第20話 心象風景
ギルさんに住む場所を提供されて、部屋も与えられたのに……
俺は部屋で落ち着くことが出来なかった――
「なぜ……貴女がここで寝るのかしら?」
「そんなこと当然だ……クロはワタシのものだからだ」
そう……現在俺の部屋で、アリスとルナが言い争っている。
俺と同じく別の部屋を与えられたのに。そこには向かわずに、俺の部屋で寝ようとしたからだ。
「認められないわね……」
『えぇ……認められませんね』
アリスの言葉に、何故か賛同をするソフィア。
二人の言い争いをどうやって止めようかと考えていたら、扉の所に誰かが居た。
エレンさん……?
エレンさんが扉の所でこっちを見ていた――
止めて欲しいんだが……あれ……?
エレンさんの表情がおかしい気がする二人の争いに困っているというより……
何故か俺を、ずっと見ている気がする……
物凄く美人なエレンさんに見つめられるのは光栄だが……
俺は何だかゾクッとしたので、エレンさんから視線をそむけて二人を止めることにした。
「落ち着けアリス、相手は子供だぞ……確かに一緒に寝るのは駄目だとは思うが……この世界に来てから、俺達はずっと一緒に寝てたんだ」
ずっと一緒とは言っても、異世界に来てまだ数日しか経っていないが……
「好きとかそんなんじゃなく……ルナも小さいから寂しいんだと思う」
「でも……この子は魔王じゃない」
「いや……それはそうなんだが……」
忘れそうになってたが、そう言えばルナは魔王だった。
「ルナ……貴女、歳はいくつ?」
「む……わからない……」
わからないのか……
この力のせいか……?
初めてこの力の事を聞いた時。時間も空間も関係ないとか言ってたしな……
「クロード」
「うん……?」
考え事をしていたら、アリスが声をかけてくる。
「一緒に寝てあげなさい」
「へ……?」
いきなり今までの態度を一変した、アリスの態度に戸惑っていると。
「別に変なコトをしないわよね……」
そう言いながらルナの方に視線を向ける。
俺もルナの方を見ると――
ルナが顔を伏せて、泣きそうになっていた。
「ルナ……?」
「…………」
ルナは顔を伏せたまま返事をしない。
何だ? 年齢の事を言われて落ち込んだのか?
アリスが悲しそうな顔をしているルナを見た後、俺に意味ありげな視線を向けてくる。
「ルナ……こっちに来い。一緒に寝よう」
「クロ……」
ルナは泣きそうな顔で俺を見た後、俺の胸に飛び込んできた。
「それじゃ、おやすみ……クロード、ルナ」
アリスは優しい顔をこちらに向けながら、そう言って部屋から出て行った。
アリスはやっぱり優しいな……
俺はルナを抱きしめながら、そんな事を思った――
「クロ……クロ……」
「うん? どうした? ルナ」
「クロは、わたしのことがきらい?」
「いや……」
嫌いじゃない……と言おうとしたが。
ルナの顔が余りにも悲しそうにしていたので、言い換えることにした。
「俺は、ルナの事が好きだぞ」
『…………』
ソフィアは空気を読んでくれていて、黙っていてくれている。
ルナは少し嬉しそうな顔をした後――
「としうえの、おねぇさんのほうがすき?」
「へ……?」
突然そんな事を聞いてきた。
確かに称号にはそんな事が書かれていたが……
ルナは知っていたっけ……
それにアレは多分、エレンさんに見惚れていたからだろうし。
そう言えばアリスも年上だったっけ……あの称号正確すぎるな。
そんな事を考えていると――
「やっぱりそうなんだ……」
ルナが悲しそうな声で、そうつぶやいた。
「いや、違うぞ! 確かに年上のお姉さんは好きだが……俺は年下の女の子も好きだぞ!」
慌てながらそう言う……
やばいな、何なんだこの言い訳は……言ってて節操が無いな俺……
「転生してから、好きになった年下の女の子は……ルナしか居ないけどな」
「ほんとに……?」
「あぁ……本当だ」
「クロ! クロ!」
俺の名を呼びながら、ルナが俺の首に腕を回し力強く抱きしめてきた。
俺はルナの背中を、そっと優しくなでた……
何故だろう……少し懐かしい気がした……
「さて、そろそろ寝ようか……ルナ、ちゃんと着替えるんだぞ」
「ん……わかった」
俺はそう言ってルナに背を向ける、創造魔法で服を創って着替えるんだ。
ホントに便利な魔法だこれは……
突然消えたら困るので、外出用の服は創ったことがないがな。
俺は適当な寝間着を考えて、それに着替える。
ソフィアは恥ずかしいそうにしていたが、もう何も言ってこない。
ルナはネグリジェを着ていた。
俺がベッドに入るとルナもおずおずと入ってきた。
なんだろうかこの態度は……
そういえばルナは口調が安定しないよな。
情緒不安定だとでも言うのか……
大人の様な感じで喋ったり、小さな子供の様な口調になったり。
夢でもそんな小さな女の子を見た気がするな……
「ん? そう言えば……」
「ん……?」
『いかがなさいましたか? クロード様』
俺の独り言にルナが首を傾げ、ソフィアが俺に聞いてくる。
「いや……色んな事があり過ぎてすっかり忘れてたんだが……確か夢を見たんだ……」
『夢ですか?』
「あぁ……えっと……」
あまり思い出せない……
くそっ、どうなってるんだ俺の記憶力は。
これもやはり転生時の影響なのか……
「あまり覚えてないんだが……俺じゃない誰かの……転生する場面を見た気がする」
『どういう事でしょう……』
「思い出せる範囲で思い出すと。その場面に、ルナもソフィアも出てこなかったけど……その……転生をしている奴が、俺とソックリだったんだが……」
『それは……おかしな夢ですね』
「だよなぁ……よく考えたらおかしいな……その転生する奴も神様も、クロって名前だった気がする……ありえないよな」
『夢というのは、一種の心象の幻覚のようなものですから。転生を経験なされたクロード様が……その経験を元に心象風景を、夢で再現なされたのではないでしょうか?』
確かにそれっぽいな……ルナとソフィアが居なかったのは気になるが……
「まぁいいか、所詮夢だしな」
「…………」
そんな事を言いながらルナの方へ視線を向けると――
何か考え事をしているようだった。
「どうした? ルナ」
「ん……なんでもない」
俺の顔を見ながらそう言った。
「そうか……じゃ、おやすみ」
「ん……おやすみ……」
『おやすみなさいませ、クロード様』
挨拶をして、俺達は就寝した――




