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推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について(連載)  作者: あかね
異世界に来ました編

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推しに色々ばれました



 日暮れ前には帰宅しました。馬にすらやれやれと言った目線を送られた気がするのは気のせいでしょうか。

 乗るときと道中とか抱きつくような大惨事がありました。落ちそうになって怖かったんですって。

 降りるときは本気で落下しそうになりました。


 もう連れて行かない宣言は妥当な所でしょう。あたしもそう思います。乗馬スキルとかが生えない限り行こうとか思いません。

 ところで、異世界的にスキルとか生えてないでしょうか。


 スキル制の世界ではなかったので無理ですか。ステータスもなかったですし。


 さて、現在、順調に現実から逃避しています。


 帰宅後、荷物を一度、片付けました。後回しにするとやらない気がしたんですよ。クルス様が。不本意と言う顔をしてましたが、指定場所に置く程度はしないとあとで困ります。


 そのあとです。


「疲れているだろうけど、話がある」


 なんて前置きされて、とりあえず、ダイニングに行きお茶をいれて、買ってきたお菓子をおいて、黙られました。


 正面じゃなく隣に座られたので別の意味でも緊張してます。いえ、正面でもなんというか顔見れなかったりするんですけど。


 ちらっと横顔を伺いますが、少し迷ったような困ったような顔なんですよね。


 クルス様、なにをお考えで?

 なんて聞けもせず、お茶をすすっている次第。いえ、音は立ててませんけど、このちびちび感はすすっている気持ちです。お茶はゲイルさんが持たせてくれた謎の代物です。固まっているのを砕いて飲むんですって。ココアみたいな味がしました。

 もう、冷えましたね。


 この世界的には間接照明が主流のようで、ダイニングでも背の高いランプが二つありました。あたしと同じくらいの高さで、これも魔動具で光量の調節が出来るとか。タッチ式なので微妙に難しいのですが。


 ため息を押し殺して、お菓子に手を出します。

 さくさくのお菓子は郷土菓子で、買うときに各地で形が違うとかそんな話もしました。

 ……思い返せば結構、いい感じにデートだったんじゃないでしょうか? いっぱいいっぱいでしたけど。

 推しとのデート。一生の思い出にしましょう。


 ただ、このお菓子、食べるとさくさくと音がするのがちょっと微妙です。沈黙しているとき食べるものではございません。

 クルス様にも笑われてしまいましたし。目があって、避けられましたけどね。


「……違ったら、それでもいいんだが」


「なんでしょう?」


「この森には、異界から来訪者がくるという話がある。ここ数回は数十年に一度くらいの頻度で」


 この世界からしたら確かに異界ですね。そんな当たり前の感想が出てきました。

 え、異界から来たと断定されてます? これ。

 隠していたかというとそうでもなく、説明する余裕もなかった実情があります。

 実際、あたしにわかることは全くなかったわけで。でも、そうですね。別の世界から来たんだとは伝えて良かった気がします。


 口を開こうとすると止められました。


「否定も肯定もしないで欲しい。知っていたことも偽りを言わせたことも後でまずいことになる」


「ええと、なにがまずいのですか?」


「来訪者を発見次第、国に知らせる義務がある。調査とか色々あるんだ。隠蔽したことが確実になると罰則規定がある」


「……ぎり、グレーじゃないですか」


 ほぼ、真っ黒。

 あたしが申告しなかったから、グレーと言い張るレベルですよ。

 確実にそうだと確信してなきゃ聞きませんよね? そもそも出現自体が怪しいわけですし。思い返せば、少しずつ確信していったんでしょうね。目の色とか、発言とかを。


「だから、これ以上は聞きたくない。先日まで戦争やってて落ち着いたら、来訪者の後ろ盾を巡って政争が始まるなんて悪夢だ」


 うわぁ。

 ……異世界に来るにしてもタイミングってものがあるのではないでしょうか?

 戦時下というのが一番の最悪でしょうけど、その次くらいに悪いのでは?


 さすがにちょっと血の気が引きますね。いや、重たいですよ。そこまでの事態って。


「ええと、後ろ盾を予め決めておけば良い、と言う話になるんでしょうか」


 あ、眉を寄せられました。こ、この返答もまずいんでしょうか。


「師匠には知らせたのでそのうち検討結果が来るだろう。

 おそらく、クルスの一門及び魔術協会で一時的な保護というかたちにはなる」


「どのくらいかかるんですか?」


「師匠のやる気次第」


 ……一番困る解答ですね。


「悪いが、それまではどこかに行ってもらっては困る」


「……それは、まあ、拾われた恩がありますし、契約もあるのでいいのですけど」


 正直他のどこかに身を寄せる気はしないんですよ。他の選択肢っておそらく、英雄たる主人公しかありません。あのハーレムに入りたくはないです……。

 それにその他の誰かを信用するほどの時間はないでしょう。


 個人的には早く、師匠の人に来て欲しいものです。師匠、シルエットの人でしたね。確か、女性だったような?


