要らない情報
運動不足故に、運動してみた。
いろいろ、ね。
結果…………腹筋が悲鳴を上げております!
た、助けて!(;つД`)
「明日、迎えに行くから準備しとけよ。」
伝える事だけ伝えると、黒い大型犬は消えた。
私は地面に四つん這いになって、項垂れた。
セルヴィス伯父様が近付いて来て言う。
「本当にすまんな、チナツ。まぁ、何をされたかはあの人を見てれば、分かったが、」
セルヴィス伯父様が今の私にとっての禁句を口にした。
「…………キスでもされたか?」
カッ!!
頬が一気に赤くなる。
感情に任せて魔力が吹き上がった。
至近距離に居たセルヴィス伯父様が飛ばされるが、宙返りで着地すると、ニヤリと笑った。
私はユラリと立ち上がる。
「それ以上は、伯父様でも、許しません、よ。」
「ははは、たかがキスの1つで……」
プチッ
堪忍袋の尾が切れる音を初めて聞いた。
私の姿が消え、伯父様の真後ろに現れる。
転移ではない。只の移動。
伯父様が驚き振り返る。
勢いのまま、殴り付けた。
なんとかガードした伯父様が地面を擦りながら、数メートル後ろで止まる。
「ちょっ!予想以上!?」
伯父様が目を見張る。
私の衣装が、巫女の其れに変わる。
両手には鉄扇。
どうも、コレが私の戦闘服の様だ。
メイドの戦闘服がメイドなら、巫女の戦闘服も巫女。
ティオがユルシスさんの元へ避難する。
「ニャ~!」
「あ~、君の御主人様はキレると怖いですね~。」
「ニャ~、」
ユルシスさんに抱き上げられる。
其処にノストさんが告げる。
「ユルシス君、タイアス君、隊の訓練は君達に任せるから宜しく。巻き込まれない様にね。」
「隊長は?」
ノストさんは遠い目をして、私を見た。
私は鉄扇を空を切る様に、交互に振り続ける。
鉄扇から風が生じ、カマイタチになり伯父様に襲い掛かる。
魔力を纏った拳で、伯父様が打ち払っていくが其れで、手一杯の様に見えた。
「セルヴィスだけではキツそうだからね、行ってくるよ。」
「「…………御武運を。」」
「はぁ、勘弁してくれよ、セルヴィス……。」
そう言い残して、ノストさんは私の背後から蹴りを放つ。
鉄扇で受け止め、そのまま振り上げるとノストさんが宙をくるくる回り着地する。
間髪置かず、伯父様とノストさんの2人が同時に突っ込んでくる。
其れを横目に見ながら、タイアスさんがウィルを連れて第4部隊の方へ離れていき、ユルシスさんが声を張って言った。
「第3部隊は、後10メートルは下がれ!捲き込まれるぞ!」
呆然と見ていた騎士達が、慌てて離れていった。
数十分後、魔力枯渇で気を失ったチナツと、肩で息をし地面に座り込んだ隊長2人が居た。
「はぁ、はぁ、セルヴィス……発散させるにも、もう少し、遣り方が有ったでしょう、が!」
「…………すまん、はぁ、はぁ、予想以上で正直、焦った。はぁ、助かったよ、ノスト。」
2人して、チナツを見た。
大きな溜め息を同時に吐くと、地面に倒れた。
目を覚ますと知らないベッドに寝ていた。
お腹の上でティオが丸くなっている。
ベッドの周りを、白いカーテンが引かれている事から たぶん、医務室とかだろう。
「はぁ、」
溜め息を吐き、上体を起こすとカーテンが開き 白衣を着た白い顎髭を生やしたお爺さんが入ってきた。
「目が覚めたか、体調はどうかね?」
「はい、大丈夫です。……少し怠いくらいで、」
「魔力枯渇だからね。仕方ない。」
お爺さん先生は、私の顔に手をあてると目や舌、脈を見た。
