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メアは悪夢の女王様  作者: 三羽高明


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6/7

ヒュウ救出作戦(1/1)

 メアたちはムーマと夢の国に向かいます。


 アモンの案内でやって来たのは、ある駅舎でした。


「ここって、ヒュウが寄り道してた駅じゃない」


 メアが意外に思っていると、駅前の広場から話し声が聞こえます。


「あの不届き者のヒュウは、私をカエルの姿に変えたのです!」 


 そこにいたのは、あの嫌味な駅長でした。魔法は解けたらしく、いつもの姿に戻っています。


 駅長は集まった夢の国の妖精たちを前に、被害者っぽい深刻そうな顔で話をしていました。


「これは許しておけないと、私は鉄道警察に連絡して、奴を捕まえるように言いました。今はこの駅舎の時計塔に閉じ込めてあります」


「ヒュウは処罰されるんですか?」


「当然です! 車掌の資格は確実に取り上げられるでしょうな。その上で、夢の国からも追い出してしまいましょう。悪夢の国の沼地に沈めてやるのもいいかと」


「ふざけたことばかり言って!」


 メアは物陰に隠れながら声を荒げます。


「そっちこそ沼に沈んじゃえばいいんだわ! 何なら、今から目にもの見せてあげるんだから!」


「お待ちください、陛下!」


 飛び出して行こうとするメアを、アモンが止めます。


「今はヒュウを助けるのが先です! こうしている間にも、ひどい目に遭っているかもしれません!」


「……そうね」


 アモンの言うことももっともだと思い、メアは頷きます。ムーマが「ヒュウが閉じ込められてる時計塔ってあれですか?」と、駅舎の屋根についている尖塔を指差しました。


「中に入って塔の入り口を探すよりも、外側から近づく方が早そうね」


 メアは飛行の魔法を使って、宙に浮き上がりました。そのまま、ムーマたちとヒュウのいる時計塔を目指します。


「陛下! 窓がありますぞ! 中に人影が!」


 アモンが指差した窓の中を覗いてみると、木でできた床の上にヒュウが背中を丸めて座り込んでいるのが見えました。


 メアは窓をコンコンと叩きます。


「……メア様!? それに皆も……」


 窓を開けたヒュウは、目をいっぱいに見開きました。メアは「助けに来たわ」と言います。


「さあ、こっちよ!」


 ヒュウはメアの伸ばした手をつかもうと身を乗り出しました。けれど失敗して、真っ逆さまに地上へ落ちていきます。


「うわああっ!」


 悲鳴を上げるヒュウに、メアは魔法を放ちました。落ちる速度が遅くなって、ヒュウはどうにか怪我をせずに地面に着地することができます。


「た、助かった……。ありがとうございます」


 額の汗を拭くヒュウの傍に、メアたちも降り立ちました。でも、安心したのも束の間、誰かがやって来る気配がします。


「あんなところにヒュウがいるぞ!」

「逃げ出したのですか!」


 ヒュウの悲鳴を聞きつけた駅長たちが様子を見に来たのです。その中には鉄道警察も混じっていました。


「あれは……悪夢の国の女王じゃないか! 皆、石を投げて追い払え!」

「何でこんなところに!? まさか、ヒュウが引き入れたのか!?」

「大変だ! 悪夢の女王がムーマたちと夢の国に攻め込んできたぞ!」

「おまわりさん! 脱走したヒュウのついでに、メアたちも捕まえてください!」

「不敬な奴らめ! メア様と呼べ!」


 アモンが文句を言いましたが、今はそれどころではありません。警官がメアたちも逮捕しようと、警棒を片手に迫ってきます。


「こっちです!」


 ヒュウが皆を先導するように走り出しました。「待て!」と叫ぶ警官に追い立てられるように、メアたちは駅舎の中に逃げ込みます。


 ヒュウは何本もの線路の上を横断し、そのうちの一つに停まっていたドリーム・エクスプレスに乗り込みました。メアとムーマたちも次々と乗車します。


「これで逃亡するのね!」


 機関室の装置を動かして汽車を発車させようとするヒュウを見て、メアは彼のやろうとしていることを推測しました。


 でも、警官たちにもヒュウの考えは読めていたようです。彼らは、ドリーム・エクスプレスの進路に立ちふさがりました。


「悪い奴は絶対に逃がさないぞ!」


 逮捕劇を見届けようと、妖精や駅長も集まってきました。メアたちはすっかり囲まれてしまいます。このままでは、前進も後退もできません。


「観念するのですな!」


 駅長がニヤリと笑いました。メアは唇を噛みます。


「こうなったら徹底抗戦よ! ここに立てこもって戦うの! 『一人でも多くを道連れにしてやるわ作戦』よ!」


 メアとムーマたちは魔法の杖を構えますが、ヒュウは「ダメですよ」と言いました。


「駅構内での迷惑行為は禁止されています。戦うなんて、とんでもない」

「じゃあ、このまま大人しく捕まれって言うの!?」


 メアは抗議しましたが、ヒュウは「大丈夫ですよ。そんなことにはなりません」と言って、相変わらず機械を操作しています。


 でも、メアにはどこが大丈夫なのかさっぱり分かりません。警官たちの包囲網が、じりじりと縮まっていきます。


 このままでは、メアもヒュウも捕まってしまうでしょう。メアは、女王である自分が鎖に繋がれるなんてとても耐えられないと思いました。


 でも、それ以上にヒュウが逮捕されてしまうのを恐れていました。


 何故なら、彼は何も悪いことをしていないのですから。元はと言えば、メアのハイジャック計画に巻き込まれたせいで、ヒュウはおかしな疑いをかけられてしまったのです。


 メアは、ヒュウを守らなければと決心しました。今それができるのは自分だけです。


「お前たち、よくお聞き」


 メアは列車から降りました。ムーマたちが「女王様! 危ないです!」と騒ぎますが、無視をします。


「そこのいけ好かない駅長をカエルに変身させたのはわたくし。皆、わたくしが悪いのよ」


 警官や妖精たちの間に、ざわめきが広がります。駅長がふんと鼻を鳴らしました。


「そんな話が信じられますか。それにしても奇妙なこともあったものですな。悪夢の女王が夢の国の住民を庇うなど!」


「庇ってるんじゃないわ。わたくしは本当のことを言っているだけよ」


 メアは首を振りました。


「ヒュウはわたくしにとって大切な存在なの。だから、わたくしのせいで彼をひどい目に遭わせたくないのよ」


 そのとき、ドリーム・エクスプレスから汽笛が上がりました。車輪がゆっくりと動き出します。


 辺りを囲まれているというのに、出発しようというのでしょうか? メアは驚いて振り向きます。そこに広がっていたのは、予想もしなかったような光景でした。


 なんと、列車が宙に浮かんでいたのです。その車体からは、機械でできた翼のようなものが突き出していました。

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