第19話 寄宿
風呂から出た俺はギルバートさんに呼ばれて、ダイニングルームへと向かっていた。
『クロード様……本当に申し訳ございません……』
「だから気にするな……俺も、もう慣れたよ」
『うぅ……』
ソフィアが俺に謝っているのは風呂場での出来事だ。
そう。普段から風呂に入らず部屋で体を拭いている時は、俺も気をつけていたから何とも無かったが……
風呂場では全裸だ、タオルで隠しながら入ろうかとも思ったが。
他人の家の風呂で、そんな事は出来なかった。
「心の中で目を瞑れないってのは……不便だよなぁ……」
『最初の頃は、クロード様の視線を共有しているだけでしたが……なぜか最近はクロード様が目を瞑っていても、視えるのですよ…』
「それはまた何とも……」
俺の体に馴染んでいるとかなのか……
ルナは俺の中でも寝れるんだよな。
そんな事を考えていると目的の場所に着いた――
「こっちよ、クロード」
アリスに声をかけられる。
その姿を見て俺は衝撃を受けた……
エプロン巫女だと……
ぐふっ……何だこの破壊力……
「どうしたの?」
「い、いや……その格好とても似合ってるっ」
「あら……ありがとう」
思っている事を、ストレートに言ってしまった。
「ぼ、坊主……とりあえず座れ」
「あ、はい」
複雑な顔をしているギルバートさんに言われ、俺は素直に座る。
「こんばんは、クロードさん」
「あ、こんばんはエレンさん」
食卓にはエレンさんも座っていた。
エレンさんは二人とどうゆう関係なんだろな……
ニコニコしているエレンさんに見惚れていたら――
「ぬ……」
「む……」
『うぅ……』
ルナとアリスに睨まれた。
ソフィアはまだ落ち込んでいるのか、よく分からない声を出していた。
そして俺達は食事を開始した――
やっぱり肉料理が多かったけど、魚料理もあるしサラダもある。
「どう? クロード、美味しい?」
「あぁうまい、特にこれが」
俺はビーフシチューみたいな物を食べながら舌鼓を打つ。
牛……なのか? 味はそのまま牛だが……
肉は柔らかく、口にいれて少し噛むだけですぐにとろける。
「よかった……私の自信作なの、いっぱい食べてね」
「あ、あぁ……」
何だろ……俺の横に座っているアリスの好感度が、ゲージを振り切っている気がする……
その反対側の俺の横に座っているルナと、目の前に座っているギルバートさんの視線が痛い……
その隣のエレンさんは少し驚いたような顔をしている。
色んな視線を感じながらつつがなく? 俺たちは料理を食べ終えた――
「坊主」
「はい」
食事を終えた俺は、まだ飲んでいるギルバートさんに話しかけられる。
アリスとエレンさんは食器を片付けにキッチンの方へ向かった。
ルナは片付けを手伝わないで俺の横にいる。
「アリスに言われたんだが……ルナの嬢ちゃんと一緒に……ここに住むか?」
「え……?」
「ん……?」
驚いている俺とルナに、ギルバートさんが続ける。
「実はな、普段から俺は色んな所に仕事に行っててな。家に居ることが結構少ないんだ」
「そうなんですか?」
「あぁ。アリスは毎日家に居るが……やっぱり寂しい思いをさせているんだ……」
普段どんな仕事をしているのだろうか……
「家政婦を雇うかと思った事もあるが……昔嫌な事があってな、雇はしなかった。あと執事だけは絶対駄目だ……ヤローなんかに任せられん」
昔何があったのだろうか……
まぁ聞ける雰囲気じゃないよな。
あと男はやっぱりダメなのか……
「まぁそんなわけで……だ。坊主、ここに住んでみないか?」
「えっと……いいんですか?」
「おうよ、むしろ住んでくれ……俺にはアリスを説得できん……」
う……
喧嘩になる場面が簡単に思い浮かんだ……
「俺としては助かりますけど……俺も男ですよ?」
「どこの馬の骨かわからん奴よりは……坊主のほうがいい」
やはりそれが前提なのか……
「わかりました。ルナと一緒にお世話になります」
「よろしく……」
ギルバートさんの厚意に甘える事にした。
「おうよ! これからは自分の家だと思っていいぞ。俺の事もギルと呼んでいい」
「はい! ギルさん、よろしくお願いします」
「よろしくな、坊主」
俺は坊主のままなのか……
「あーそれからこれは……注意事項だ」
「なんですか?」
「エレンには気をつけろ……」
「は……?」
アリスじゃないのか……
予想していなかった名前が出て来た。
「エレンが言ってたんだが……坊主は好みのドストライクらしい……」
「へ……?」
「なんだと……」
『どういう事なのですか……?』
俺とルナとソフィアが揃って驚いた。
「エレンはな、年下の男が好みなんだ……」
えー……マジでか……
エレンさんが、俺の事を好きだなんて聞いて嬉しいが…
というかギルさんとエレンさんって、恋人同士とかじゃないのか……
「ギルさんとエレンさんって……恋人同士じゃないんですか?」
「ぜんぜん違うぞ?」
なら何故一緒に住んでいるんだろうか……
「まぁエレンは男性経験が無いからな……滅多な事は起こらないと思うが……」
何でそんな事を知っているんだ……
俺がそんな顔をしていると――
「エレンとアリスが堂々とそんな話をしていたんだ」
なるほど……
まぁ、一緒に住んでいるからな。
そんな話を偶然聞いてしまっても、おかしくはない
「もちろん、アリスにもないぞ?」
それを聞いて、俺は普通にホッとした。
「とにかく、まぁそんな感じだ。三人の修羅場なんか、俺は見たくない……」
俺も、そんなものを起こしたくはない。
「だいじょうぶだ、クロはワタシのものだ……そんなことはさせない」
「え……?」
『違います!』
ルナの言葉を何故かソフィアが否定した。
「そ、そうか坊主はロリコンだったな」
「そのとおりだ」
ちげえよ……!
不名誉な称号が付けられていたが俺は否定したい……
ルナのことは嫌いじゃないが……
『幼女が好き…』
いや違うからな! ほんとに違うからな!
俺は誰に向かって言い訳しているのかわからなくなっていた――




