表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/259

第21話 戦乙女


「んー……まだダルいな……」


翌日――


目が覚めた俺の体は、まだダルさを訴えていた。


『おはようございます、クロード様』


「あぁ、ソフィア……おはよう」


「すぅ……すぅ……」


俺の首に腕を回したまま眠るルナを、優しく離しながらソフィアに挨拶を返す。

そしてルナの方を見て……


「こうして見ると……ほんとに子供だよな」


『そうですね……』


ソフィアは何となく複雑そうだ。

俺は、自分の首筋をポリポリと掻きながら……


「すまないな、ソフィア」


『何がですか? クロード様』


「いや……俺の中に閉じ込めているのもそうだが……魔王とずっと一緒に居るのは……気分が良いものじゃないだろ」


俺は神と魔の対立関係なんてよくわからないが。

最初にこの世界に来た時、一緒に居るのは耐えられないとか言ってたしな。


『その事はもういいのです。確かに最初の頃は……それはもう辛かったのですが……この娘も色々あったみたいですし……』


慈愛に満ちたような声で、ソフィアはそう言ってくれた。


「そうか……一緒に付いてきた女神が、ソフィアで良かった」


『クロード様……それは私も……』



「うん……?」


『いえ……何でもありません……』


何か言いかけたソフィアが言葉を撤回する。

少し気になったが俺は……


「ソフィアも何とかして、外に出してやりたいんだがな……神界に戻れるのなら神にでも何でも土下座するんだが……」


言ってて気づいたが、ソフィアがその神だった……


「ソフィア様ごめんなさい……」


俺はベッドの上で土下座した。


『ク、クロード様やめてください……そんな事はなさらなくて結構です』


「いや、すまん……つい……」


『私はもう、戻れたとしても……神界に戻るつもりはありません』


「え……?」


何故か信じられないことを言った。


「戻るつもりがないって……何でだ?」


『クロード様に、ずっとついて行きますから……』


まるで告白のような言葉を聞いたが……

俺の中から出られなかったら、まぁ……そうなるのか。


「大丈夫だ、絶対外に出れる方法を探すから。だからそんな事を言うな」


俺は安心させるようにそう言う。


『いえ、クロード様の外には絶対出たいのですが。例え出られたとしても……クロード様の側にずっと居ます』


「なぜ……あぁそうか……監視するのか……」


この力を見張るためだろうな。


『それもありますが……いえ……その通りです』


危険すぎる力だもんな。

ルナの話じゃ俺が危ないらしいから手放したくはないし。


「外に出られたとしても、あの神々しい格好じゃ……目立ちまくると思うんだが……」


『翼を消せば、大丈夫だと思われます』


消せるのかよ!? ビックリだよ!


「翼って消せるのか……」


『はい、消せます。そもそもあの格好は、演出として出していただけですから』


「演出……?」


『神王は元々翼が生えているわけではありません。転生者である人間を相手に、わかりやすく神として見せるために……戦乙女時代から使っていた力を使って、少しお洒落をしていただけです』


まさかの演出とオシャレ……

なんという……おちゃめさん。


「そ……そうか、確かにあの姿は……綺麗だったしな」


『ありがとうございます』


俺はまた首を掻きながら、自分の素直な感想を述べた。


「しかし戦乙女か……」


ワルキューレとかヴァルキリーとか呼ばれる存在だよな。


「それって、戦える人間を神の世界に連れて行くとか…そんな感じだったっけ?」


『その様な御方達の存在も聞いたことが有りますが……私はまた別の存在ですね』


「そうなのか?」


『はい、私の戦乙女時代の仕事は……クロード様には言い難いのですが……主に……魔族討伐等でしたね……』



何で俺に言い難いんだ……

あぁそうか……ルナのことか。


「別に俺は魔族に思い入れなんか無いぞ、ルナの事は好きだけどな」


正直にそう言った。


『……それに……』


ん? 何だ?

ソフィアが何故か言い淀んでいる。



『人間も……討伐対象でした……』


「なんだって……」


驚愕するような事を言われた。


「どういうことだ……?」


『神界を護る為です……』


「守る……ため?」


何故それが人間討伐になるんだ……


『神界には外部からの干渉を拒絶する為の、強力な結界が在ります……魔族からの進行を防ぐ為に作られた物ですが……』


結界か。


『むしろ魔族よりも……力をつけた人間の方が攻めて来る事が多かったのです。人間の争いに、私達は介入することが有りませんが……結界に人間の方が攻めて来れば……結界を護る為に私達は戦います』


なんだそれ……


「俺みたいな力を持った奴が、攻めて来るのか?」


『いえ、クロード様程の御力を持った方は……そこまで存在しません。私が知る限り、今まで人間に結界を破られる程の事はありませんでしたから』


そういえばこの力で、ルナは神界まで行ったんだったな。

結界を破った……いや無視したのか……

ソフィアが帰れないのは、結界が存在しているからだし。



ルナは、素通りで転生の聖域まで来たのか……

改めて考えると、やっぱりとんでもないな。



「結界が破れないのに、何で人間は攻めて行ったんだろうな……」


『何故……でしょうかね……人間にとって……神々の力は魅力的だったのかもしれません』


なるほど……そういう事か。



『私はその時の功績を讃えられ、大神王様に神王としての御力を頂きました。私はまだ神王としては若い方なので、幾ら御力を頂いたとしても……まだまだ未熟なのです』


若い方なのか……見た目は確かに若かったが。

女性に歳を聞くのは失礼だな……うん。



「そうか……まぁ色々と聞けてよかったよ。ありがとうな」


『いえ、私もクロード様に知って貰えて……良かったです。また……何時でもお話いたしますね』


「あぁ、その時は頼む」



「ん……ん……」




そんな話を終わる頃にルナが起きてきた――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