表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真説・うらしまの太郎  作者: 川端 茂
76/86

七-九

「もう(りゅう)や大イカに化身(けしん)して(おどろ)かせたり、こらしめたりする時代ではなくなりました。」

「人間には新手(あらて)を打たねばなりません。これから魚族(ぎょぞく)議会(ぎかい)を開き、議題(ぎだい)に乗せましょう。」

 ショウは魚族(ぎょぞく)(しょう)(しゅう)し、シオンや霊感師(れいかんし)のミンクを交えた議会(ぎかい)が開かれた。議題(ぎだい)(ほか)にもあったが、人間による魚の乱獲(らんかく)をどう防ぐかの議題(ぎだい)移行(いこう)した。

「早いうちに人間の漁を()めねばならない。(ふね)道具(どうぐ)改良(かいりょう)され、漁師の(かず)()えているので、犠牲(ぎせい)になる魚が()一方(いっぽう)だ。これを阻止(そし)する(さく)を考えよう。」


(りゅう)の姿が大きかったので、それに対抗する武器(ぶき)を作らせたことが(ぎゃく)効果(こうか)になったのだ。サメならどうだ。」

 多くの(さかな)達は賛成(さんせい)したが、人間がサメを(てき)と見なして、(ぎゃく)(さつ)捕獲(ほかく)躍起(やっき)になるだろうと、ショウはこの意見を退(しりぞ)けた。

「リュウビ様は全てのサメを悪者(わるもの)にしないでしょうし、戦いでは解決(かいけつ)できないと言われています。」

 議長のショウは威力(いりょく)(おど)しではなく、戦わない手立(てだ)てを(さぐ)るべきだと、きっぱり言った。

「人間と仲良(なかよ)くせよとでも言うのか、そりゃ無理(むり)だ。あの理不尽(りふじん)(きょう)(ぼう)な動物は、(たお)すしかない。」

 ヒラメの長老(ちょうろう)、シオンがあきれ顔でつぶやいた。


 平原の片隅(かたすみ)にそびえる大きな岩を囲み、魚達の議論(ぎろん)は続いたが、決定(けってい)的な案が出ない。そろそろ閉会(へいかい)せねばと、ショウが考えた時、タコのトポスがひとつの提案(ていあん)を出した。

「この懸案(けんあん)は漁の阻止(そし)だが、まず優先は(たい)(りょう)阻止(そし)じゃないか。問題の(たい)漁師(りょうし)特定(とくてい)して考えたら、何か方法が見つかるかもしれないぞ。」

「そうだ、(たい)漁師(りょうし)(しぼ)って考えよう。」

 魚の中から、次々に絶賛(ぜっさん)の声が()がる。

「だとすると、標的(ひょうてき)になる漁師は。」

 ようやく意見がひとつになった。この海峡(かいきょう)(あかつき)(だい)執拗(しつよう)に釣り上げ、漁師(りょうし)仲間(なかま)をさらに増やそうとしている人間がいる。

「ショウさん、標的(ひょうてき)太郎(たろう)でしょう。リュウビ様も太郎を警戒(けいかい)していますし、この前は(ひど)い目に合わされていますから。」

「もちろん、そうです。」


 カニのシンカは、人間に(いのち)を助けられたことがある。不注意(ふちゅうい)で浜に干してあった漁網(ぎょあみ)に足が(から)まり、夏の(あつ)い浜で死ぬ寸前(すんぜん)だったが、網から外して海へ戻してくれた。それが標的(ひょうてき)になる太郎なのだ。

「もう大丈夫。気をつけろよ。」

 太郎の優しい一言(ひとこと)が忘れられないシンカは、大きな魚が小さな魚を食するように、人間の漁も悪意(あくい)ではないと思っている。

「太郎が漁をやめるか、(たい)()(じゅく)断念(だんねん)するか、あの浜から()えるかの、どれかの策を考えればいいと思います。太郎の優しさを利用(りよう)してみては。」

「優しさを利用(りよう)するというのですか、さてどうやって……。」

 リュウビの言う戦わない対策(たいさく)が出たことで、議長のショウは大きな前進(ぜんしん)だと満足(まんぞく)し、これからは太郎をよく調査(ちょうさ)研究(けんきゅう)して、トポスとシンカの言う提案の具体(ぐたい)策を出すよう指示(しじ)して閉会した。

「いい提案ですね。皆さんで意見(いけん)を出し合い、まずは(たい)族の未来(みらい)から(すく)ってください。」


 寝処(ねぐら)でショウが目覚(めざ)めると、息子のチャコがいない。海草(かいそう)群生(ぐんせい)する岩場(いわば)へ入ったのかと大急(おおいそ)ぎで向かうと、そこからチャコらしい声が()こえた。

 チャコが岩に(はさ)まれて身動(みうご)きできなくなっているところを、通りかかったトポスが岩を(のぞ)いてくれたらしい。成亀(なりかめ)にとっては(なん)でもない岩だが、(はさ)まれた子亀(こがめ)の力では脱出(だっしゅつ)できない状態(じょうたい)だったと言う。

(うご)けなくて、(こわ)かった。」

 ショウが礼を言おうと()()くと、すでにトポスは(およ)ぎ去った(あと)で、災難(さいなん)(すく)ってくれたトポスに礼を言いそびれたことが心に(のこ)った。

 次に会った時は寝処()に招いて貝を振舞(ふるま)おう。そうでもしないと感謝(かんしゃ)の気持ちが(おさ)まらない。ショウはトポスが好む貝を(あつ)(はじ)めた。

 しばらくしてトポスに会った時、チャコを(たす)けてくれた(れい)に、貝を馳走(ちそう)すると伝えると「礼には(およ)ばない。」と招待を辞退(じたい)した。

「あなたは、そう言うと思っていました。でも貝を懸命(けんめい)に集めたのは、息子のチャコです。息子の気持(きも)ちを()けてくれませんか。」

 いつになく真剣(しんけん)なショウの(たの)みに、トポスも(ことわ)れない。

「じゃあ、チャコの気持(きも)ちを()けて、馳走(ちそう)になるとするか。」

 かなり強引(ごういん)ではあるが、ショウはトポスを寝処(ねぐら)に招いて貝を振舞(ふるま)った。


 今回の会議は、リュウビも(りゅう)の姿であるが参加(さんか)した。議長のショウは、()(さき)に鯛漁を防ぐ手段(しゅだん)として、考えてきた(あん)を出した。

「太郎の鯛漁を阻止(そし)する方法ですが、太郎があの地から()えるのが最良(さいりょう)です。そうすれば同時(どうじ)鯛釣(たいつ)(じゅく)消滅(しょうめつ)します。」

 そんなことは先刻(せんこく)承知(しょうち)。どうすればいいのかで(なや)んでいるのだと、シオンが不快感(ふかいかん)(あら)わにした。

結論(けつろん)として海の中に(さそ)()むのが良いと思います。私はその方法を考え、実際(じっさい)(ため)しています。」

 魚族(ぎょぞく)は、色めきたって身を()()し、ショウは考えてきた海への(さそ)()(あん)詳細(しょうさい)と、必要な準備(じゅんび)を説明した。

「ショウさんの提案は(だれ)傷付(きずつ)かずに、鯛漁の阻止(そし)実現(じつげん)します。もう時がありませんので、皆さんの協力(きょうりょく)(たの)み、成功(せいこう)させましょう。」

 リュウビは賛成(さんせい)し、さまざまな手配(てはい)了解(りょうかい)した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