悪魔の世界
―――――はぁはぁはぁ、なんだよ、こいつ!
俺は今ゴミ箱の裏に隠れている。あの悪魔男が急に掴もうとしてきたからだ。俺は間一髪よけたが、そのあとも追ってきやがったんだ。それで俺はアドレナリンがでている体を必死に動かしてここまで来たって訳だ。今はなんとか諦めて帰ってくれるのを願うだけだ。あとはこの生臭さをどうにかしてくれってことくらい。
「おーい、なにもしないから出てきてくださいよぉー」
ねっとりとした話し方だ。男が近くまできている。コツコツと地面と靴があたる音一つ一つに体が反応している。激しくなっていく心臓の音が分かる。
「どこかなぁ、こっちかなぁ」
よし、音が小さくなっていってる。もう少し遠くへ行ったらその隙に逃げよう。俺が心の中でガッツポーズをしたその時だった。
「ミーつけたぁ」
ねっとりとした熱い吐息が右耳に吹きかかる。右へ顔を動かすと目と鼻の先に奴の顔があった。
嘘だろ!物音一つ立てちゃいないんだぞ!なんだってばれたんだ?
そのまま俺の首は捕まれ、ひょいっといとも容易く俺の体を宙に持ち上げる。
「かくれんぼ楽しかったですよぉ。久しぶりにこんなワクワクした遊びをしました。」
「ふっふざけ…るな……!」
俺は体を揺らして抵抗するが、奴の手が緩まる気がしない。
「止めた方がいいですよぉ。もし仮に貴方が私の縛りから解放されるとしてもその時はきっと貴方の首はないでしょおねぇ。いやでも、それもまた一興ですねぇ。」
男は恍惚とした顔で言った。
狂ってやがる。人を殺すことに何の躊躇もないやつなんだこいつは!
「あっそうそうメイドの土産ということで無知なあなたにここがどこか教えてさしあげましょう。」
男は俺の首にかける圧力を少し緩めた。何か喋ろということだろう。
「ここがどこかって…、そんなこと説明されなくても」
「やはり、迷い人ですか。たまに貴方みたいな人がいるんですよ。『人間の世界』から『こちらの世界』に来る方がねぇ。」
「こちらの世界……?」
「えぇ、『こちらの世界』。貴方がたの中にはこんな言い方をする人もいますねぇ。『Devil world』とねぇ。」
全くもって言ってることが理解出来ない。こいつはなにを言っている?デビルワールド?悪魔の世界?中二病なのか?
男は俺のことを気にも止めず喋りだした。
「普段は《《あの方》》に統制されてますからねぇ。人に会うのは私も久しぶりですよ。でも私は運がいい!あの方が不在の中人間に会えるなんて。久しぶりにおいしいご飯が食べられそうです。」
「お前狂ってやがる……!」
「ははは、あなたから見れば確かに狂っているように見えるかも知れませんが、私達から見ればこれは普通だっ《《た》》んですよぉ。
それでは長話はこれくらいに、残念ですがここらへんで終わりにしましょうか。」
そう言うと男は急激に首を掴む力を強くした。
くっ息が出来ない。……苦しい。肺が空気を求めている。
「あぁぁぁ!いい!いい!!!!あなたの苦しみ・絶望が体の中に染み込んでいく!!!!やはり人間は格別だぁぁ!」
男は狂ったように体を揺らし快楽に溺れているようだった。男は俺の意識が飛びそうになると空気を吸わせまた握る力を強くする。そんなことを何度も繰り返していた。
「かは!はーはーはー!」
「それじゃ次は体を料理をしましょうかぁ。」
次の瞬間男の爪が俺の肩を切り裂く。
「かっ……うぁーーー!」
熱い。痛い。熱い。まるでナイフか何かで切られたみたいだ。血が溢れているのが分かる。暗闇でよかった。
そのあとも飽きず男はジュクジュクと俺に傷をつけていった。男は一度一度叫びながら体をクネクネさせていた。
あぁそうなんだこいつには俺が食べれるおもちゃとしか見てないんだ。それはどこか恐怖に揺れる心の中でストンと納得ができた。
男は慎重だった。まるで気を失わないギリギリを探りながらやっているようだった。人生で初めて気を失いたいと思った。
俺はもう何も考えられなかった。だから思ってることも素直に口から出た。
「助けて……くださ……い。助け……て。」
言ったあと馬鹿だと思った。俺の命乞いなど男にとっては
「いいねぇ!いいねぇ!君いいねぇ!!こんなにやっても壊れないなんて私をどれだけ興奮させるんだ!君は!もう!いいかなぁ!殺してもいいかなぁ!!」
男にとってスパイスでしかないのだ。




