#18
ヴヴヴヴ…ヴ…………ッ!!
大気を連続的に素早く振動させる耳障りな低音が聞こえてくるのであった。
羅刹の右手に微弱なオーラが集中し…みるまにギラリと鉤爪みたいな鋭利な形状へと変わっていく。
恐らく…能力者の影人には、さほど効果が無さそうな術だが光透波の柔らかな乙女の肉体を骨ごと…ズブリと貫き、ザックリと引き裂くには十分過ぎるオーラであろうと推測できるのだった。
「ファハハハハハッ…!!!!
女ァ…ッ、オマエに恨みは蚊ほども無い!
しかし残念だが今日が命日だ!
ヌァッ、死ね~ェェッ!!」
羅刹の怒号と共に光透波へ向けて、大きく腕を振り下ろしたのである!
…………………………………
斬…ンッッ…………………………………!!!!
ザシュウゥ……………………………ッッ…!!!!!!
…………………………!!!
…ッ…………………!!!!!?
羅刹が…ジタバタと抵抗する光透波を確かに掴んでいた感覚ごと左腕がまるごと無くなっていて、鉤爪のオーラを纏った右腕は何もない空間を虚しく切り裂いただけだった。
羅刹の左腕と光透波は…紅い月に照らされていて上空高くを優雅に舞っていたのであった。
……………………なッ!!!?
あの瞬間に影人はギュンッと…一足飛びに間合いを詰めると羅刹の懐にサッと飛び込んだのであった。
いつのまにか取り出した炎の剣で…いとも簡単に羅刹の左腕を吹き飛ばすように強烈な破壊力で斬り上げていたのだった!!!!
影人は…ヒュ~~~~ッと上空から引力によって自由落下してくる光透波を両腕を大きく、バッと広げて、落下地点を的確に見計らいながら、しっかりと大事そうに抱きかかえるのだった。
影人は…そっと顔を抱き寄せて、はにかみながらも一言…ぽつりと耳元で囁くのであった。
「ヘヘッ…悪りぃ~な!待たせちまったか!?」
…………………………ッ!!
その声に…ハッとして光透波は気付くのであった。
いつも彼女が好きな何て事はない普段の生意気な影人が戻って来た事に………!!
「ねぇ…影人なんだよね?
いつもの影人なんだよね!?」
どうやら…影人は暴走していた頃の大半の記憶が無いらしく…彼女の質問の意味を理解できずに間の抜けた答えをするのである。
「…ッ…………え…ぇ…!?
………………………!?…!?
うん…まぁ、いつもの影人ですけど………なにか…
つーか…光透波、お前さ…少~し太ったか?」
光透波は、多少怪訝そうな表情になりながらも…突拍子も無い影人のボケっぷりに思わず、自然とプフッと笑いが溢れるように込み上げてきて、吹き出しそうになるのであった。
それくらいに…まったくと言って良い程に、普段通りのデリカシーの欠片も無い、乙女心なんてモノがさっぱり理解出来ない…いつもの影人がそこにいたのであった。
光透波は…ギュ~~~ッっと温もりや匂いを確かめるように影人の背中に腕をまわしてハグをする。
名残惜しそうに腕を振り解くと、影人の胸を両手でポカポカと肩たたきでもするみたいに小刻みに叩きながら涙した。
「バ…バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ影人ォォ~~~ッッ!
ほんと…本当にバカなんだからぁ~!!
ふぇぇ……心配したんだよぉ~ッ…!
いっぱい…いっぱい、い~っぱい心配したんだからァ…………
私を…こんなに心配させたんだから、あとで必ず美味しいモノ…ご馳走してよねッ!!
じゃなきゃ…ぜぇぇぇ~~~ったいに許さないんだからぁッ!!!!」
…………………………は
今だに状況を理解しきれずに、ただ心配かけたのは事実らしいので…それを肌に感じた影人は渋々、返事をすることにした。
「ううん~ッ…わ、わかったよ!
光透波の好きなモノを何でもおごってやるよ!
あ、なるべくなら安いのな………アハハ」
光透波に向けて…ニコリと優しく笑ってみせる影人であった。
一方、あの瞬間…羅刹には何が起こっていたかというと…………




