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よかったとは思うけど・・・ねえ。

書いてあるのに投稿する気分じゃなくなる現象はなんなのか

彼女はタクシーに乗った時から失神しており、小さく呼吸をしていなければ死んでいると言われてもおかしくない青ざめた顔をしていた。


先に連絡はしておいたため病院へ着くなり速攻で手術室へ。

駆け足になりながらの医者と男の子との会話で、彼女の名が「さつき」と知る。


待合スペースで男の子と二人取り残されたが、軽快な会話などできるムードではなかった。

ただ、男の子はとてもしっかりしているようで、時間は経っていたがこちらにお礼を伝えてきた。


「あの、ありがとうございました。連れてきてくれて」

「いや、当然だよ」


ああ偉そうな言葉が出てしまう。いつも通りの会話ができないことから、自分も動揺していることを知る。

会話が止まってしまうと気まずい空気が戻ってくるので、なんとか続けようと試みる。


「彼女、どうしてあんなけがしたの?」

「…」


やってしまったようだ。ピンポイントに聞いてはいけない部分を掘り当てたらしい。心配りができないこういうところが彼女が出て行った理由だと思う。反省しよう。

再び姿を現した気まずい空気を振り払うため、もっとも適当なワードを探る。


「えっと、まだ君の名前を聞いてなかったね」


そう、自己紹介である。


「あ、すみません、僕、レイって言います。倉井レイです」

「レイ君だね、私は…」


疲れた様子はあれどハキハキとした口調でしゃべる男の子。自己紹介を返そうとしたところで、ふと気づく。


「ん?お姉さんがさつきで、弟がレイ…」


あ、もしかしたらこれあかんやつだ。想像だけどこれ、妹ができてたらメイってつけてたパターンのやつだ。さらにこの流れでの自己紹介はこちらとしてもまずい。回避を図る。


「私のことはお兄さんと呼びなさい」

「え、はい、お兄さん」

「はい、よろしく。」


素直ないい子だなぁ。おそらく弟好きな人には「生意気な弟」派と「子犬な弟」派が二大勢力としてあると思うが、後者にとってはたまらない存在だろう。


「もう少し聞いていい?お父さんかお母さんに連絡取れる?」

「お父さんもお母さんも、いません」

「あ~、ごめん、答えたくないこと聞いて」

「大丈夫です。お姉ちゃんがいるんで」


だからその姉が大変な事態だから保護者を聞きたいのだよ、少年。


「だれか保護者、えっと連絡できる知り合いはいる?」

「いえ、日本に来たばかり、誰も…」

「日本に来てどこか行くところなかったの?」

「…」


ここが地雷か、なるほど。お姉さんのケガの原因を聞いた時にも答えられなかったから、関連はあるのだろう。日本で最初に会うはずの相手と関係してケガを負ったと仮定しておこう。また勝手に想像。


「ごめん、答えたくないならいいよ」

「すみません」

「最後に一つ重要な質問なんだけど、、、警察に来てもらう?」

「…だめなんです、ごめんなさい」


そもそも救急車を呼ばなかったことからも何となく察していたが、いろいろまずい状況になっているらしい。


ここでとるべき対応とはどれだろう。

 ① とりあえず手術が終わるまでいる

 ② 放置して帰る

 ③ 「現実は非情なのだ」と、警察を呼ぶ


まぁ、かわいそうだけど②だな、と考えていたら女性の医者がこちらにやってくる。図らずも①になってしまったか。なんだかんだでかなりの時間が経っていたようだ。


「先生!お姉ちゃんは!?」

「大丈夫です。痛みで失神していたようですが、特に命に別状はありません。手術も成功し安定していますよ」

「よかった。ありがとうございます!」

「目覚めてから一度お話しさせていただきますが、本日中におうちに帰れると思いますよ」


その“帰る家”がないんだ。

ほら、悲しそうな顔をしてるじゃないか。

え、こっち向いた。


「………お兄ちゃん、迷惑だと思うんだけど…」


おい、お兄さんから呼び方が変わっているぞ、天然か?計算か?


「…家に泊めてもらいたいんだ」

「やだ」


思いのほかストレートな拒絶が出たが、そりゃそうだろう。

問題抱えまくりの姉弟なんぞ、好き好んでかかわりたくはない。


けどちょっと待って。

レイ君の目が潤んできている。

それを見た女医さんの俺を見る目が絶対零度。兄弟じゃないんだ。年齢差で気づいてほしい。

男の子の涙と女医の冷たい視線、好物の方もいらっしゃるだろうが俺は苦手。


「冗談さ!ははッ。もちろんおいでよ、ははッ」


レイ君は泣き顔から満面の笑みへの変貌をとげありがとうを繰り返すが、女性を味方につけるやつは苦手だ。

なりゆきとは言え関わったのならもう少し干渉しても関係ないだろうと自分を納得させる。



こうして流されてしまうところは、大金では改善しなかったようだ。

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