ミシェル
Σ( ̄ロ ̄lll)
ギルドを後にすると、ヴァンに再び手を握られた。
ヴァンの手は、大きくて固い。
意識するとドキドキしちゃうから、此れは迷子防止だと思う。
ミシェルは、離れてついてくる様な事を言ってたけど 大丈夫かな?
「…………チナツ、聞きづらい事を聞くが」
「うん。何?」
歩きながら、ヴァンが顔を背けて聞いてきた。
「……基本的にデートとは、どんな事をするんだ?」
「…………は?」
「思えば、俺はデートなるものをした事が…………ないな。」
「……ヴァンは、女性慣れしてると思ってたんだけど?」
ヴァンが言いづらそうに、続けた。
「殆どが一夜限り?勝手に俺の部屋に居たり、ついてきたり……女の方から言い寄って来てたからな、俺から、行動した事がない。」
…………来るもの拒まずですか。
ヴァンらしいと言えば、ヴァンらしい。
でも、知らない人が勝手に部屋に居るって想像すると、怖いんだけど?
慣れるほど頻繁にあるのか?
…………今も?
「……私も、デートはした事無いんだけど?」
ヴァンが驚いて私の方を振り返った。
「前の世界でも?」
「……居なくなるの分かってたから、親しい相手を作る事をしてこなかったの、なるべく、目立たない様にもしてたし……」
「…………すまん。」
「いや、別に良いんだけど……まぁ、2人で出掛ければデートなんじゃない?其れに、今日は観光がメインでしょ?人気のお店とか、この国ならではの場所とか行けば良いんじゃないかな?」
「……なるほど。」
何処に行くか悩み始めたヴァンを見て、私は苦笑した。
「こうやって、手を繋いでぶらぶらするだけでも良いと思うけど?」
クスクス笑いだした私を見て、ヴァンが眉間に皺を寄せた。
「……此処は見ての通り、出店が多い。だから、「出店通り」と呼ばれる様になった。チナツが気になる店があったら覗いて行こう。」
「うん、それで良いよ。」
特に何を買うでもなく出店を覗いて回った。
衣服、装飾品、焼き物、木工品、食品等々
1番ショックだったのが、爬虫類や昆虫を売ってたお店だろう。
串刺しにして焼いてた。
まぁ、テレビで食べてるのは見た事があるから其処まで忌避感は無いけど、
蜘蛛は駄目だわ~。
しかも、両手で余る大きさだった。
後は、紫と緑が混ざった飲み物とか何かの目玉とか?
「お肌に良いよ!」
と言われたけど全力で断った。
「……ヴァンも、ああ言うの食べるの?」
「昔、無理矢理食わされた事なら有るが、それ以来食べてないな。アレじゃなくても食べる物は有るんだ。無理してまで食べなくても良いだろう?アレを主食にしてる奴等の郷土料理とか、トラウマ物だぞ?」
私が凄く嫌そうな顔をしたのを見て、ヴァンが笑った。
「昼は、其れを出す店にするか。こっちだった筈。」
「えっ!嘘でしょ!やだやだ~!」
ヴァンに引き摺られて1軒の店に入る羽目になった。
「あはははは、安心しろ。普通に人族用の店だ。確か、店主はカルーナ出身だったな。」
「よ、良かった~。本気で焦ったじゃない!あ…………カルーナって事は辛いの?」
「何だ、辛いのは駄目か?」
「うぐっ」
カレーは中辛までです!
■ミシェル視点
私のお嬢様とあの魔王がデートしております。
信じられません。
あの、魔王が!!
女を取っ替え引っ替え、来るもの拒まずで有名な魔王が!
お嬢様と手を繋いだだけで、あんなに嬉しそうな顔をするなんて!
マジ何ですかね?
魔王を虜にするとは、流石はお嬢様です。
「双黒の天使を見守る会」(お嬢様のファンクラブ名)副会長として、しっかり見守らなければ!
魔法道具「写る君」の出番です。
次の会報に載せる為、2人のツーショット撮りまくりましょう。
魔王も黒髪だし、美男美女は絵になります。
ぐふふっ
しか~し!
相手は女癖の悪い魔王です。
見事、お嬢様のハートを射止めるまでは手出し厳禁!!
