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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
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三成とりんの側室認識

ものすっっっっごく間が空いてすみません!!!

側室貰ってからの話が長々と続いてますが、この回は書かないと今後の展開が変わってきてしまいますので・・・

次回からはなるべく間があかないようにしたいなぁと思ってはいます。

ある意味で、側室を持つことに対して一番冷静だったのは三成だった。


三成は地位も身分も低いのに、秀吉の側近としてかなり重要な位置にいる。

仕事内容が地位や身分と釣り合っていないほどの有能ぶりを見せているが、なまじ出世をすると気軽に動き回れず、今までの様には仕事をこなすことができないため、あえて現状維持で。と秀吉に直接説明された。


三成自身も自分が地位や身分を貰うとしたらよほど時機を見ないと難しいだろうなと思っている。

下手に出世すると秀吉が高齢のため、彼の死後、世継ぎの後ろ盾に確実になるであろう三成に権限を与えるためだと勘繰られてしまう恐れがある。

例え彼が当分死なないであろうぐらい元気であっても、実は――?なんて考えられて裏切りなどの暴挙に出られたらたまったものではない。


三成に対して今のうちに側室をこちらの意思を無視して持たせることで、地位や身分の低さを思い知らせ、くぎを刺しに来たか、はたまたつながりを持たせることで秀吉の次の代に有利になるようにということか。


側室だと送り込まれてきた娘は、どこにでもいそうな普通の娘だった。

政治的な思惑でもって送り込まれてきたのならば別に有能でなくても構わないだろうからな。と納得した。

この娘が重要なのではなく、三成が政治的やり取りに屈して側室を取らざるを得なかったという事実が重要なのだから、失っても問題のない娘が送り込まれたのだろう。

まぁ何らかの理由で娘が死んだりなどしたらこちらが叩かれるだろうが。



三成は側室騒動を冷静に受け止め、政治の駒として使われた娘を憐れみ、せめて誠実に対応しようと考え、「末永い付き合いになるだろうからよろしく頼む」と頭を下げ、その対応に受け入れられるかどうかをまず心配していた相手も驚いたが、それなりにいい印象で初対面を終えた。

その後もできる限り誠実に向き合おうとはしたが、側室を得たからといって仕事が少なくなるわけでなし、(それどころか側室を得たことによりそれに伴う雑事が増えた)側室はおろか正室とも顔を合わせない時もあるほどの忙しさで日々は過ぎていった。

そんな状況に機嫌を取ろうという余裕もなく、また三成にはそもそもそんな発想がなかった。





一方のりんは戦国と平成の価値観の違いを改めて思い知っていた。

この時代では側室を持つことが普通であり、親しくしている女性たちの中にも同様に夫に側室を持たれている人もいるが、その人自身が側室であることもあり、一夫多妻制に対する愚痴をこぼすことすらままならないのだ。

ましてや政治的思惑が絡んでいる以上、愚痴をこぼされた相手も困らせてしまう。

同意しても窘めても、他家への内政干渉となりかねないので聞かされた相手も困るだろうし、愚痴を言うということはりんが秀吉の命令に対して不満を覚えたということだとされてしまう。

