第五章:帝国動乱編 第37話 逆流 ― 抑え直そうとする力
流れは、
止められる。
だが、
止められた水は、
静かには
留まらない。
せき止める者は、
水位が
どこまで上がるかを
正確には
知らない。
帝都。
評議院は、
再び
動き出していた。
暫定凍結の
波及が、
想定を
超えている。
それが、
誰の目にも
明らかになったからだ。
***
評議院・緊急協議。
反王派の貴族が、
険しい声で
言う。
反王派
「……地方が……
勝手に……
解釈……
している……。」
文官
「……明確な……
制限が……
ありません……。」
反王派
「……なら……
設ける……。」
その一言で、
空気が
引き締まる。
***
新たな通達案が、
用意される。
『暫定凍結の適用範囲は、
中央が指定した案件に限る。』
短い。
だが、
鋭い。
***
文官の一人が、
小さく
問う。
文官
「……地方の……
判断は……?」
反王派
「……不要だ……。」
その答えは、
即座だった。
***
討議所。
噂が、
先に
届く。
商人
「……また……
締める……
らしい……。」
農民
「……早すぎ……
ない……?」
若者
「……期待……
させて……
おいて……。」
言葉は、
荒くならない。
だが、
空気は
硬くなる。
***
地方都市。
掲示文を
見つめる
役人。
役人
「……中央……
限定……?」
職人
「……じゃあ……
俺たちは……
また……
外か……。」
役人は、
何も
言えない。
***
沈黙の列。
再び、
人数が
増え始める。
以前とは、
違う。
沈黙の理由が、
共有されている。
***
皇城。
エリオン
「……逆流……
している……。」
アリア
「……うん。」
アリア
「……予想……
より……
早い……。」
エリオン
「抑え直せば、
落ち着くと……
思っている……。」
アリア
「……落ち着く……
のは……
水面……
だけ……。」
***
評議院。
新通達は、
一部の
文官に
配布される。
文官たちは、
互いに
顔を
見合わせる。
文官A
「……これ……
出す……
のか……?」
文官B
「……出せば……
戻る……。」
文官C
「……戻らな……
かったら……?」
答えは、
ない。
***
討議所。
若い母親が、
紙を
握りしめる。
母親
「……一度……
読まれた……
のに……。」
記録係
「……記録は……
残っています……。」
母親
「……でも……
使われない……
なら……。」
記録係
「……消えません……。」
その言葉は、
慰めでも、
解決でもない。
***
夜。
評議院の
高い壁の内。
第一評議員が、
低く
呟く。
第一評議員
「……戻す……
だけだ……。」
だが、
戻すとは
何を
意味するのか。
以前の
静けさか。
以前の
無関心か。
***
帝都の外。
街道沿いで、
人々が
立っている。
旗は、
ない。
言葉も、
ない。
だが、
誰も
帰らない。
***
アリアは、
その光景を
遠くから
見つめる。
アリア
「……逆流……
は……
止められる……。」
アリア
「……でも……
溢れた……
時……
責任を……
取る……
人は……
誰……?」
風が、
強く吹く。
流れは、
再び
狭められた。
だが、
水位は、
確実に
上がっていた。
この逆流が、
ついに
一つの臨界点に
達します。




