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 それからの数日間、真理子の日常は一変した。


 これまでは「片付けなければならない」という義務感で実家に通っていたが、今はスマートフォンに届く「いいね」の通知が、彼女の胸を高鳴らせる。見知らぬ誰かが、母の万年筆に目を留め、彼女が綴った物語を読んでいる。その事実は、社会から切り離されたような孤独感の中にいた真理子にとって、新しい「窓」が開いたような感覚だった。


 家事の合間に、あるいは夜、布団の中で、真理子は出品画面を確認した。


「五人の方が興味を持ってくれている……。私の言葉は、ちゃんと届いているかしら」


 それは、長年忘れていた「自分自身の表現が認められる」という喜びだった。50代になり、妻として、母として、誰かのために生きるのが当たり前になっていた彼女にとって、このオンライン上の小さな空間は、自分自身の感性と審美眼が試される、真剣で知的な「勝負の場所」となっていた。


 そして三日目の雨の午後。実家の居間で、真理子は本書で紹介されていた「収益管理シート」を埋めていた。もし売れた場合、手数料と送料を引いて、どれだけの「実利」が残るか。計算してみると、想像以上の数字が浮かび上がった。それは、母の遺品を「不用品」として捨てていたらゼロだったはずの、真理子の審美眼が生み出した価値だった。


 その時、手元のスマートフォンが短く、鋭く震えた。


 通知画面には、これまでとは違う、一通の熱を帯びたメッセージが届いていた。


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