メアの友だち(1/1)
「メア様! 乗ってください!」
ヒュウに呼びかけられ、メアは乗り口に飛び込みました。汽車がさらに高く浮上します。
「待ちなさい! この悪党ども! 自首するのではなかったのですか!」
駅長が拳を振り回して怒っていました。メアは「何のことかしら?」と、けろっとした態度で言い返します。
「代わりと言っては何だけど、これでも食らいなさい!」
メアは杖から魔法を放ちました。駅長の立っている地面が、たちまち沼に変わります。彼の体が、段々と泥の中に沈み込んでいきました。
「ひぃ! お助けをー!」
駅長は手足をばたつかせます。警官たちは、彼を沼から引っ張り出そうとあたふたしていました。
混乱する地上を尻目に、空飛ぶ汽車は駅舎を後にします。窓のすぐ外には、雲が浮かんでいました。
「ヒュウ! お前、また列車を改造したのね!」
「メア様が、僕なら飛行できる乗り物も作れるって言っていたから……」
ヒュウがはにかみました。
「それにしても驚きました。まさか、メア様たちが助けに来てくれるなんて思ってなかったんです。それに、さっきだって自分から捕まりに行くなんて……。あっ、もしかして何か作戦があったとか?」
「ないわよ、そんなもの」
メアは首を横に振ります。
「駅長に言ったとおりよ。わたくしはヒュウが大切だからああしただけ。……ねえ、ヒュウ。お前はもうわたくしの手下じゃないわ。だから、これは命令じゃなくてお願いになるけど……。もしよかったら、わたくしの友だちになってくれないかしら?」
メアの提案に、ヒュウの顔が華やぎます。
「もちろんです!」
ヒュウが元気よく返事しました。ムーマたちがわっと沸き立ちます。
「やったぞ! ついにメア様に友だちができたんだ!」
「こうしてはいられませんな! 城に帰ったら、記念パーティーを開かねば!」
「皆で盛り上がるわよ! さあ、ヒュウ! 悪夢の国に向かって、全速力で飛ばしなさい! 『早くパーティーを楽しもう作戦』が待ってるわ!」
「はい!」
ヒュウが装置を動かすと、列車が加速していきます。
雲を突き抜け、山を越え、谷を抜け……。空飛ぶドリーム・エクスプレスはずんずんと進みます。
固い友情で結ばれた二つの国の住民を乗せながら、どこまでも、どこまでも。
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「メア様! 列車の改造が終わりました! これで水の上も走れますよ!」
「ついに毒沼遊覧船ツアーに出発できるのね!」
ヒュウが持ってきた嬉しい知らせに、玉座に腰掛けていたメアは目を輝かせます。
「アモン! ムーマたちに集合をかけなさい!」
「承知いたしました!」
敬礼して、アモンは玉座の間から出て行きます。ヒュウは「ああ!」と、ちょっと困った顔になりました。
「完成はしたけど、燃料の補充がまだです! そんなにすぐには出発できませんよ!」
「平気よ。幸福な思い出なら、今から集めればいいわ」
メアもヒュウと一緒に広間の外に出ます。
「この間、皆で毒薬の調合大会をしたときのこととか、悪霊の洞窟を探検したこととか……色々あるじゃない」
「……それもそうですね」
ヒュウが笑いました。
あの脱走事件以来、ヒュウはずっと悪夢の国で暮らしています。今では、すっかりこの国の住民となっていました。
城門へ着くと、すでにムーマたちは集まっています。彼らの傍には、ドリーム・エクスプレスが停車していました。
「ヒュウ! 燃料が減っていたようだから、我々で補給を済ませておいたぞ!」
アモンが言いました。メアは「あら、用意のいいこと」と微笑みます。
「それなら、もう走れるわね?」
「はい、行きましょう」
ヒュウが機関室に乗り込み、メアたちは客車へ向かいます。
皆が席に着くと、車内アナウンスが流れました。
「次は、毒沼、毒沼です。お降りの際は、お忘れ物にご注意ください。では、どなた様もご友人、お仲間とよい一日を過ごされますよう。出発進行!」
汽笛が鳴り、ドリーム・エクスプレスがふわりと浮き上がります。
こうしてメアたちは、今日もまた楽しい日常へと旅立っていったのでした。




