようで、
「官邸の危機管理対策はそれで十分機能しているといえるんですか?」
矢継ぎ早に質問を繰り返す。
「総理と副総理が離れているということは、ある意味、最大の危機対応策と思いませんか?他に質問は?」
しかめっつらをしながら、官房長官は詭弁とも取れる説明をするだけだった。
「次に中国に行く予定になっていますが、中止にしないんですか?」
「しません。まだ、本格的な噴火もしていませんから。むしろアメリカと中国の貿易摩擦による噴火をいさめるのが、我が国の最大急務の問題だと認識しています。あなたがたも記者なら、こんなところにいないで、現地取材でもされたらいかがですか。」
いやみったらしい説明にも苦言を呈するものは誰もいなかった。
「いくら言ってもむだだよ。どうせ、危険な所にいたくないってだだをこねてるおぼっちゃま総理に、官房長官も困っているんだから。」
近くの記者が彼女にそっと耳打ちした。




