第五章:帝国動乱編 第39話 決断 ― 誰の名で
決断は、
行為ではない。
名を
背負うことだ。
剣を振るう者より、
名を記す者の方が、
長く
責任を負う。
この瞬間、
問われているのは
何をするかではない。
誰の名で
それをするのか。
評議院前。
夜明け前。
座り込む人々は、
まだ
動かない。
眠っている者。
目を閉じている者。
空を
見つめている者。
誰も、
声を
上げない。
***
評議院内。
第一評議員の
机に、
三つの
案が
置かれている。
・排除命令
・王名義の声明
・評議院名義の決議
どれも、
選べる。
だが、
どれも
重い。
***
反王派
「……秩序回復……
を……
最優先……
すべきだ……。」
改革派
「……力を……
使えば……
二度と……
戻らない……。」
反王派
「……王の……
名で……
出して……
もらえ……。」
その言葉に、
空気が
凍る。
***
第一評議員
「……王は……
何と……
言っている……?」
ガルディアス
「……何も……。」
反王派
「……沈黙は……
了承だ……。」
ガルディアス
「……違う……。」
ガルディアス
「……沈黙は……
選択を……
委ねて……
いる……。」
***
皇城。
アリアは、
窓の外を
見ている。
座り込む
人々。
彼らは、
王の名を
呼ばない。
王に、
命令を
求めない。
ただ、
動かない。
***
エリオン
「……評議院が……
王の……
名を……
使いたがって……
いる……。」
アリア
「……分かってる……。」
エリオン
「止めるか。」
アリア
「……止めたら……
私が……
選んだ……
ことに……
なる……。」
アリア
「……それは……
違う……。」
***
評議院。
第一評議員が、
深く
息を
吸う。
第一評議員
「……王名義の……
声明案は……
却下する……。」
反王派
「……なぜ……!」
第一評議員
「……この……
状況で……
王の……
名を……
使えば……
責任が……
一点に……
集中する……。」
第一評議員
「……それは……
秩序では……
ない……。」
沈黙。
***
改革派
「……では……
評議院……
名義で……?」
第一評議員
「……それも……
違う……。」
第一評議員
「……評議院が……
“鎮める”……
主体に……
なって……
しまう……。」
反王派
「……なら……
どうする……?」
***
第一評議員は、
ゆっくり
立ち上がる。
第一評議員
「……決議を……
出す……。」
ざわめき。
第一評議員
「……だが……
“命令”……
では……
ない……。」
***
数刻後。
評議院前。
文官が、
紙を
掲示する。
『評議院は、
現状を
重大な問いとして
受け止める。
討議所の
常設化と、
意見反映制度の
再設計について、
即時検討を
開始する。』
短い。
だが、
初めて
「受け止める」と
書かれた。
***
座り込む
人々。
すぐには、
動かない。
だが、
何人かが
紙を
見上げる。
沈黙は、
続く。
だが、
質が
変わる。
***
皇城。
アリアは、
その文面を
読む。
エリオン
「……王の……
名は……
使われて……
いない……。」
アリア
「……うん……。」
アリア
「……それで……
いい……。」
***
アリアは、
静かに
呟く。
アリア
「……決断……
した……
のは……
評議院……。」
アリア
「……でも……
選ばせた……
のは……
人々……。」
***
夜。
評議院前。
一人が、
ゆっくり
立ち上がる。
また、
一人。
全員では
ない。
だが、
何かが
動き始める。
***
帝都の空。
雲が、
わずかに
流れる。
嵐は、
来なかった。
だが、
何も
元には
戻らない。
それは、
誰の名でも
ない決断だった。
この決断の後、
帝国は
どの姿で
立ち上がるのか。




