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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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第五章:帝国動乱編 第30話 分岐 ― 語られるか、語るか

沈黙は、

盾にもなる。


だが、

長く握り続ければ、

他人の言葉が

その上に

書き込まれていく。


語られるか。

語るか。


その分岐は、

王の前ではなく、

沈黙してきた

一人一人の胸の内に

置かれていた。

帝都。


沈黙の列は、

今日も

立っていた。


だが、

空気は

昨日までと

違う。


人々の視線が、

沈黙の中ではなく、

その外側――

語る男へと

集まり始めていた。


***


「彼らは、

 恐怖の中で

 耐えている。」


「我々が

 代わりに

 声を上げねばならない。」


拍手。


沈黙の列は、

反応しない。


だが、

その沈黙は、

以前ほど

強くない。


***


列の中。


若い兵士が、

拳を

わずかに

握る。


兵士

「……俺は……

 あんな……

 こと……

 言って……

 ない……。」


隣の老女が、

小さく

息を吐く。


老女

「……でも……

 違うとも……

 言って……

 ない……。」


沈黙は、

便利だった。


だが今、

重くなり始めている。


***


別の場所。


酒場。


沈黙の列に

立っていた

若者たちが、

集まっている。


若者A

「……あの人……

 勝手に……

 言いすぎだ……。」


若者B

「……でも……

 ああやって……

 言われると……

 楽だ……。」


若者C

「……俺たち……

 何を……

 望んでる……?」


答えは、

出ない。


***


夜。


アリアは、

一通の

短い書簡を

用意していた。


命令ではない。

声明でもない。


ただ、

問いだけ。


『沈黙を選んだ理由は、

 今も同じですか。』


その文は、

掲示されることも、

配布されることも

ない。


討議所に、

そっと

置かれるだけ。


***


翌日。


討議所。


沈黙の列から

何人かが、

足を

向ける。


入る者。

入らない者。


選択が、

分かれる。


***


討議所の中。


若い母親が、

震える声で

口を開く。


母親

「……沈黙……

 してた……

 けど……。」


母親

「……誰かに……

 代わりに……

 言われるのは……

 違う……。」


その言葉に、

小さな

頷きが

起きる。


***


一方。


沈黙の列に

残る者たち。


老女

「……私は……

 まだ……

 話せない……。」


隣の男

「……それでも……

 いい……。」


沈黙は、

否定されない。


***


中央大通り。


語る男は、

沈黙の列の

人数が

減ったことに

気づく。


「……彼らは……

 分断されている……。」


「だからこそ、

 我々が――」


その声は、

以前ほど

響かない。


***


評議院。


報告を受けた

反王派の一人が、

舌打ちする。


反王派

「……王は……

 何も……

 言っていない……

 はずだ……。」


文官

「……はい……。」


反王派

「……だが……

 動いた……。」


***


皇城。


エリオン

「……沈黙が……

 割れた……。」


アリア

「……うん。」


アリア

「……でも……

 壊して……

 いない……。」


エリオン

「混乱する。」


アリア

「……選んだ……

 混乱……。」


アリア

「……語る……

 人と……

 語らない……

 人が……

 共存できる……

 か……

 試される……。」


***


夜。


沈黙の列は、

短くなった。


だが、

消えてはいない。


討議所の灯りは、

以前より

多くの

声を

内包している。


語る者。

語らない者。


どちらも、

同じ都市に

立っている。


アリアは、

その光景を

静かに見つめる。


アリア

「……語られる……

 より……

 語る……

 方が……

 痛い……。」


アリア

「……でも……

 それが……

 選択……。」


風が、

街を

吹き抜ける。


分岐は、

終わらない。


それは、

一度きりの

選択ではなく、

生きるたびに

繰り返される

問いだった。

この分岐の結果が、

帝国の制度と

権力構造そのものに

影響を与え始めます。

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