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 二つの白い月と二つの巨大な輪を持つ惑星メビウス。

 広大な異世界の惑星の中を、とくに目的もなく個々のプレイヤーが自由な遊びかたのできるこのゲームの一応の最終的な目標は、『メビウスの指輪メビウスリング』と呼ばれる、取得すればゲームクリアを達成できる指輪を手に入れることが、この世界を作り出した会社(このメビウスオンラインを製作した『世界一の巨大企業パラドクス&ドルフィン』のことだ)の設定した公式の目標だった。

 でも、メルの目的は、そのメビウスの指輪ゲームをクリアすることを手に入れることではなかった。ある、一人の、つまり『自分の、現実の世界からいなくなってしなった親友の少女を、この広い惑星の中から見つけ出すこと』。それが(普段ゲームをしない)メルがこのオンラインゲームを始めた、たった一つの目標だった。

「さてと」

 メルは言う。

 それからメルは自分の腰にある若草色のポシェットを開いて、そこから一枚の古風な本を取り出した。その本の表紙には、『メビウスオンライン説明書』の文字がある。

 その本を見て、メルは「ふう」とため息をついた。

 わざわざこうして、レトロな演出をするのが、このオンラインゲームの特徴らしい。メルは自分の立っている草原の中に座り込んで、その説明書を最初の一ページ目から丁寧に全部のページを読み始めた。

 じっくりと全部のページを読んでいるのに、メルの本をめくるスピードはかなり早かった。

 その結構分厚い古風な本を、メルは三十分とかからずに読み終えた。

「よし」

 メルはそう言って、その場に再び立ち上がると、本を若草色のポシェットの中に戻した。

 だいたいのルールは理解できた。

 でも、本当の意味での『この世界でのルール』は、これからメル自身がこのゲームを実際にプレイすることでしか、おそらく学ぶことはできないのだろう、とメルは思う。

 自由度が高いゲームは、ゲームを遊ぶプレイヤーがその世界の中のルールに縛られてはならないのだ。

 メルは自分のやってきた惑星メビウスの世界に目を向ける。

 そこには、確かに現実の世界では体験することのできない、不思議な、そして、とても魅力的で美しい、人工の箱庭の世界が、……ずっと、はるか地平線の果てまで、続いていた。

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