第48話 ハンネの日記②
皆様お久し振りでございます。ハンネです。
日記や書簡集には散逸して間が欠けている事がありますので、毎度冒頭文はこうしておいた方がいいですね。
さて、旦那様と手紙での相談が続いています。
問題は実質的な最高権力者が誰か、ということですね。
恐怖公は恐妻家という一面もありましたし、分野によって最高権力者が違うこともあるようです。まずは情報収集を続けなければなりません。
幸か不幸か、私は不要だといわれて仕事を外されてしまう事が多くあの男に稀に呼び出される事もあるので自由に動けます。
今の状況だとお嬢様の健康だけが心配ですので、レベッカ先生に特にお願いをしておかなければなりません。男達が頼りにならないのでレベッカ先生だけが頼りです。知己が少ないので、旦那様に任されているのにお嬢様の側を離れるのはとても心細く感じます。アンナマリーさんはお父様から村の神殿を任されていたそうなので仕方ありません。奥様が手配して下さったお針子さん達が後からこちらに来て下さるそうなので、それまでは心細い日が続きます。
あの男には妻に先立たれているそうですので、その娘さんがこの城では立場的には女性陣の最高の地位にありますが、まだ子供ですし次は貴族の侍女でしょうか。
まだ貴族達に近づくのは危険ですので、平民の中でとなると城内の清掃、洗濯、炊事を取り仕切っている家政婦長ですかね。
特に面識がないので後回しにして、まずは下働きの者たちをお嬢様の味方につける方法を考えた方がいいでしょうか。
私達侍女がお嬢様のお世話をしているように、侍女達も下働き達の世話になっています。
その辺りの社会構造は旦那様の館と変わりませんね。
貧しくお腹を空かせていたり、衣服を新しくするお金に困っていたりしますのでまずはその辺りから解決しましょうか。
お嬢様がご自身で口座管理するようになり、私のお給金が到底使いきれない額になってしまった為ちょうどいいですね。ダニエルさんから下働きの子供達向けのお菓子を買い付けてお嬢様からといって振る舞うことにしましょう。
実際お嬢様も小さな子達を心配していましたからね。
ここの男で頼りになるのは今の所ダニエルさんだけですね。鳥の本能を使った商人の連絡網があるそうで手紙の往来がとても早いのです。
お元気の無いお嬢様を元気づけてくれるようナジェスタ様にもっとお手紙をくださいとお願いしてみましょう。
さて、後はあの変な老人の弟子という方の事です。
下働き達に聞くところではこちらはこの領地でも別格の扱いらしく、城外に住んで好き勝手しているらしいです。王都であったトレイボーンというお弟子さんに平民として扱って欲しいといわれたとお嬢様から相談を受けました。
「年配で知識も豊富で人々から畏敬されているっていう魔術師達らしいし、トレイボーン様は平民だからトレイボーンと呼んでくれといってたけど・・・他にも女性貴族の魔術師のお弟子さんもいるんだって」
「ではおじさまやおじいさまとお呼びしてはいかがですか?」
「なるほど!それなら自然な敬称だね、でも女性の貴族の方はどうしよう。年齢とか呼び方気にするような人たちだと怒ったりしない?」
「そちらはお姉様とお呼びしては?」
「え、なんで?」
「お師匠様らしいことをしてくださった印象はないですが、一応同じ師匠のお弟子さん同士ですし、このような場合先輩の女性のお弟子さんの事は姉弟子といいますよ。機織りなどでも同じです」
「ふむむ…なるほど」
お嬢様は複雑な面持ちでしたが、試しにそう呼んでみるとおっしゃいました。




