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カラメル・スイーツ・イリュージョン  作者: シャオえる


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1/9

満月を背に目を閉じて

「やっと追い付いた」

 満月の夜、背の高い少女が長い茶色い髪をヒラヒラとなびかせ、はぁ。と何度も息を切らす。一度唾をのみ込み、ゆっくりと歩いて、少し離れた場所で地面に倒れていた黒髪の少女を睨むように見つめ、少女の体を跨ぎ、お腹の上に座った


「シオン、痛い?」

 クスクスと笑ってつかんでいる首を少し力込めて絞める。息ができず、ジタバタと足を動かしても、体の上に乗っかられているせいで、逃げることができず、余計に息が苦しくなり顔が赤くなっていく

「痛いの?じゃあ、痛くなくなる魔術をかけてあげる」

 ほんの少しだけ首を絞めていた手の力を緩める。息ができるようになりゲホゲホと咳き込み、何度も深呼吸をする少女様子をじっと見つめていると、呼吸が整ったのか、はぁ。と大きく深呼吸をした

「ねぇカナメ。もし、また会えたなら何をする?」

 首を絞められ倒れている少女がクスクスと笑って問いかける。その問いかけを聞いて、もう一度首に手を置き、空が見えなくなるほど顔を近づけた

「もう一度、シオンを愛してあげる」

「そっか、楽しみにしてるよ」

 また笑って返事をすると、ゆっくりと目を閉じる。また首もとに手のひらの熱さを感じる。すぐに呼吸が出来なくなり咳も出来なくなる。遠退く意識の中、ほんの一瞬、首もとを絞める手が緩み、息を吸ったその傍に一粒の水滴が落ちてきた









「ねえ、どうする?」

「うーん、どうするって言われても……」

 耳元で困ような話し声が聞こえてくる。頬をつつく感覚と、ユラユラと体を揺らされ、ボーッとしていた頭が少しずつ目覚めていく

「生きてないなら、放っておく?」

「それは可哀相だよ」

「引っ張って運ぶ?」

「そうだね、引っ張ろうか」

 小さな手が両腕をグイグイと力強く引っ張る。何度も引っ張られても、運ぶことはできず、すぐに疲れて腕を地面にバタンと落とした

「運ぶのは無理だね。疲れちゃう」

「そうだね。アリエルさん呼ぶ?」

「うーん。そうする?」

 また側でどう運ぶか悩んでいるヒソヒソ話が聞こえてくる。話を聞いているうちに頭が冴えてきて、ゆっくりと目を開けた

「あっ、起きた」

 目を開けるとすぐ、ずっと側で話していた人と目があった。ゆっくりと顔を動かし、眩い木漏れ日の中、左側にはピンク色の髪をした女の子、右側には緑色の髪の小さな女の子がいた。顔が似た二人の視線から目をそらそうと、目を動かし辺りを見渡す。二人の女の子の間からはユラユラと木の葉を揺らす木々と、地面に生えた雑草が肌にチクチクと当たっているのを見て、はぁ。とため息をついて、ゆっくりとまた目を閉じた

「あの、大丈夫ですか?」

「なんでここで倒れているの?お腹空いて倒れたの?」

 そう声をかけても起きない女の子にピンク色の髪の少女が緑色の髪の女の子を見た

「ムギ、また起こしてあげて」

「ライこそ起こしてあげてよ」

 ムギと呼ばれた緑色の髪の女の子がライと呼ぶピンク色の髪の女の子に返事をすると、二人がまた側で色々と話をしながら、倒れている女の子をユラユラと左右に体を揺らす。何度も揺らされ仕方なく目を開けると、遠くからこちらに向かって歩いてくる人影が見えた


「二人とも、何しているの?」

 騒がしい二人とは違い、落ち着いた女性の声と腰まである長い黒髪を揺らしゆっくりと歩く足音が近づいてくる。地面に座る二人と、地面に倒れている女の子を見て困ったように頬に手を置いた。声をかけてきた人に気づいた女の子二人組がパタパタと早足で女性の元に駆け寄り、女性をぎゅっと抱きしめた

「アリエルさん、倒れている人がいたの」

「そうなの。お家に運ぼうかなって話してたの」

「えっ?人が?」

 二人の話しに驚いたアリエルが、二人がさっきまでいた方を見る。女の子二人も一緒に目線を向けると、倒れていたはずの女の子が体を起こし、髪や服についていた土や葉っぱを払って落としたいた


「あなた、名前は?」

 アリエルが少し屈んで問いかける。ついていた葉っぱを放っていた手を止めて、少し首を傾ける

「名前、確かシオン……」

「……そう、シオンっていうのね」

 返事を聞いたアリエルがシオンにフフッと微笑むと、アリエルが着るワンピースの裾をつかんでシオンを見ていた二人の少女の背中をそっと撫でた

「ライ、ムギ。先に帰ってシオンのために暖かいスープとお布団を用意してくれる?」

「了解です!」

 元気よく返事をしつつつかんでいたワンピースを離し、二人、手を繋いでアリエルが歩いてきた方へと走って向かっていく

「ホイップに言わなきゃね」

「そうだね。美味しいの作らなきゃ」

「お買い物にも行かなきゃね」

「そうだった。ホイップも誘って買いに行こう」

 木の葉を踏む足音と二人の楽しそうな話し声が遠くなっていく。ボーッと二人の後ろ姿を見ていると、アリエルがシオンに手を差し出した

「あなたのお話は、お腹いっぱいになって落ち着いてから聞くわ。急いで私の家に行きましょう」

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