そのため側室を持つことに対して、家中でならばともかくだが愚痴を言うことすらはばかられるのだ。


そして何より、この時代の女性にとって結婚とは愛だの恋だのといったものではない。

就職であり、女の戦いの場だ。

自分の生家や一族、または嫁ぎ先が安泰であるようにするために立ち回る。

そのためには寵愛を得、立ち位置を確立し、世継ぎとなる男児を産む必要がある。

家督争いの裏に女の、特に正室と側室の争いが垣間見えるのは戦乱の世の女の戦場はそこだからだ。



そんな戦国の結婚事情もあり、りんの三成が側室を持つということに対する不満はそもそもあまり共感を得なかったし、根本的なところで理解がされなかった。

何せりんはすでに三成の正室として地位を確立しており、男子も出産している。

また、三成の性格からして側室がいくら美しかろうとも、それで彼を虜にするのは無理だと彼を知る女性たち、というか秀吉の側室たちは鼻で笑った。

秀吉の側室たちは美人ばかりで、その自分たちにも興味を示さなかった男が、天下人にと選ばれなかった程度の女に興味を示すはずがない。と。

故になんでりんが不安に思ったりする必要があるんだ?という反応で、不安に思うという発想がそもそもなかった。

まぁりんは三成をそれはもう愛しているので、不満に思うだろうな。とは思ったが。




りんも三成に政治的圧力をかけるためと、情報を得るために政略結婚という手段がとられたのだときちんと理解している。

何せ忙しく働く彼は九州から東北まで動き回り接触する機会を持つのも難しく、堅物すぎて反感を買っているため下手に近付くと目立ち、部下から取り入ろうとしても家臣たちは偏屈な彼を承知の上で仕えているためなかなかにガードが堅い。

送り込むのが使用人程度では無理だろうということになったのは想像に難くない。

側室を持つことを受け入れたのもはねのけた後のことを考えると受け入れた方が政治的は判断としてマシな結果になるだろうと合理的に考えた結果であり、三成自身が望んだわけではないということもわかっている。


ただ単にりんは三成は自分に嫁いできた以上、相手には誠実に対応するだろうし、それによって相手が三成に惚れないかが心配なだけだ。



そんなことを思っていたのだが、嫁いで側室はりんが戦国の世に生まれて以来初めてといってもいいタイプの女性だった。


政略結婚の駒として働く女性だという認識で会ったせいもあると思うが、今生でりんが身近に接している女性たちが道は自ら切り開くタイプというか、道がなければ作ればいいのよ!という女傑たちばかりだったので、嫁いでくる女性もそういうタイプだと思ったのだが、会ってみたら何というか普通の女性であったのだ。


比較対象が悪いのだとはりんもさすがにわかっている。

何せ天下人の寵愛を争う女性たちはいずれ劣らぬ女傑ぞろい。

それと比べてはかわいそうだとは思うが、秀吉を恐らく押し倒してその寵愛を手にしたのであろうと思われる茶々は幼少の頃からその片鱗を見せていたため、その頃と比べても普通の女の子にさえ思えてしまい、恋敵でありながら応援したくさえなってしまうのだ。


まぁそれは彼女がりんにとって敵になり得ないからだともいえるが。

命をかけての忠誠でこちらに来たのならばもっと警戒したが、盲目的なまでの狂信的な崇拝ぶりでもなく、必死で考えて自分たちが永らえるために動く程度ならば敵にはなり得ない。


一生懸命お家のために、一族のためにと頑張る姿は好ましくさえ思えるし、三成の誠実な態度にときめく様はそうでしょう!三成さまは素敵でしょう!!とその人をみえる目を褒め称えたいくらいだ。

この時代の価値観が根っからしみ込んでいるため、正室である自分に対して強気で来れないような小娘一人をりんは恐れたりはしない。

そんな普通の女が、愛した男の――三成のために命を懸けることを恐れたのだ。


もしも三成のために彼女が死ねば、三成は一生彼女を忘れない。

それはりんにとって最も避けたいことだ。

そして恐らく三成の下に嫁いできた女性は、命令と三成への想いで揺れた結果、死を選べる女性だ。


女は男のように世のため仕える人のために命はかけられなくとも、愛する相手のためならば命を懸けられる。

女傑でなくとも。



「仕方ないわね」


はぁと溜息を吐いて、りんは側室という存在を受け入れることを決意した。

ただし三成の敵に回るのならばその時は躊躇わないだろうと思いながら。

そう思って、自分もすっかりこの時代に馴染んだなと感じたが、浮気した彼氏を酒瓶で殴った平成時代の友人や惚れた相手を手に入れるための手法を狩りと称した友人の姿を思い出し、時代が変わっても人間ってそんなに変わらないものね。と思い直した。


女傑に囲まれているりんにとって、普通の女の子は天然記念物並の希少な存在なのです。

お姉さんはおっとり系なのでちょっと違いますが、元気に暴れる夫を「あらあら楽しそうね」で済ませるので、普通の女性ではありません。

ちなみに女傑系が来たら戦う気満々でした。

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― 新着の感想 ―
戦国時代の話ですが、重くなくて楽しく読めました! 続き読みたいです〜!!!
ここからがいいとこなのに。
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