お嬢様の方には其処までの感情は無いようですしね。
無理矢理とかは駄目ですわ。
……ブッ
ちょっと想像しただけなのに、鼻血が…………。
私が、鼻を拭いているとお嬢様と魔王がお店に入られました。
あ~、もぅ、お昼でしたか。
丁度良いですね。
先程から、私の後をついてきている輩を片付けましょう。
どう、料理してあげましょうか?
私は、お嬢様達を見失った振りをして横道へ入った。
ついてきている事を確認しつつ、人気の無い場所へ誘導する。
全部で5人。
角を曲がるなり鞭を上空へ振り上げ、壁の出っ張りへ飛び上がる。
尾行していた男達が角を曲がると、メイドが居ない事に慌てて全員が路地に入った。
其れを上から見ていた私は、トンッと軽やかに飛び降りた。
音に気付き、男達が振り返る。
「なっ!てめぇ、何処に居やがった!」
「クフフ、やっぱり蛆虫でしたか。じめじめとした路地裏がよくお似合いです事。」
「っせぇ!黙れ糞女、恥かかせやがって!只で済むと思うなよ!」
「同じ台詞しか吐けないとは、脳にも虫が涌いてるのでしょうか?憐れですわね。死んだ方が世の為人の為、お嬢様の為ですわね。」
ギリッ!
と冒険者の男が奥歯を噛み締めて悔しがる。
……面倒なので蛆虫を男A、その近くから男B、C、D、Eでいいでしょう。
早速、男Bが喋る。
「バカにするのも其処までにしてもらおう。ランクAを相手に勝てると思うなよ?諦めるんなら、少しは優しくしてやっても良いんだがな。」
「あなたが蛆虫のボスですか?其れで、Aランク?クフフ、フフ、アハハハハ!ギルドの質も落ちたものですね!あなたは、そうですね~蝿、蝿で充分でしょう。」
「舐めるなあ~!!」
男Bが、剣を振り抜いた瞬間 距離が有ったにも関わらずミシェルの左腕が吹き飛んだ。
男達が、ニヤリと笑うが直ぐに硬直した。
ミシェルの腕が小さな蝙蝠となり再び左腕を形成したのだ。
「なっ!てめぇ、魔族か!?」
「くふふ!何を言ってるんですか?此処は魔族の国ですよ?少しは頭を使って話して下さいな。ああ、涌いてましたね。失礼。」
「…………吸血鬼、か?」
「蝿を見習え、蛆虫。まぁ、今更ですがね。残念ながら、お嬢様は私が吸血鬼である事を知りませんの。だから、ね?」
「何が……!」
「分かりませんか?私は、美しい物が大、大、大好きですの。醜いあなた達は、せめてその血を美しく散らして死んで下さいな。」
「「「ぎゃああああ!!」」」
男AとBの後ろから、悲鳴があがる。
男Aが堪らず振り返り見たのは、腕や足を失い血をダラダラと流しながら悶え苦しむ男達の姿だった。
「な、何が、」
男Aの耳元で女の声がした。
「あなたは、1番苦しんで死んで下さいな。」
気付いた時には壁に激突しており、激痛に襲われた。
「…がっ、は……背、折れ……ぐっ!」
うつ伏せに倒れた男Aの折れただろう背中を、ミシェルは踏みつけ何度も何度もグリグリと踵を押し付ける。
「あああああああ!!止め、がああああ!!」
「フフフ、まだですよ?まだ」
そう言って、ミシェルは男Aを蹴り飛ばした。
ゆっくりと振り返る。
冷や汗を流し、硬直して動けない男Bに近付く。
「下手に実力があって、逆に憐れですわね。格の違いに動けないとか、蝿らしく逃げ回れば少しは楽しめたのでしょうに残念ですわ。」
鞭を横に一閃させると、男Bの首が簡単に飛んだ。
切られた首から血飛沫を上げながら……。
「クフフフフ、いつ嗅いでも良いものですわ。血の臭い~。フフフ、フ…………駄目ですわ。早く戻らないとお嬢様と魔王が出てきてしまうかも、もう少し遊びたかったですが……もぅ、要りませんね。」
そう言うと、鞭を数回振るいその場を後にした。
バラバラに切り刻まれた死体を残して……。




