第五章:帝国動乱編 第35話 対峙 ― 守る者と変える者
露呈したものは、
元には戻らない。
覆い隠すか。
受け入れるか。
制度が問い返される時、
問われているのは
仕組みではなく、
それを守ってきた
人間の立場だった。
評議院。
正午。
中央会議室に、
重い空気が
満ちている。
通常の議題は、
すべて
後回しにされた。
***
第一評議員
「……監査局の……
報告について……
協議する……。」
反王派の貴族が、
即座に
口を開く。
反王派
「……制度の……
信用を……
損なう……
行為だ……。」
改革派の評議員
「……信用は……
隠蔽で……
回復しない……。」
言葉が、
正面から
ぶつかる。
***
反王派
「……基準は……
必要だ……。」
反王派
「……なければ……
混乱する……。」
改革派
「……基準が……
恣意的……
だった……
ことが……
問題だ……。」
反王派
「……裁量だ……。」
改革派
「……裁量を……
誰が……
監視する……?」
沈黙。
***
第一評議員が、
机を
軽く叩く。
第一評議員
「……王の……
意見は……?」
視線が、
一斉に
集まる。
だが、
王の席は
空いている。
***
ガルディアス
「……王は……
発言しない……。」
ざわめき。
ガルディアス
「……だが……
状況は……
見ている……。」
反王派
「……責任放棄……
では……?」
ガルディアス
「……選択を……
委ねている……
だけだ……。」
***
改革派の一人が、
立ち上がる。
改革派
「……討議所の……
意見を……
正式に……
扱う……
枠を……
作る……
べきだ……。」
反王派
「……危険だ……。」
反王派
「……民意は……
流動的……
すぎる……。」
改革派
「……だから……
遮断する……?」
声が、
強くなる。
***
別の改革派
「……現場の……
声が……
制度に……
触れた……
結果が……
今だ……。」
別の改革派
「……無理に……
戻せば……
反発が……
増す……。」
***
反王派の一人が、
低く言う。
反王派
「……では……
誰が……
責任を……
取る……?」
改革派
「……皆で……。」
その答えに、
反王派は
顔を歪める。
***
会議は、
長引く。
妥協案。
修正案。
棚上げ案。
どれも、
決め手に
欠ける。
***
その頃。
討議所。
人々は、
評議院で
何が起きているかを
知らない。
だが、
書き続けている。
語り続けている。
それが、
今できる
唯一の関与だからだ。
***
夕刻。
会議室。
第一評議員が、
疲れた声で
言う。
第一評議員
「……暫定的に……
資格要件の……
一部を……
凍結する……。」
ざわめき。
反王派
「……暫定……
だな……?」
第一評議員
「……ああ……。」
改革派
「……十分……
前進だ……。」
誰も、
勝ったとは
言わない。
***
皇城。
アリアは、
報告を
聞いていた。
エリオン
「……凍結……
だそうだ……。」
アリア
「……うん。」
エリオン
「中途半端だ。」
アリア
「……中途半端……
だから……
続く……。」
アリア
「……完全な……
勝利は……
次の……
対立を……
生む……。」
***
夜。
評議院の建物。
灯りは、
まだ
消えない。
守る者。
変える者。
立場は、
固定されない。
今日の
改革派が、
明日の
防壁になることもある。
***
アリアは、
窓辺で
静かに
呟く。
アリア
「……対峙は……
終わらない……。」
アリア
「……でも……
隠せなく……
なった……。」
風が、
評議院の
壁を
撫でる。
それは、
破壊ではない。
だが、
確実に
角を
削り続けていた。
この暫定措置が、
思わぬ場所で
火種になります。




