黒い大型犬
なんとか、今日中に投稿!!Σ( ̄ロ ̄lll)
家に出た瞬間、巫女装束から王国騎士団の服へと変わった。
丁度、厨房から出てきたお母さんの背中に抱き付いた。
お母さんは驚いた様だったけど、私だと気付くと笑った。
「フフフ、どうかしたの?会議で何かあった?」
私は顔を押し付けたまま、グリグリと頭を横に振った。
「ニャ~」
「あらあら、いらっしゃい。ティオちゃん」
ティオは器用に周りに置いてある棚を利用して、お母さんの胸に飛び込んだ。
ゴロゴロ、ゴロゴロ
「ニャ~」
「フフ、ほんとにどうしたの?2人して、めずらしく甘えん坊ね。」
お母さんは、私の気が済むまで抱き付かせてくれた。
■?
暗い森の中
木々に囲まれたその根元に、1人の男の子が立ち尽くしていた。
まだ、小さい。
5~6歳程の、痩せた男の子だった。
ぼさぼさの髪を麻紐で結び、筒状の袖の上衣に短い袴姿、草履は何処かで脱げてしまったのか、片方しか履いていない。
不思議そうに辺りを見回す。
「…………ここ、どこぉ……。」
どれだけ見回しても、有るのは木々ばかり。
道も無い。
「ああぁ!ああぁ!」
突然、頭上で知らない鳥の鳴き声が響く。
大きく身体をびくつかせた。
急激に心細さと恐怖が男の子を襲う。
ガサガサッ
「ひっ!?」
音がした方を、じっと見つめた。
いくら待っても何も出てこない。
ほっと、男の子は息を吐いた。
再び、周りを見回した。
何度見ても知らない森が広がるばかり。
「…………。」
恐る恐る歩き出す。
「……お父ぅ、……お母ぁ、…………どこぉ?」
男の子の呟きに、答える声は無い。
「お父ぅ!お母ぁ!」
両親を探しながら、男の子は森の中を歩く。
いくら叫んでも、誰も出てこない。
暗い森が続くのみ。
「……うっ……あああああああああ!うああああん、あああん!」
森の中に、男の子の泣き叫ぶ声だけが響き続けた。
コンコン
と言うノックの音で私は目を覚ました。
「…う、ん~」
前髪を掻き上げながら、身体を起こした。
何故か、気分が上がらない。
なんか、見てた気がする、けど、思い出せない。
まぁ、夢なんてそんな物か…………。
ティオを抱き締め、再びうとうとし始めると お母さんが入ってきた。
「起きてる?」
「…………ん~」
「あら、いつもなら起きてる時間よ?身体、辛いならお休みする?こっちで連絡入れとくわよ?」
「……今日、まで、だから、行く…。」
ふらふらと、立ち上がるとちゃぶ台にティオを置くと 頬を叩き頭を振った。
「うん、大丈夫!」
「……そう、じゃあご飯用意してるからね。ちゃんと食べてくのよ?」
「はぁ~い」
時間がなかったので、転移で城門から死角になっている家の角まで移動すると、何食わぬ顔で城門から中へ入って行った。
走って訓練所へ向かう。
遅刻なんかしたら、あの鬼2人に何をやらされるか分かったもんじゃない!
訓練所に着く。
殆どの騎士が揃っていたけど、ギリギリセーフ?
ノスト隊長の側へ行くとユルシスさんの他に、セルヴィス伯父様とタイアスさんにウィルが居た。
「魔王に連れていかれたと聞いて、心配したんだよ!」
と言って、セルヴィス伯父様に抱き付かれた。
魔王…………今は、聞きたくない名前。
思い出すな、私!
「大丈夫ですよ、会議の途中で帰りましたけど……無事に終わったでしょうし?」
「ん~、なら良いけど……訓練に参加して大丈夫かい?疲れたりしてないかい?」
「お母さんにも同じ事を言われましたよ?もぅ、大丈夫だから来たんです!」
ついでに、能力が少し上がったらしい事も告げた。
「だから、慣れるためにも訓練に参加します!」
ノスト隊長が其れを聞いて、ニヤリと笑って言った。
「フフ、なら軽く流してから全力で相手をしましょうか。」
「えっ?」
「正直に言うとですね、今まで全力の1歩手前位で相手をしてたんですよ。チナツの能力が上がったのなら遠慮は要らないでしょう?」
「う、うそ~」
ユルシスが頷いていた。
「私では、相手は出来ないでしょう。」
「……うそでしょ?私、ぼこぼこにやられてましたよね!」
「まぁ、大人の、隊長としての矜持?ですかね。簡単に女の子に負けたくありませんし~?」
「だからって、普通あそこまでぼこぼこにします?」
ウィルが小声で言う。
「……馬鹿、隊長達が普通な訳無いだろ?」
「…………」
「聞こえてますよ。ウィルネスト」
私に抱き付いたままのセルヴィス伯父様に、丸聞こえだった。
「タイアス!ウィルネストが今の訓練内容では、物足りないらしいよ!」
「えっ!?」
「ほ~、ならウィルネストだけに別メニューを考えましょう。」
「あ~、そうしてくれ、是非に!」
「ちょっ!そんな事言ってないですよ!充分です!充分満足してますから!!」
タイアスさんは、既にウィル専用メニューを考え始めていて聞いていない。
がっくりと項垂れた後、頭をガシガシ掻いて聞いてきた。
「本当に、魔王に何もされてないんだろうな?あの人、結構俺様だって有名なんだが?」
魔王の名が出た瞬間、私の目が据わった。
「私の前で、あの人の事を言うのは止めてください!不愉快です!あれは、大型犬!黒い大型犬です!」
「わん!!」
ビクッ!?
直ぐ耳元で声がして、振り返った瞬間私はノスト隊長の後ろへ転移していた。
ノスト隊長の背中から、恐々(こわごわ)と顔を出す。
「な……何で、何で此処に居るのよ~!?」
既に涙目な私
「アッハッハッ!黒い大型犬ね~。初めて言われたわ!」
私が立っていた場所の直ぐ側にヴァンが立っていた。
昨日よりシンプルな衣装だが、黒1色は変わらない。
ヴァンはニヤリと笑って、わざとらしく舌で唇を舐めて見せた。
カッと頬が熱くなる。
くっそ、むかつく!!
私の反応にクスクス笑いながら、ヴァンは1枚の紙をひらひらと出して見せた。
「チナツのSランク昇級試験の紙さ。」
「S?Aランクの間違いでしょ!」
「本物さ。俺の防御を越えたんだ。そんな奴がAランクで良い訳無いだろう?直接、俺が掛け合ってやったんだ。感謝しろ。」
あ、開いた口が塞がらないとはこの事だ。
何、やってくれてるの?
「頼んでない!!」
「頼まれてないからな。俺は俺のやりたいように動く。狙った獲物も逃がさない。言っただろ?諦めろ。」
「諦められるかぁ~!!」
「アッハッハッ、因みにSランクの昇級試験は俺んとこのダンジョン攻略だ。仲良く一緒に行こうな?」
行きたくない!
周りの皆を見る。
両手を上げて降参のポーズ!
「……すまん、チナツ。この男にはどうやっても勝てない!」
ウィルが俯いて悔しそうに行った。
セルヴィス伯父様が付け加えた。
「……世界最強」
ですよね!魔王だものね!他の王様達もそんな感じでしたよ!
「じ、自分の身は自分で守れと?」
「…………すまん、チナツ!」
セルヴィス伯父様が顔を背けた!
ショックです!伯父様!
「守れると良いな?」
ニヤリとヴァンが笑って言った。




