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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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135/154

第五章:帝国動乱編 第39話 決断 ― 誰の名で

決断は、

行為ではない。


名を

背負うことだ。


剣を振るう者より、

名を記す者の方が、

長く

責任を負う。


この瞬間、

問われているのは

何をするかではない。


誰の名で

それをするのか。

評議院前。


夜明け前。


座り込む人々は、

まだ

動かない。


眠っている者。

目を閉じている者。

空を

見つめている者。


誰も、

声を

上げない。


***


評議院内。


第一評議員の

机に、

三つの

案が

置かれている。


・排除命令

・王名義の声明

・評議院名義の決議


どれも、

選べる。


だが、

どれも

重い。


***


反王派

「……秩序回復……

 を……

 最優先……

 すべきだ……。」


改革派

「……力を……

 使えば……

 二度と……

 戻らない……。」


反王派

「……王の……

 名で……

 出して……

 もらえ……。」


その言葉に、

空気が

凍る。


***


第一評議員

「……王は……

 何と……

 言っている……?」


ガルディアス

「……何も……。」


反王派

「……沈黙は……

 了承だ……。」


ガルディアス

「……違う……。」


ガルディアス

「……沈黙は……

 選択を……

 委ねて……

 いる……。」


***


皇城。


アリアは、

窓の外を

見ている。


座り込む

人々。


彼らは、

王の名を

呼ばない。


王に、

命令を

求めない。


ただ、

動かない。


***


エリオン

「……評議院が……

 王の……

 名を……

 使いたがって……

 いる……。」


アリア

「……分かってる……。」


エリオン

「止めるか。」


アリア

「……止めたら……

 私が……

 選んだ……

 ことに……

 なる……。」


アリア

「……それは……

 違う……。」


***


評議院。


第一評議員が、

深く

息を

吸う。


第一評議員

「……王名義の……

 声明案は……

 却下する……。」


反王派

「……なぜ……!」


第一評議員

「……この……

 状況で……

 王の……

 名を……

 使えば……

 責任が……

 一点に……

 集中する……。」


第一評議員

「……それは……

 秩序では……

 ない……。」


沈黙。


***


改革派

「……では……

 評議院……

 名義で……?」


第一評議員

「……それも……

 違う……。」


第一評議員

「……評議院が……

 “鎮める”……

 主体に……

 なって……

 しまう……。」


反王派

「……なら……

 どうする……?」


***


第一評議員は、

ゆっくり

立ち上がる。


第一評議員

「……決議を……

 出す……。」


ざわめき。


第一評議員

「……だが……

 “命令”……

 では……

 ない……。」


***


数刻後。


評議院前。


文官が、

紙を

掲示する。


『評議院は、

 現状を

 重大な問いとして

 受け止める。


 討議所の

 常設化と、

 意見反映制度の

 再設計について、

 即時検討を

 開始する。』


短い。


だが、

初めて

「受け止める」と

書かれた。


***


座り込む

人々。


すぐには、

動かない。


だが、

何人かが

紙を

見上げる。


沈黙は、

続く。


だが、

質が

変わる。


***


皇城。


アリアは、

その文面を

読む。


エリオン

「……王の……

 名は……

 使われて……

 いない……。」


アリア

「……うん……。」


アリア

「……それで……

 いい……。」


***


アリアは、

静かに

呟く。


アリア

「……決断……

 した……

 のは……

 評議院……。」


アリア

「……でも……

 選ばせた……

 のは……

 人々……。」


***


夜。


評議院前。


一人が、

ゆっくり

立ち上がる。


また、

一人。


全員では

ない。


だが、

何かが

動き始める。


***


帝都の空。


雲が、

わずかに

流れる。


嵐は、

来なかった。


だが、

何も

元には

戻らない。


それは、

誰の名でも

ない決断だった。

この決断の後、

帝国は

どの姿で

立ち上がるのか。

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