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図書館の自動ドアが開く。
いつも通りの時間。
いつも通りの空気。
視線は、自然にカウンターへ向かう。
……あれ。
違う人だ。
一瞬、足が止まる。
すぐに理由を探す。
シフトか。
別に不思議じゃない。
毎日いるわけじゃない。
それくらい、分かっている。
席に座る。
鞄を下ろす。
資料を開く。
集中できないわけじゃない。
ただ、なんとなく落ち着かない。
カウンターの声が違う。
高さも、間も、テンポも。
それだけだ。
それだけなのに、妙に耳に残る。
ページをめくる。
数式を追う。
十分後、顔を上げる。
意味はない。
ただの癖。
そこにいないことを、もう一度確認する。
……いない。
何を確認している。
小さく息を吐く。
別に、会いに来ているわけじゃない。
資料の続きだ。
それだけ。
なのに。
今日は、早めに切り上げようかと考えている。
理由はある。
集中力が落ちている。
効率が悪い。
それだけだ。
本を閉じる。
返却する。
カウンターに立つ。
違う声で「ありがとうございました」と言われる。
それを聞きながら、思う。
篠原さん。
無意識に名前が浮かぶ。
今日は、いない。
それだけ。
それだけなのに。
外に出ると、空は晴れている。
雨は降っていない。
なのに、少しだけ静かすぎる。
明日はいるだろうか。
……いや。
そんなこと、
気にする必要はない。
それでも、次に来る日を
少しだけ早めようとしている自分がいる。
気づかないふりをしながら。




