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「今日は俺が甘やかす」


そう言って腕を回そうとした時


そのまま、朱里が先に動いた。


悠の腕を取って、自分の腰に回させる。


「え」


「そのままで」


そして。


こてん、と悠の頭を自分の肩に預けさせる。


「……朱里」


「動かないでください」


声は小さいのに、少し強い。


「今日は、私が」


指先が、そっと悠の髪に触れる。


撫でる。


ぎこちないけど、丁寧。


「お仕事、お疲れさまでした」


胸の奥が、静かにほどける。


言われ慣れない言葉。


会社では言われない。


家族でもない。


恋人にだけ許される声音。


「別に」


反射で否定する。


でも声が弱い。


朱里は知っている。


「ちゃんと頑張ってるの、知ってます」


ゆっくり、指が動く。


頭を撫でられるなんて、いつぶりだろう。


気づけば目を閉じている。


だめだ。


これは。


甘い。


「……お前」


「はい」


「俺が甘やかすつもりだったんだけど」


「だめです」


「今日は、私が」


胸がじわっと熱くなる。


たまらなくなって、身体を起こす。


朱里がきょとんとする。


そのまま、今度は悠が引き寄せる。


「じゃあ交代」


「え」


「半分ずつ」


朱里の頬に手を添える。


親指で、そっとなぞる。


「甘やかされるの、嫌いじゃないけど」


小さく笑う。


「でも一方通行は嫌だ」


額を近づける。


身長差で少し屈む。


「朱里も甘やかされろ」


顔が一気に赤くなる。


「わ、私は…」


「無理して強がるな」


今度は悠の番。


背中を撫でる。


ゆっくり。


一定のリズムで。


「会いたかったんだろ」


小さく頷く。


「俺も」


短く。


でも本音。


朱里の手が、ぎゅっとシャツを掴む。


離れない。


離さない。


静かな部屋。


時計の音。


呼吸が重なる。


「……悠さん」


「ん」


「好きです」


直球。


不意打ちに


理性が再び揺れる。


でも今度は焦らない。


唇を落とす。


軽く。


優しく。


長くはしない。


離れて、額をこつん。


「俺も」


それだけで十分。


抱きしめ直す。


さっきより深い。


でも穏やか。


守るとか、守られるとかじゃない。


並んで、包み合う。


日曜は、外に出なくてもいい。


二人でいるだけで、ちゃんと進んでる。




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