携帯電話の電波
これからは例のマンション、という書き方にしようと思う。
あのマンションでは度々、友人との通話中に声が途切れがちになったり、声が全く聞こえなくなることがあった。
恐らくマンションの構造上、電波が不安定になりやすい様々な理由が重なった……のかもしれない。
10階以上のマンション、中層、エレベーター近くの部屋、マンションの形。
まあ説明が付かなくもない。
ちなみに大島てるにも載っているこのマンション、自分も知らない事故も載っているが、逆に乗っていない孤独死や飛び降りなども当然多数ある。
ところで、電磁波が幽霊と因果関係がありそうだということは、怪談好きの方ならご存じかと思う。
そもそもが、機械系とオカルトは相性が悪い。
いや、話のネタとしてはもちろん相性抜群である。
相性が悪いのは、とかく怪談に関わると、往々にして機械が不調になりがちということ。
まあそれを言い出すと、人間にも電磁波が影響して、心霊体験を起こしがちになるという話も聞くのだが……
心霊体験?に関してはまた別の機会にするとしても、そういった自身の体験であったり、自殺が多かったことと因果関係はあったのかも知れないし、そこは知りようがない話ではある。
ということで、今回は電波にまつわる自分が怖かったエピソード。
ほかの話でも登場することがあるので、少し立地の説明をさせて欲しい。
自分の家である部屋のベランダは西側にあった。
西棟なので、南棟の裏にある公園はちょうど角に隠れるようにして入り口も見えない。
ここで位置関係を記しておくと、南棟の裏には公園がある。
マンションは区画の西にあり、右隣りに二階建ての大き目な建物があるお店で、裏は立体駐車場。
その店の更に右はスーパーの倉庫、そして東端にはスーパーが並ぶ。
公園はこの西端にあるマンションから東端にあるスーパーの裏手まで、およそ200Mはある横に長い公園だ。
裏手にあるせいか、どうにも薄暗い印象がある。
建物の裏にあり、公園との間には細い道を挟んでいるのだが、夜は公園の中はもちろん、この道も暗いので夕方以降は通りたくない。
道から見て、木々で公園側の視界もあまり良くない。
昼の公園はそれなりに明るいのではあるが、細長いせいか、やたら木々が多い気がする。
マンション裏の細道側と下り坂の断崖側では木が並んでいるのは当然のこと、公園の中央から東側に掛けても内側に結構木が多く、木も高いので、北にある立ち並んだ建物の圧迫感やその影ということで、なおさら暗い印象を持つ。
マンションから後ろは細い道、公園、公園の裏は下り坂の道路になっており、下り坂を挟んでお墓が並んでいる素敵な立地だ。
坂の下にはそういえばお寺があった気がする。
なのでよく、通りかかるとお葬式の案内板が出ていたのを思い出した。
マンションの南棟からはお墓が見下ろせる風景となっているはずだが、よくよく考えると、心霊的にもこういった立地って良くないような……
それはさておき、この公園は結構横に長く、西側は遊具などがあり、中央には日曜日にゲートボールなどをする老人もいたりする整地された広場、東側は枯れた木々に囲まれたイスとテーブルが点在するエリアに分かれている。
前の話では東棟中央階段から飛び降りが集中していると書いたが、南棟でも勿論発生している。
落ちた場所というのがマンション裏手なので遊具のある西側、公園と細い道を区切る茂みのあたりだそうで、当時は「ああ、ここかな……」と思ってマジマジと見たこともあった。
こういった、「なんか暗い」「墓場が望める」「飛び降り現場」といったコンボにより、暗くなってくると近寄りがたい雰囲気を醸し出している公園になる。
説明で尺を取られ過ぎたが、ここからが本題。
期待を煽ってしまって申し訳ないのだが、全く大した話ではない。
ただただ、勝手に怖くなっただけの話なのだが。
ある日に友人と遊ぶ約束をしており、帰ってくる友人からの連絡を待つため、夕方暗くなってから公園のあたりで待機していた。
直前までは帰り道である友人と電話をしていたのだが、なんだったかな。
少ししたら掛け直して欲しいと言われたのだか、それとも通話の調子がおかしくなって会話がまともに出来なくなったのか。
思い出せないが、ともかく、友人に電話をかけ直そうと公園を歩いていく。
電話が繋がらないな……
そう思いつつ西から東へ。
ようやく電話が繋がった、と思ったら、繋がった瞬間に「ツーツー」と電話が切れる。
あれ? 電話中かなんかか?
電話を掛けること、三度ほど、同じ状況が続く。
不思議に思うのと同時に、なんだかゾワゾワしてきた。
よくよく考えると、ここは例の飛び降り現場があった公園である。
恐怖が心を侵食していく。
周りには明かりは殆どなく、かなり暗い。
そうして焦りと恐怖に心が浸かり始め、飛び降り場所から離れて特に暗い東側へ辿り着くころ、ようやくまともに繋がった!と思って、話しかけても何も応答はない。
なんで? どうして何も聞こえない? まともに繋がらない?
怖い。そう思った。
心臓がバクバクと鳴り響くなか、とにかく急いで東側の出入り口から出る。
東出入り口前は道路があり、北に30Mも進めば、スーパーの東入り口に着く。
この辺りまでいけば、明るく安心ができる。
表道路側から西へぐるっと遠回りしてマンションの西棟ベランダ側へ。
下から上を見上げると、自分の家のベランダが見えるが、公園の入り口はちょうど見えない位置だ。
ここからもう一度電話を掛ける。
今度は拍子抜けするほどあっさりと、電話は普通に繋がって、そのことに安堵する。
「もしもし? さっき電話が繋がらなかったんだけど、誰かと電話してた?」
「してないけど」
「電話してやっと繋がったと思ったら、声もなにも聞こえないしさ」
「え? 電話来てないけど」
「え? マジで?」
じゃあさっきはなんだったん?ってまた怖くなった。
いまなら繋がりにくい立地で、たまたまそういったタイミングだったから……と考えられなくもないが、ちょっと状況が状況だけに、怪談方面に繋げてしまう自分。
この時は本当に怖いと思ったお話。




