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百合カップルを眺めるモブになりたかっただけなのに。  作者: 蒼風
Ⅱ-Ⅴ.メイドとパフェと、時々恋人
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81.サイズも味もスペシャルな一杯。

 改めて思う。世界は広い。


 自分の手元にあるアイスコーヒーを眺めながら俺は、人生の意味について考え込んでしまう。


 どうしてこのコーヒー一杯が四桁近い値段をしているんだろう。世の中というのは不思議なものだ。要するにサービス料ということだろうか。


 元の世界ではこういった世界に興味を持つことは最後までなかったけど、持たなくて良かったと思う。多分お札が羽根をはやして飛んでいったに違いない。


 そんなハイパーインフレの中でなお、上位に君臨しているのが、今俺の目の前にあるスペシャルパフェだ。


 確かに、スペシャルだなと思う。


 器のサイズもそこそこだけど、その入っているフルーツやトッピングの種類。そして、それらが綺麗に調和する盛り付けは、簡単に見えて結構難しいはずだ。


 元々はカップル限定で販売していたものだが、あまりの人気に最近はその不文律も崩れ去り、かわりに「仲のいい二人組」という条件が最終防衛ラインのように存在しているらしいのだった。


つまるところ俺はその「二人組」を達成するためにここに連れてこられた、というわけだ。そのため代金は虎子(とらこ)持ちだ。


いや、別に手持ちに不安は無いんだけど、本人が持たせてくれといっているのでお言葉に甘えることにした。多分虎子は虎子で懐が温かい側だろうしね。


 そして、改めて思うのだ。


「よく入るね……」


 そう。


 スペシャルということは、その量は当然それなりにあるわけで、いくら少し時間がたっているとはいえ、デカ盛りのラーメンを食べた後に食べる者でないのは間違いない。


 大盛にしなかった俺ですらその感想なのに、大盛マシマシだった虎子はといえば、目の前のデザートに目を輝かせている。胃の中に何か住んでたりしないよね?赤ん坊を乗せた恐竜とか。


 そんな俺の感想に虎子はさらりと、


「甘いものは別腹だからな」


 仲がいいなと思った。


 美咲(みさき)も似たようなことを言っていた。幼馴染は思考回路まで似るんだろうか。


 そこまで考えが近いなら、案外ここに誘っても普通に来てくれそうな気はする。それで「あーん」とかするんだ。その役目は虎子でも美咲でも構わない。ぶっちゃけどちらもいまいち踏み込みきれないタイプだから、攻めと受けは頻繁に交代してもいいと思うんだ。リバを許さない原理主義者には怒られそうだけど、俺はそういうのには寛容なんだ。ふふ、二人で来るときは教えてね?


 虎子はさらりと、


(はな)も食べるだろ?」


 と聞いてくる。まあ、確かに、興味自体はある。これを全て食べろと言われたら今すぐ全力ダッシュで逃げ出すレベルだけど、ちょっと分けてもらうくらいなら全然オッケーだ。ここまでに食べてきたものの量を考えると立場は逆な気がするけど、気にしたら負けだ。 


 なので、


「あ、うん。ちょっと貰っていい?」


 と言いつつ、手元にあったスプーンに手を付けると、


「ん。それじゃ、あーん」


 と、虎子がパフェを“自分のスプーンで”すくって、俺に向けてきた。


 思う。


 どうしてその積極性と、無自覚たらしは美咲に発動されないんだろう。いや、違うな。意識してるから、無自覚が自覚になっちゃってるから、発動しないんだ。可愛いね。


 まあいいや。一応間接キスにはなるけど、俺が気にすることはない。と、いうか、俺が指摘なんてしようもんなら、それこそ無自覚が自覚に変わって大変なことになってしまう。今にも崩れ落ちそうな橋だって、その事実を知らなければ案外あっさり渡れてしまうのと一緒だ。


「あーん」


「ほい」


「ん」


 美味しかった。


 見た目の豪華からすると、もうちょっと甘ったるいかと思ったけど、そんなことはない。甘さ自体は控えめで、食べやすい。


 もうちょっと甘い方が好きという人もいるかもしれないけれど、このサイズを考えると、このくらい軽やかな方がいいのかもしれない。後、フルーツが上手い。こんな美味しいバナナ食べたことない気がする。


 虎子がそんな俺を眺めながら、


「美味いか?」


 と聞いてくる。俺は素直にうなづき、


「美味しいね、これ。なんか、虎子が食べてみたかったってのが分かった気がする」


「そうだろそうだろ?へへっ、分かって貰えてよかったぜ」


 そう言ってにかっと笑う虎子。所謂イケメンスマイルってやつだ。顔が良いってのはずるいもんだ。こうやって爽やかに笑うだけでちょっとどきっとしてしまうじゃないか。いや、俺も顔は良いはずなんだけどね。それはまあ、横に置いておこう。


「よし、次はこの辺行ってみよう」


 と言いつつ虎子がパフェをスプーンですくい、俺に向けて、


「はい、あーん♡」


 なんだろう。


 デートっぽい甘酸っぱさと、餌付けが半々に入り混じった感じだ。そして、どちらも大変に心地が良いのがよろしくない。抜け出せなくなりそうだ。


 俺は再び虎子から差し出されたスプーンに口をつけて、パフェを食べ、


「うん、美味しい」


 とコメントをすると、


「それ、間接キッスですね~ヒューヒュー」


 と茶々を入れられた。


 俺と虎子がほぼ同時に声のした方を向くと、


「あ、メイドさん」


「ども~メイドさんで~す」


 そこには笑顔のメイドさん(人気ナンバーワン)が立っていた。

次回更新は明日(12/24)の0時です。

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