「問題ないね。先程、第3部隊補佐のユルシス殿が来て、置いていったから 食べれるなら食べなさい。そしたら、帰って良いからね。」
「はい。お世話をお掛けしました。」
「其れが、仕事じゃよ。」
ホッホッと笑いながら先生が出ていった。
ティオに急須を出してもらい、温かいお茶を飲むとやっと落ち着いた。
「はぁ~」
後で、セルヴィス伯父様に謝罪とお礼を言わないといけない。
巻き込んでしまったノストさんにも、
全力で戦って、スッキリしていた。
その為の、伯父様の挑発だったんだろうと今なら分かる。
大型犬が置いていった紙を見る。
『チナツ・クロイツ嬢』
『Sランク昇級試験通知書』
『場所:フェードヴェネツェン大陸・魔の回廊』
『条件:ソロ踏破・ギルドの監視官の同行』
と書いてある。
監視官が、ヴァ……大型犬なのだろう。
「はぁ~、」
再び溜め息を吐くと、食事に手を伸ばした。
転移で一旦自分の部屋に帰る。
転移、便利すぎる。
イメージ出来ないと跳べないけど…………。
いつもの服に着替え、騎士服を畳んだ。
ちゃんと、洗って返さないとね。
お母さんに、ギルドへ行く事を告げてから 家を出た。
ギルドに入ると、受付のお姉さん サティさんだったよね?の元へ行く。
「こんにちは!」
「こんにちは、いらっしゃいチナツちゃん。も~、聞いてよ!朝イチで魔王様が来て、大変だったのよ!」
「……はは、私の所にもいきなり現れましたよ。心臓に悪いです。」
「あら?知らないの、チナツちゃん。魔王様には、熱烈なファンクラブが在ってね、そのファンが押し掛けてきて大変だったのよ?勿論、アルステッド殿下やマルロウ殿下にもファンは居るんだけど、魔王様には滅多に会えないから余計にねぇ。」
…………知らなくて良い情報ですよ。
何処が良いんだろう?やっぱ、顔か?顔なのか?
「ん~、「1度で良いからお持ち帰りされた~い」とか言って騒いで、ギルドマスターの部屋まで押し掛けようとしたりね、止めるのが大変で大変で、疲れたよ~チナツちゃん!慰めてぇ!」
……お持ち帰りって、うはぁ、やってそう!
私はサティさんの差し出された頭を撫で撫でした。
「因みに私は、チナツちゃんのファンクラブ会長だからね!」
「な!?何て物作ってるんですか!即刻解散して下さい!」
「え~、無理よ~。着実に数が増えてってるし、クロイツ家の公認だもの。」
家絡み~!?
嘘でしょ~!止められないじゃない!
「ニャ!ニャ~!」
「ティオは良いの!入らなくて!」
「ニャ~、」
「…………もぅ、良いです。諦めます。で、今日の用件何ですけど~」
なんか、どっと疲れた気がする。
「うんうん、何でも言って!」
「魔の回廊について、知ってる事が有れば教えて下さい。後、ダンジョンに行くにあたって必要な物とか、注意する事とか?」
「魔の回廊が試験場所なのね。名前の通り、ぐるぐるっと上に登ってくタイプのダンジョンよ。面倒な事に、上に行く通路が複数存在する上にランダムなのよね。階毎に魔方陣がある部屋があって、其処には魔物は出ないし、魔方陣を使えば一瞬で外に出れる様になってるわ。勿論、次に入るときには入口に魔方陣が出るから安心して!」
ランダム要素が有るのかぁ、めんどくさ!
「最上階には、何が居るんですか?」
サティさんの目が泳ぐ。
何、その反応!?
怖いんですけど!?
「…………翼竜が居るらしいわよ?」
まだ、サティさんの目が泳いでるのでじ~~~~~と見詰めた。
「はぁ~、群れよ、群れ!翼竜の群れがボスよ!」
マジですか~~~!?