「一つ疑問があるんです」


 目線で先を促された。


「気がつかない振りをしていた方が良かったのでは?」


「いずれ、話をすることになる。そのときに騙されたなんて言われるのは、嫌だった」


 まあ、確かにクルス様相手でもちょっと不審感は持つかもしれませんね。

 納得がいくような、微妙な理由ですけど。でも他の理由というのも思いつかないんですよね。

 来訪者に価値があるというなら、心証を損ねたいとは思わないでしょう。たぶん。


 ……クルス様の考えに沿わない気がするんですけどね。全く気にしなそうなんですよ。気がつかない方が悪いとか言いそうと申しますか。


「ここが嫌になったら、ゲイルの所に預けるから言って欲しい」


「覚えておきます」


「この話は、今後しないし、忘れておくように」


 肯くと良くできましたと言うように頭撫でられたんですけど。

 彼の中でのあたしはいくつぐらいに見えるんでしょうね?

 子供、というわけでもなく、それほど大人扱いもされていないような気がするんですよ。


「そんな子供でもないんですけど」


「20前後くらい?」


「……まあ、そのくらいです」


 現在の外見的には。実年齢は、言わなくてもいいでしょう。

 クルス様がしれっと年を聞いてくる感じがちょっと意外といいますか。配慮というよりは他人の年なんかに興味ないんじゃないかと思ってました。


「同じくらいのはずなんだよな」


 クルス様は少し不思議そうに呟いて……。


 ……は?


 まさかのあたしの実年齢より年下ですか?

 衝撃過ぎて、ぽかんと口がひらいたままですよ。


「そんな驚く?」


「えっと、結構、上なのかと」


「ガキだと馬鹿にされることの方が多かったから、上に見られるように振る舞うようにはしているよ」


 いやいやいや、あのえろい、じゃなかった、かっこいい感じが、二十そこそこなんですかっ!

 初登場、十代じゃないですか。

 マジですかっ!


 あ、確かに凄腕の魔導師って煽りがついていた気がします。ベテランではなかったのはそういう……。

 煙草吸ってるから配慮されて、年齢未表示だったのかもしれません。


「そっちの方が好き?」


 うぐぅ。

 変な声が出そうになりました。思っても見ないところから追撃を喰らったような気がします。

 そっちの方ってなんですかっ! 大人なところも良いと思いますよ。

 頬杖ついてこちらを見ているところは年相応と思いますけどね。可愛いと言いますか。


 無言でにこりと笑われました。珍しい感じの笑い方です。

 どきどきしますけど、なんでしょうね。こう、ぞわぞわするといいますか、危機感を覚えるんです。圧力も感じます。


 どちらが好きっていうこともないんですよ。あたしにとっては延長線上に存在していますし。


「……どちらでも素敵だとおもいますよ……」


 恥ずかしい思いをどうにかやり過ごして、言っておくことにしました。意識しまくって好意を持っているのを隠しようもないんですから、もういいです。

 いっそ、積極的に言っていきましょうか。……いえ、無理ですね。恥ずかしいです。


「そう、子供っぽいのは嫌とか言うかと思った」


 意外とでも言いたげな声音でした。どこかで誰かに言われたんでしょうか? そんな贅沢な。


「そのままでも十分ですけど……」


 むしろ過剰です。オーバーキルです。

 今日の色々は、刺激が強すぎます。明日からは何事もなく、距離感を保っていたいです。なにか血迷ったり、勘違いしたくなります。


「ありがとう?」


 困惑したような声でしたね。

 微妙な沈黙が痛いんです。変な事言いましたか。そうですか……。微妙にへこみますね。


「……夕食でも食べるか」


「はい」


 町で買ってきたサンドイッチで軽く夕食を済ませました。拳二つ分くらいのバゲットっぽいものにチーズ、ハム、ピクルスが挟まっているシンプルなものです。

 あたしには半分で十分でした。

 この世界の食卓ではあまり生野菜は出さないようです。屋台で見かけたレタスっぽいものですら軽く湯通しされていましたし。


 代わりに果物は豊富で、いろんな色のリンゴがあったり、ブドウもサイズも色も違うものが並んでいました。

 今後、木イチゴやベリー類が出回るそうです。ただ、あまり甘くないのでジャムにしてパイにいれたりとかするようですね。さりげなく、太るんだよなと言っていたのが意味深です。


 果物は食後に食べる習慣があるそうです。不足しがちなビタミン補給のためかもしれません。昨日なかったのはただ単に買い物に行ってなかったから、らしいです。どうやらジャガイモ生活直前だったようですね。


 そして、なんとなくは思ってたんです。

 クルス様はリンゴは丸かじり派なんじゃないかなって。想像の通りしゃりしゃりと食べていますが、それ、二個目ですよね。どこに入っていってるんでしょうか。サンドイッチ一つと半分食べたあとですよね?


 ちなみにあたしの分はブドウを買っていただきました。ビタミン大事です。


「剥いたりとかはしないんですか?」


 一応、聞いてみました。


「なんで?」


 きょとんとした顔が可愛らしいですが、そうですか。文明の違いか個人差かはわかりません。自分でリンゴを食べるときは剥かせていただきます。喉に引っかかるような感じが少し嫌なので。

 なお、ブドウは種なしの皮ごと食べられるものを選んだのでそのまま食べています。ちょっと不気味な青色なのですが、おいしいです。

 他のものは変な色していないのに果物だけいろんな色があるようですね。


「食べないなら、もらうけど」


「どうぞ」


 あたしには一房の半分でも多かったですね。

 このあたりから相当眠かったのは確かです。記憶が曖昧で、眠いなら部屋に戻ったらとか何とか聞いた気はするんです。


 なんと答えたかは全く記憶にありませんでした。

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