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森の娘と最後の騎士  作者: OWL
第一章 森の獣
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第50話 アンナマリー

イルンさんとご一緒にわたくしも帝都にやって参りました。

男爵領を出てギィエッヒンゲンから本来王侯貴族や帝国の重鎮くらいしか使えない転移の秘術を利用させて頂いた為、季節はまだ夏のままです。


わたくしがあの村に赴任した時は船旅で三か月近くかかったでしょうか。転移の秘術など庶民のわたくしにはお伽噺のようなものでしたが、本当に存在していたのですね。


イルンさんのご家族は家財道具があるので船で西方へお引越しする為、別々の旅です。

わたくしまで村を離れる事にイルンさんは驚き理由を聞くとその紺碧の瞳を絶望に染めました。

わたくしが代官ご一家と親しかった事はすぐに調べがつくでしょうし、男爵が領主として戻ってくる事になり、身の危険を感じた為です。


「ごめんなさい・・・アンナマリーさんにまで、わたしが余計な事したばっかりに・・・、アンナマリーさんまで故郷を失っちゃうなんて・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・」


泣きべそをかく彼女にどう言葉をかけたらいいものでしょうか。

しばらく悩んで彼女を抱きしめてあやします。


「もちろん、それだけではありませんよ。わたくしは近隣住民の方々と良好な関係を築くことが出来ませんでした。ずっと代官様の喜捨に頼り切りだったわたくし自身の不始末の結果です。いずれオイゲンさんの任期が切れた時、同じ結果になっていましたよ」


街の神殿にいる神官たちなら季節の祭事や冠婚葬祭、墓地の管理などの仕事がありますが、わたくしは父から預かった資金とオイゲンさんの厚意に甘えすぎていました。

帝都で修行をやり直すとしましょう。


わたくしが自分の問題といっても、彼女はなかなか納得してくれません。


「わたし、昔から何やっても人に結局迷惑かけちゃうの。フィオもラザフさんも皆死んじゃった・・・、わたしのせいなの。やっぱりあの時逃げていれば良かったんだ・・・」

「あの時というのは町の子に石を投げられた時ですか、声を枯らして貴女を探し続けるヨハンナさんの為に戻ってきてくれたのでしたね。貴女がいてくれたからこそ、娘を亡くして失意の生活を送っていたヨハンナさんは救われたのですよ。それに貴女が作った医薬品で西方の人々はずいぶん助かっているそうですし、昨年の流行り病でも貢献したではありませんか。悪い事ばかり考えるのはおよしなさい」

「はい・・・」

「それより、すぐに南方に立ってしまうのですか?今までいた男爵領は東方圏の最北東ですが、あの帝国騎士様の国は最南端ですからかなり気温差がありそうですよ。レベッカ先生もご一緒だそうですから心配はしていませんが健康に注意して下さいね」

「うん、わたしは平気。それよりアンナマリーさんはここであのお爺さんと一緒なんですよね」


もともとあの老魔術師が旅支度をしているわたくしについでに来るといいと行って転移を使わせてくれましたからね。


「ええ、あの不良老人がちゃんと貴女の故郷を探しているか見張っておきますよ」

「でも心配です。あのお爺さん随分女性にだらしないひとだってお屋敷の衛士さんが言ってたから」

「そうなのですか?」

「うん、最初に取り調べした時いろいろと余罪が出てきたって」

「そうでしたか、やはり最初にあの老人を拾うのは間違っていたかもしれませんが、結局あの老人のご縁で東方の大君主まで出てきて男爵を懲らしめてくれたのですから、人生何が影響するかわかりませんね。行動は先々の事を考えて起こさなければなりませんが、それでもわたくしは正しいと信じた事をするでしょう」


イルンさんは今では体だけではなく心の傷も深くなっているようです。

慰めや励ましの言葉は彼女の心に届きません。

あの帝国騎士が彼女をうまく導いてくれるといいのですが。

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2022/2/1
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