表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合カップルを眺めるモブになりたかっただけなのに。  作者: 蒼風
Ⅱ-Ⅴ.メイドとパフェと、時々恋人
88/137

80.????「横ぴぃ~す!」

 良い子の諸君。覚えておくといいよ。相手が誰であったとしても「なんでもする」というワードは禁句だ。使っちゃいけない。これに対して言質を取られた挙句、セクハラまがいの行為を強いられることだってある。だから、使っちゃいけない文言なんだ。いいね?お兄さんとの約束だ…………ん?お姉さんか?


「なに…………ここ」


 開いた口がふさがらなかった。リアルな意味で、だ。


 俺と虎子(とらこ)がやってきたのは所謂メイド喫茶というやつだった。


 渋谷という、どちらかというと対極にありそうな街にこんなお店があるのも意外だったけど、そんなところに虎子が行きたいと言い出すのはもっと意外だった。


 ちなみに店舗の名前は「ふぁんしぃ♡さんだー」だそうだ。なんでも本格喫茶店のオーナーが血迷って出したセカンドブランドのような立ち位置らしいのだが、これがなかなかどうして人気らしい。


 喫茶店ではぐくまれたコーヒーや料理は、そんじょそこらのチェーン店では出せない味わいで、喫茶店店長の夢とロマンという名の十八禁上等の犯罪まがいのアイデアを、全年齢対象にマイルドにしたコンセプトはピンクを基調にした店内の内装や、様々なサービスにもふんだんに取り入れられている……らしかった。


 らしいというのは、これらは全て虎子から聞いたことだからだ。なんか俺の周りこういうディープな趣味を持ってる人多くない?


 俺の反応を見た虎子は流石に恥ずかしくなったようで、頬をかきつつ、明後日の方向に視線を泳がせ、


「い、いや。ここの、ね。カップル限定メニューが、評判で。それで、ずっと気になっていたっていうか。うん。ほら、俺一人だと、無理じゃん?ね?」


 何が「ね?」なのかがさっぱり分からない。


 俺たちが入り口付近でそんなやりとりをしていると、ひらひらのエプロンに身を包んだメイドさんが、


「おかえりなさいませ~お嬢様。お二人ですか~?」


 と、応対してくれる。虎子が、


「あ、はい」


 と慣れた様子で受け答えする。ひらひらのメイドさんはそれを聞くと、


「かしこまりました~それではお席にごあんな~い」


 と言いながら、俺たちを先導してくれた。なんだか全体的にふわっとした雰囲気の人だ。


 席に着くまでの間に虎子がこっそりと、


「あの人、一番人気なんだよ」


 と教えてくれた。いや、そんな情報を貰っても……



               ◇



 席に着いた後も凄かった。


 先ほどのメイドさんが注文を取りに来てくれたのだが、この手の店に入ったことのない俺はしどろもどろで、大体の対応は全て虎子に丸投げしてしまった。


 当の虎子はといえば、びっくりするほど慣れていた。


 と、いうか、どうやらメイドさんに顔を覚えられているようだった。


 最後にカップル限定スペシャルパフェを注文すると、メイドさんが、


「もしかして、彼女さんですか~?」


 といじられて、なんともはにかんだ様子で「そ、そうです」と答えていた。うーん……自分で言い出しておいてなんだけど、これは見るべきではなかった気がする。俺の中にあったカッコいい九条(くじょう)虎子像がガラガラと音を立てて崩れていく。


「ごゆっくりどうぞ~」


 メイドさんはそう言うと、横向きにピース&ウインクをして去っていった。なんともあざとい。だけど、可愛いから悔しい。俺には、あれは出来ない気がする。


 と、そんなことを考えていたら、虎子が、


「うう…………引いた、よな?」


 と、縮こまっていた。今度は体感いつもの三分の一くらいに見える。忙しすぎる。と、いうか、覚悟を決めてここに連れてきたんじゃなかったのか。


 俺はなんとなく意地悪がしたくなって、


「引いてはないけど……イメ―ジとは違うかな」


「ざくっ」


 刺さった。心にぐっさりと行ったみたいだ。でも、それは紛れもない事実だからなぁ……


 俺はさらに聞き出すようにして、


「でも、カップルっていうんなら、美咲(みさき)じゃ駄目だったの?」


「それは駄目!」


 駄目らしい。虎子は続けざまに、


「駄目だよ、美咲は。うん。駄目なんだよ。ともかく駄目!」


「あはは……」


 何が駄目なのかがさっぱりだ。


 だけどまあ、言わんとするところは分かる。美咲は虎子に対して結構幻想を抱いている節があるから、こんなところを見せたら解釈違いで機能停止を起こしてしまいそうだ。


 俺は話題を変えて、


「ここっていつも通ってるの?」


 それを聞いた虎子は膝を抱え込むようにして座り、


「……シテ……コロシテ………」


 とどめを刺してしまったみたいだ。


 そこまでダメージを受けるなら提案しなければ良かったんじゃないかとも思わなくはないけど、俺がアニメ○トに行ったときに同じ反応をされたら、やっぱり今の虎子みたいになる気がするので、言わないでおく。許容範囲が広い人って、自分の趣味に対して引かれたりすると、想像以上にダメージを受けるからなぁ……


 俺は補足を入れるように、


「あ、別に変とか、そういう話じゃないんだよ?ただ、ちょっと気になっただけで」


「ざくっ」


 ざっくりと行ってしまった。


 困った、こうなってしまうともう対応のしようがない。


 ……メイドさん、早く来てくれないかなぁ……

次回更新は明後日(11/23)の0時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